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友人にもらった6冊の本 2024 その1

毎年、友人に本をもらうことが恒例になりつつある。

そして今年も6冊もらってしまった!
読んだ順に感想を書いておこう。
なるべく、読んだ直後の感想をそのまま、と思ったら、結構長くなってしまいそうなので、2回に分けて、3冊ずつにする。

①『ブルームズベリー・グループ ヴァネッサ、ヴァージニア姉妹とエリートたち』(中公新書)by 橋口稔

なぜこれを1冊目に選んだか、というと、先日読み始めた「Tale of Genji(源氏物語英訳版)」(この話が書けるほど読み進められるのはいつになることやら、(笑))の前書きで、訳者のアーサー・ウエィリーブルームズベリー・グループと関係がある、という話が出てきたから。
ところが、はやくもプロローグで、「いろんな人がブルームズベリー・グループに入っていたかのように言われているけど、実際には正しくなく、例えば、有名なT・S・エリオットアーサー・ウエィリーなどはメンバーではない」という記述。あれ~

では、実際のメンバーはというと、ヴァネッサ・ベル、ヴァージニア・ウルフ、クライブ・ベル、レナード・ウルフ、リットン・ストレイナー、メイナード・ケインズ、ダンカン・グラント、ロジャー・フライの8人。
ヴァージニア・ウルフ以外は全然知らんがな~。最後まで読み切れるのか不安に駆られる。

第1章 レズリー・スティーヴンの死
レズリー・スティーヴンて誰やねん?と思ったけど、ヴァージニア・ウルフの父のことだった。ヴァージニアの結婚前は、ヴァージニア・スティーヴンだったのだ。
そのほか、ヴァネッサ・ベルはヴァージニアの姉、クライブ・ベルはその夫、レナード・ウルフはヴァージニアの夫。
グループの他の人々も、彼らの友人だったり、彼らの別の兄弟の友人や親せきだったり。
ブルームズベリー・クループ」は、芸術家や作家などの知的な有名人の集まりかと思っていたら、そうではなく、元々家族や友人の親密な集まりだったものが、メンバーがそれぞれ有名になっていった、ということらしい。
ちなみに「ブルームズベリー」というのは、大英博物館に近いエリアで、彼らはみなこの近辺に住んでいた。

このあと
第2章 ヴァネッサの結婚
第3章 後期印象派展
第4章 ヴァージニアの結婚
第5章 良心的徴兵忌避
第6章 平和の帰結

物語形式というわけでもなく、面白おかしく描写されているわけではないのだけど、8人の関係(不倫あり、同性愛あり)が、小説よりも斬新な感じで、そこそこ楽しめた。
ヴァージニア・ウルフは、精神を病んでいて、後に自ら命をたったことは知っていたが、夫のレナード・ウルフの役割がよく分かったのは収穫だった。レナードは几帳面に自分の仕事をこなしつつ、妻がこもらずに仕事ができるように最大限のサポートをする。ヴァージニアの遺書は、ちょっと感動する。

登場させておいて最後がうやむやになるのは、小説でも嫌いなのだが、この本では8人全員の死までをきちんと記述しているので、好感が持てた。

*後で気が付いたが、メイナード・ケインズは経済学で有名なケインズさん
ロジャー・フライは、ポスト印象派の展覧会(マネとポスト印象派展:マネ、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ等)をロンドンで企画する。この企画は、フライが愛情を抱いていたオットリン・モレルがこれを後援した。同展はロンドンの美術界に大きな刺激を与えた。(wikiより)

②『ガヴァネス(女家庭教師)-ヴィクトリア時代の<余った女>たち』by 川本静子

19世紀英国で、未婚の女性がレディの対面を保ちつつ就ける仕事はガヴァネス―住み込みの女性家庭教師-以外にはなかった。低賃金で家具の一部でもあるかのように扱われ、縫物までさせられる日々。
当時の日記や求人広告、ガヴァネスをヒロインにした『虚栄の市』『ねじのひねり』、自身がガヴァネスだったC・ブロンテの『ジェーン・エア』などの文学作品を通して、彼女たちの意識とそれを取り巻く社会の様相を描く。

全体は2部構成で、第1部は現実のガヴァネスたち。
住み込む家庭によって、待遇の差はあるものの、ガヴァネスの賃金は、要求される能力に対して低賃金。家族の一員としては認められず、かといって料理人やメイドなどの使用人の仲間にはなれず、孤独な状態。
そんな状況がよくわかり、勉強にはなったが、事実の羅列なので、同じ話の繰り返しになってきてだんだんと飽きてくる。

第2部 小説の中のガヴァネスたち に入って面白くなる。
取り上げられている作品は、7作品。
読んだことのない作品ばかりだったが、あらすじプラス状況説明で、作品を読んでいなくてもよくわかるし、中心人物であるガヴァネスのキャラが(結構悪人ばかり?)生き生きとしている。
唯一読んだことのある「ジェーン・エア」は、「反逆する女」「規制の秩序と規範を脅かす女」というタイトルがついていて、そんなに強いイメージを持っていなかったのでびっくりだった。

③『ブロンテ姉妹とその世界』by フィリス・ベントリー(訳 木内信敬 新潮文庫)

ジェーン・エア』のシャーロット、『嵐が丘』のエミリー。19世紀半ばという時期に、ヨークシャの寒村ハワースで、世間とほとんど没交渉の生活を送った彼女たちに、どうしてこのような傑作がかけたのだろうか。シャーロットの強い個性、エミリーのすさまじいまでの激情は、どこから生まれたのだろうか、趣味の創作の秘密を、肉筆の原稿や肖像画など、多数の図版を使って解明する。

背表紙から

この本を読む前からある程度知っていたことだが、彼女たちの生い立ちをおさらい。
父(パトリック)は牧師で、家族は牧師館に住む。
母は早世したので、伯母が世話する。
有名なのは、シャーロットエミリーの1人だが、もう1人妹のアンも『アグネスグレイ』という小説を書いている。また、早世した姉が2人、飲んだくれでどうしようもない弟が1人。
家は裕福ではないので、シャーロットエミリーも教師をしたり、家庭教師をしたり、と家計を助け、でも、あまり丈夫でもないので、あまり長続きもしない。
一番長く生きたシャーロットでも50才には届かず、他の兄弟はもっと早く亡くなっている。

シャーロットは、4人目の求婚者とようやく結婚するが(でも1年もたたずにシャーロットは亡くなる)、他の兄弟は未婚。
以前、ジェイン・オーステインの伝記のようなものを読んだ時、ずいぶんと親せきが多くて、交流も多いんだなあ、とびっくりしたが、ブロンテ姉妹のほうは、極端に少なくて驚く。
このあたりが、すでに作風の違いになるのだろうか。
4人で、膨大な物語を作っていた日常が、小説に昇華したともいえるが、そもそも誰もが創作できるわけではない。彼らにはそのような血が流れていた、と言えるだろう。

こちらの本で、最も詳しく語られているのは、シャーロットについて。美人ではなく、内気で非社交的。でも、新しい考えを持った、芯の強い女性。どこか「ジェーン・エア」と重なる。エミリーのことはあまり書かれていないが、謎が多い分、やはり「嵐が丘」のイメージと重なる。

貴重な資料や写真、へぇ~と思う話もないではないが、このような解説本を読むより、実際の作品をもう1度読んでみる方が、楽しそうだし、新たな発見があるかも、という気がした。


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