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■6 川を越えていく(1)

その電車は河川橋を渡り、川を越えていく。

あ、ここでひとつの線を超えたかもしれない。大きめの川のような境界線を越えた気がする。10年前にも1度、川の向こうへ超えてみたことはあったけれど、うまく立ち回れなくて、川より手前に引き返したんだった。今度こそ、渡りきってみせる。向こう岸へ行ってみせる。

あかりは、そう思って電車のドア付近に立ちながら、流れる車窓を見ていた。

私の名は、この国では「あかり」と名乗ることが多い。時々、インターネットの世界では「ひばり」とハンドルネームをつけることもある。たまたまテレビで美空ひばりが歌っていた。昭和の歌謡曲が懐メロとして流れていた。そこからきている。

漢字で書くと「灯」誰も読めない。「ともしびさんですか?」そう聞かれることもある。まさか!そんなことないでしょ?あほくさ、と心の中で叫ぶが、大人なので照れ笑いをしながら「あかりと読むんです」と説明するようにしている。

藤原灯、そう覚えておいて欲しい。読んでいるあなたが良ければ。

あかりは、面接の会場へ向かっていた。川を渡り、県をまたいで、電車で30分の街へ向かった。駅から徒歩16分、その会社の支社が面接会場だった。

(フィクション入っています)
(だけど、ただの日記です)

⇒次へ続く

わぁ、都会だ


前回分はこちらですぅ

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