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おとなは楽器とともにどんな未来を描くのか

 おとなになってから、楽器を始める人が増えていると聞きました。コロナ禍ではメルカリや中古ビジネスで楽器がよく動いたとも聞きます。苦手意識を持つ人も少なくないのですが、それでも「若い時にやっていた」と腕に覚えあり!(忘れてるけど)という私のような人間が、楽器にめざめるのです。
 とはいえ、楽器の学び直し+はじめての楽器。なにをめざすのか?漠然としています。どんな未来を描くとモチベーションがあがるのでしょうか。単に、いい楽器を手にいれるだけで満足っていうご老人もいらっしゃるようですし。
 そこで、あらためて楽器とのつきあいかたを整理して、この先、カウンドダウンしていく未来に、どんな可能性があるのか?その考え方を書いてみました。

楽器は余裕の証し?

 思い起こすと、バイオリンはあこがれでした。かれこれ半世紀前からわたしの音楽世界観は、ロックかフォークか、、、さだまさし、甲斐バンド、アリス、オフコースあたりからスタートしていました。いつしかジャズ好きになり、わたしもギターひきたい!と思ったあたりから楽器マニアが始まったのですが、極度の貧乏で続けられませんでした。(練習にすぐあきてしまい、ほんとは腕がついていかなかっただけだけど・・・)しかし、おとなになって経済的にも時間的にも精神的にも余裕ができてきたあたりから、「今度はちゃんとやりたい」と考えた、というのがわたしの糸遍歴のリスタートです。楽器を愉しむのは、いろんな意味で余裕が生まれたからだと考えた、私、今、58歳。この先、びみょーです。あとどのくらい、楽器触っていられるだろうか。もうちょっと早く、リスタートしておけば。などと考えつつ、リミットを意識した楽器の目的、目標について考えてみたいと思います。

バイオリンのスタートとゴール

 「なんとなく、だけど、ひけたらいいな〜」「あこがれの楽器、弾きたい」的な動機で楽器を始める人が多くいらっしゃるのではないでしょうか。とくにバイオリンは、昭和世代のブルジョワ(ではないかもしれないけれど、、、)のようにみられていた節もあります。メルカリ見たらけっこうお手軽な値段で売っていたりするのでとても身近に感じるようになりました。
 ・・・ポチっと😆🎻
ね、購入するのはかんたんです。わたしも、はじめてのときはそうしましたもんね。やった、買っちゃったよーーーーー!すでにハイテンションです。届くまでの数日、ドキドキワクワク、仕事も手につかない。ゴールは「楽器の到着」ですもん。

 梱包を解き、中を見るとすてきなフォルム、森林浴を思わせる木と松やにの匂い、キラキラ光る糸、しなやかな弓・・・。それだけで全身に潜んでいたしあわせなホルモンがどばー、ビシャー、びゅー、ふなっしーもびっくりするレベルのハイテンション。あの感覚、ほんとうに忘れられない。ところが、です。奈落の底におちるのが、楽器の持ち方がしっくりいかない、弓が震える、音がビビる・・・。バイオリンあるあるですよね。楽器は数多くあるけれどいちばん難しいとも聞きました。そりゃ、学生時代にやっていたとはいえずぶの素人、うまくひけるわけがありません。それでも「若い頃やってたし」と根拠のない大丈夫を言い聞かせながら引いてみるけれど一向にあの感覚が戻らない。しかたない。レッスン、受けるかな、という感じで、先生さがしが始まりました。

 その後、半年。紆余曲折ありながらもレッスンを受けながら、やっとこなれてきたレベルになったかな。1日1回はバイオリンにふれる。たった5分でいいから弾く。近所からクレームがこないようにミュートして、布巻いて、音出せないときは左手だけでも。1回の練習2時間を週1回だけするより、1回15分を毎日やったほうがだんぜん上達する。これは心理学でも同じことがいわれていて、部下や同僚とのコミュニケーションを深めるためには1ヶ月に1回1時間の面談をするより、1日3分の会話を続けるほうが信頼関係が作られる。よしよし。
 ただ、こうも、思う。友達にはまだ「バイオリンやってるんだよ」なんて言えず、秘密にしているのはなんでだろう?え?なんで?なんで?自慢に聞こえる?昔、私が勝手に思っていた「バイオリンはお金持ち♪」っていう反動?もやもやする。なにがハードルになっているのかよく考えてみた。
 じつは、心のバリアはそこではなく、じつはじつは
バイオリンでなにを演奏したいのか?
バイオリンでどんなふうに楽しみたいのか?
だった。

ゴールは”SMART”で考えるとうまくいく

 じつは、私の仕事は企業の人材研修の講師。日々、人の行動変容を促すよう背中を押している立場。だから、目標の設定は得意です。そんな私がつねに意識しているのが、この「SMART」。5つの全ての要素を含んだ目標設定の指標です。

Specific(具体的に)

誰が読んでもわかるように明確で具体的な表現や言葉で

Measurable(測定可能な)

目標の達成度合いが本人にも他人にも判断できるようにその内容を数値化、定量化する

Achievable(達成可能な)

希望や願望ではなく、その目標が達成可能な現実的内容かどうかをチェックする

Related(ビジョンやライフスタイルにあっている)

設定した目標が生活スタイル、価値観に基づくものか、と同時に、自分の今の日常生活に関連する内容になっているかどうかをチェックする

Time-bound(時間制約がある)

いつまでに目標を達成するか、その期限や、いつから始めるか、スタートの期日を設定する

 これらで物事を考えると、すっきりするし、達成するし、迷いがなくなる。人生の選択はほぼこのスケール、枠組みで判断できそうです。では、バイオリンはどうか?

なにがしたいか?をビジュアルで考える

Qこのバイオリンでわたしはなにがしたいの?
Aう〜ん、もう一度、オケで演奏したい。(学内オケでコンマスだったから)
Q曲は?
A王道ですが、、、未完成やベートーヴェンのシンフォニー、モーツァルトのピアコンとか気持ちいいだろうな〜。チャイコフスキーやラベル、ドボルザーク、ラフマニノフ、ショパンなど、ドラマチックな曲は泣きそうになるくらい好き。難しいだろけれど、これはなんとか達成したい。
Qほかには?
Aじつは、バッハが好きで。ギターでやった卒業演奏もバッハだった。メタメタだったけれど、あの緻密さがたまらん。和声の構成はまさに数学。世界がすごい。
Qそれをやるとしたら?
A通奏低音。古楽の世界。ぜひ、残響のある教会で。純正律、ミーントーンで聞きたい。まさに至福のとき。それができたらいいな〜
Qバイオリンで?
Aいや、ガンバでしょ。ヴィオラ・ダ・ガンバ。7弦だとソロも通奏低音もできる。ガンバも若いころに志半ばで手放したもんな。もう一回、やりたい楽器。
Qそれはできそう?
Aコンソートでやるならオケよりは早く実現するでしょうね。実際、地元のコンソートをこの間、見学に伺ったら、みなさんがめちゃあったかくて!いいなあ〜
Qなにからやる?
A楽器を手に入れよう!じつは、今週、ガンバ制作されている工房にいくアポいれたもんね♪
Qバイオリンは?
Aそれが、この間知り合ったバイオリンのコミュニティで、クラシックだけでなくジャズから民族音楽までを演奏する先生を知って、これまた来週、発表会があるとかで会いに行くことにした。クラシックもいいけれど、そもそも、音楽はジャズやロック好きだったから、そちらの世界も居心地がよさそう。死ぬほどむずいけれど、スペインを弾きたいなあ・・・。ジャズ、いいなあ。川っぺりでジャズのセッションしたい。
Qまとめると?
A目標のひとつはアマオケ入団、もうちょっと弾けるようにならなければ。それと、ジャズセッションができるようにしたい。こちらはリズム感も必要。小品からやろう。ガンバはぜひ7弦の楽器を手に入れたい。だれか譲ってもいいっていう人、いないかな?
Qいつから?
Aもう今日から!♪😃

って。。。つい、ひとりコーチングをしていました💦

楽しみたい自分・理想の自分とは?

 残りの人生、あと何年かわからないけれど、若いころにはなかった「人生の期限」を意識するようになって、どんなふうに頑張ってどんなことを手にいれるか、よりも、どんなふうに楽しんでどんな自分を実現したいか、を考えるようになりました。「残された時間は僕らにはあるから」とミスチルも歌うけれど、残された時間は日々、カウントダウンしていることをもうちょっとだけ意識してみたい。一生懸命に頑張る。それもいいけれど、どうやったら自分を楽しませるか、です。

というわけで、楽器とのつきあいかたを整理してみました。とくに、私くらいの世代、60歳もつれの楽器ことはじめのみなさんに、参考になればと思って。


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