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短編小説 まとめ

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2024年3月の記事一覧

一陣の風、声なき涙1027文字 青ブラ文学部

一陣の風、声なき涙1027文字 青ブラ文学部

一陣の風のように、やるせなさは襲ってくる……。

合戦で傷付き、この合戦場で人生を終えた、名もなき人々の墓標の傍で……。

◈◈◈
ザラッ、カシャン、ザラッ、ザラッ、

服も顔も汚れきってボロボロな姿になった。切られた所から流れた血も、返り血も、血というもの全てがない混ぜになっている。

合戦が終わり、静かになったこの場所で、俺は自らの手を使い、ここで命を終えた人の墓標を作っている。

「……春政

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始まりの言葉1370文字#シロクマ文芸部

始まりの言葉1370文字#シロクマ文芸部

始まりは、君だった。

⚾⚾⚾
「灰崎(はいざき)〜!ランニング終わったか〜?」

野球部キャプテンの大貴(だいき)が尋ねる。

「うん。終わった〜」

「俺、監督に呼ばれてるからさ、先に少し休憩して、その後バッティング練習に混ぜてもらってて〜!!」

「わかった」

俺は灰崎拓海(はいざき たくみ)
この高校の野球部で、投手をしている。
元々は野球部がなかったからこの高校を選んだものの、入学した

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あの日、触れた手のひら(手のひらの恋)#青ブラ文学部

あの日、触れた手のひら(手のひらの恋)#青ブラ文学部

『手のひらの恋』というほど大袈裟なものではないけれど、俺はバッテリーを組んでいる灰崎(はいざき)の手に始めて触れた時の事を、今でもたまに思い出す。

◈◈◈
「大ー!灰崎がマウンドで待ってんぞー!」

「はーいっ!すぐ行く!」

俺は大崎大貴(おおさき だいき)高校の部活では、野球部に所属している。
ここの野球部は俺達の代から復部された野球で今は2年目。
ポジションはキャッチャーで一年生の頃から主

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記憶に残るは香りだけ(暗々裏)#青ブラ文学部

記憶に残るは香りだけ(暗々裏)#青ブラ文学部

誰も知らない。
暗々裏に、今も昔も出来ている。

最後はきっと呆気なくて、破滅が待っている事はわかっているけれど、やめられないし別れられない。

不倫している訳じゃない。
だけど、両想いでもない。

私はただ、彼の好きな人が彼に振り向いてくれるまでの繋(つなぎ)で、私と彼の間に恋愛関係なんてない。

『好き』っていう感情は、彼には全くない。…………私には、あるけれど………。

私と彼は、高校の同級

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