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春の嵐

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私の毎日をもとにして、小説っぽいものを認めました。前回書いた「川を越えていく」の続編です。
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#最近の一枚

⑤春の嵐〈Nem’oubliez pas〉

⑤春の嵐〈Nem’oubliez pas〉

4月はあっという間に春を連れてきて、中旬にもなると、今度は春を連れ去ろうとしている。

フランス語では、桜の花言葉を「Nem’oubliez pas」と言うらしい。日本語訳では、私を忘れないで。

Je prie pour que vous ne m'oubliez pas
"どうか私を思い出して"

別にね、悲しい別れだけではないと思うよ。一時も忘れないで…そんな意味合いで捉えたい今日この頃だ。

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②春の嵐〈催花雨〉

②春の嵐〈催花雨〉

春、早く咲けと花をせきたてるように降る雨を「催花雨」と言う。

今年の春は雨がよく降る。風も吹いて季節が変わっていくことをしっかり知らせてくれているように思える。

今の部署は、今日で最後の出勤日となる。出勤早々、先輩や同僚がしんみりとしていた。
この支店には丸8年、席を置いていた。1番の長老が何も言葉を発しないながらも、私の顔をまじまじと見つめた。何か言いたげな顔。寂しそうに目を細くした。

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