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君に届かない 1375文字#青ブラ文学部

「私は、上原みたいな人…絶対に好きにはならない」

「私は、私が1番大切だから…」

彼女に言われた言葉は、今でも俺の頭と心に残ってる……。

◈◈◈
「上原〜、お前また女の子振って泣かしたんだって〜?」

大学の近くにある居酒屋に高校時代からの友人、松下と飲みに来ている。

「ふってねーよ。俺が振られたんだよ」

「でも、そのお前を振ったっていう女の子、泣いてたって言ってぜ?」

「………とにかく、もう別れたんだから、別れた後は分かんないし、知らない」

「はあ〜、相変わらずだな〜もう〜」

自分の恋愛が上手くいかないのは…いかないでいるのは…きっと…自分のせいだ。

自分の今までの恋愛に対する態度がいい加減で、それを…彼女はとても嫌っていたから…

◈◈◈
俺は小学生の頃からバスケットボールを始め、大学生になった今でも続けている。

高校、大学はスポーツ推薦で入学し、毎日大学の講義とバスケの練習の日々。

たまの休みになったら、気晴らしに松下と出かける毎日。

そんな俺の元に「好きです」と勇気を持って告白してくれる女の子は何人も居た。

けれど、俺は正直に大学と体育館の往復の毎日で、あまり一緒に居られない事を伝えるものの「それでもいい」と女の子は食い下がってくる。

結局、俺の方が折れて付き合う事になるのだが…それで長続きした関係は全くなかった。

そんな俺の行動が、彼女は嫌いで軽蔑したのだろう。

彼女こと、『成橋 美琴(なるはし みこと)』と出会ったのは、たまたま選んだ講義で席が隣り合った事がきっかけ。

彼女は大学で目立つような存在ではなかったが、何処となく1つ1つの仕草が洗練されている様に思えたし、背筋はいつも真っ直ぐな人だった。

ある日、俺は教科書を忘れてしまった。

それに気づいた成橋は、別の席に座っていたのに、わざわざ俺の隣の席に移って教科書を見せてくれたのだ。

彼女のそんな些細な優しさと気遣いに、俺の心は静かに惹かれていき、彼女とも少しずつ親しくなっていた時に、俺の今までの恋愛の仕方が彼女の耳に届いてしまっていた事を、俺は彼女に好きと伝えた日に知ることになる。

『私は、上原みたいな人…絶対に好きにならない』

『私は、私が1番大切だから』

人生初めての告白は、自分のしてきた事で泡沫となって消えた。

それ以来、成橋とは話していない。
一緒の講義の時も、もう席が隣同士になる事は無くなった。

それに心が傷まない訳はないけれど、講義をサボりたくはなかった俺は、心を無にして講義に集中する様になっていった。

そんな成橋には、最近付き合っている男が居ることを、風の噂で聞いた。

俺とは正反対で、誠実そうで外から見ていても成橋の事を一途に思っている事が伝わってくる…

そんな男。

俺とは真逆の男。

けれど、そんな姿を見ても自分の恋愛の仕方を変えようとしない俺も大概だ…。

こうして俺は、どんどん拗らせて…周りと自分を傷付けてしまっている。

……いい加減…辞めなければ。


君に届かない、届けられない。


そんなフワフワ浮遊している気持ちを誰かと付き合う度に感じながら…俺はアルコール度の弱いチューハイを喉へと流していく。

松下の話し声に耳を傾けながら、それでも未練がましく………成橋の事を考えて、想っていた……。


〜終〜


こちらの企画に参加させて頂きました。

山根あきらさん。
今週も想像力掻き立てられるお題をありがとうございました(^^)



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