私の夏の恒例【夏の雲】1419文字#シロクマ文芸部
夏の雲は、まるで増殖するかの様にモクモク、モクモク湧いている。
そんな雲を見ると、私は思う。
当たり前の事だけど、
あ〜、夏が来たんだな〜って。
★★★
「さて、早く行かないとっ!」
私は、今から甲子園に行く。
と言っても、兵庫県に住む母方の祖父母の家に何日か泊まるついでに、こうして毎年甲子園に行き、高校野球を観戦しているのだ。
今年は、私の通っている高校が甲子園出場を果たし、学校の応援団として行く事も考えたが、私は、応援と共に写真を撮りたい為、辞めておいた。
私の学校の試合は、明日の第1試合。
今日祖父母の家に行けば、祖父母の家から甲子園球場は近い為、とっても楽。
大きい荷物を持って、お年玉を貯めて購入した一眼レフと共に、私は出発する。
「気を付けて行くのよ」
「気を付けるのも何も、新幹線に乗れば直ぐじゃん!……まあ、少しの乗り換えはあるけど……」
「乗るまでも、降りてからも、気を付けなさいっていってるのっ」
「……もうっ〜〜、わかった」
少し心配性の母の心配を頭の片隅に置き、私は最寄り駅へと向かう。
そこから新幹線にのり、東京へ。
東京からまた新幹線にのり新大阪駅を降りたら、大阪駅行きへ。
大阪駅から大阪梅田駅に徒歩で行き、そこから電車に乗って甲子園駅へと無事に着いた。
甲子園駅から徒歩で15分ほど歩けば、祖父母の家に到着する。
「こんにちはー!!来たよ〜〜」
「はいはいっ。いらっしゃい小夜ちゃん。暑くなかった?」
「うん。私の住んでる所よりはマシかも」
「そうかいっ。ほらっ、早くお上がり」
「おじゃましまーす!!」
私は玄関で靴を脱ぐと、広い居間へと向かう。畳の部屋で、私はこの居間がとっても好き。
「おじいちゃんっ!久しぶりっ!元気?!」
「うん。元気だよ。よく来たね」
それから私は晩御飯を食べ、お風呂に入り、明日の観戦の準備をする。
「暑くなるから、熱中症気を付けるんだよ」
母と同じで心配性のおばあちゃん。
「うん。ちゃんと対策グッズ持ってきたから大丈夫!!」
「かあさん、ほら、あれあっただろ?濡らして振ると冷えるタオル。あれ、何処にしまったかな」
「それなら、台所にありますよ。小夜ちゃん、ついでに持っていきなさい」
「はーい」
おじいちゃん、おばあちゃんにとっても私がこうして甲子園に行くのは毎度の事なので、もう準備など慣れっこだ。
「小夜の学校は、何試合目なんだい?」
「うん?第1試合だよ」
「そうか。……応援しなきゃな」
「うん!沢山応援してっ!相手の学校、応援が凄い学校だから、負けない様にしないとっ!!」
そうして準備を一通りの終えた私は、早めに眠り、早く起きて、おばあちゃんが作ってくれた朝ご飯を食べて、甲子園球場へと出発。
蒸し暑い中球場へ着けば、そこは小さい頃にテレビで見ていた景色が広がっている。
野球部には、よく話をする男友達がいる為、何時もより気合が入る。
見逃さない様に、こぼさないようにと、私は一眼レフを触りながら思う。
一瞬一瞬で変わる表情や変化は、少しも逃したくはない。けれど、応援もしたいから、その塩梅が難しい所。
朝だというのに、空気は蒸し暑く、太陽の日差しはキラキラしている。球場で聞こえる音は、試合開始を待っている人々の気持が表れているよう……。
「さあ〜っ、撮るぞーーー!!」
夏の雲が大きくなって、青空に青と白の夏の風景を浮かび上がらせる。
小さい四角いレンズに写すのは、『一瞬』の煌めきと、儚さだ。
〜終〜
こちらの企画に参加させて頂きました。
小牧幸助さん
ありがとうございました。
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