マガジンのカバー画像

短編小説 まとめ

22
短編小説のまとめです。
運営しているクリエイター

#山根あきらさん

ただ、扉が開くのを待っている(小さなオルゴール)1185文字#青ブラ文学部

ただ、扉が開くのを待っている(小さなオルゴール)1185文字#青ブラ文学部

僕は、いつも待っている。
静かに……
そっと……
ずっと………。

◈◈◈
彼女の邪魔にはなりたくない。

それに、彼女の事を一人で思う時間も嫌いではない自分が居る。
けれど、いつも待ってばかり居る僕の姿は、友人である政時(まさとき)の目に少し余るようだ。

「いつまでこんな半端な関係でいるつもりだ?」

「中途半端って?……彼女との関係の事?」

「他に何があるってんだよ!」

「…………ないね

もっとみる
可か不可かでもない、ただの言葉(祈りの雨)#青ブラ文学部

可か不可かでもない、ただの言葉(祈りの雨)#青ブラ文学部

今から大雨が降ってくれないだろうか。

今から大雨が降れば、試合は一旦中止か、中止になって、やり直しになる。

やり直しになるって言っても、試合は継続されているから、スコアは今日の今のままのスコアで、試合が再開される訳だけれど……。

それでも、雨を願わずにはいられなかった。

………けれど結局、祈りの雨は届かなくて、空はピーカン…。

ピンチだ。

非常にピンチだ。

ノーアウト、ランナー1、3

もっとみる
一陣の風、声なき涙1027文字 青ブラ文学部

一陣の風、声なき涙1027文字 青ブラ文学部

一陣の風のように、やるせなさは襲ってくる……。

合戦で傷付き、この合戦場で人生を終えた、名もなき人々の墓標の傍で……。

◈◈◈
ザラッ、カシャン、ザラッ、ザラッ、

服も顔も汚れきってボロボロな姿になった。切られた所から流れた血も、返り血も、血というもの全てがない混ぜになっている。

合戦が終わり、静かになったこの場所で、俺は自らの手を使い、ここで命を終えた人の墓標を作っている。

「……春政

もっとみる
記憶に残るは香りだけ(暗々裏)#青ブラ文学部

記憶に残るは香りだけ(暗々裏)#青ブラ文学部

誰も知らない。
暗々裏に、今も昔も出来ている。

最後はきっと呆気なくて、破滅が待っている事はわかっているけれど、やめられないし別れられない。

不倫している訳じゃない。
だけど、両想いでもない。

私はただ、彼の好きな人が彼に振り向いてくれるまでの繋(つなぎ)で、私と彼の間に恋愛関係なんてない。

『好き』っていう感情は、彼には全くない。…………私には、あるけれど………。

私と彼は、高校の同級

もっとみる