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今年も友人にもらっちゃった~5冊の本

昨年、友人から5冊の本をもらった話を書いたが、

今年もまた同じ友人から、イギリス関連や語学学習関連の本を5冊、もらってしまった。

読んだ順に感想を書いておこう。
おおむね、後で読んだ本のほうがより面白かった。
この順にして正解だったと思う。

1.『路地裏の大英帝国』 by 角山榮・川北実 (平凡者)

本のタイトルは何となく知っていたし、表紙がホガースの『ジン横丁』なので、素敵なイギリスのイメージではなく、一般大衆の話なんだろうな、と予想はしたけど、予想をさらに下回るひどい話が満載。

目次:
1. 都市生活の誕生
2. 家庭と消費生活
3. 白いパンと1杯の紅茶
4. 病気の社会史-工業化と伝染病
5. いざというときに備えて―保険金幼児殺人事件
6. ヴィクトリア時代の家事使用人
7. 地方都市の生活環境
8. リゾート都市とレジャー
9. パブと飲酒

前半は、目を背けてはいけないけど、産業革命当時の、婦人の地位の低さ、虐待される子どもたち、下層労働者階級の食事のひどさ、危険なインチキ食材など、気分が悪くなる話ばかり。
貧しい人をあまり助けなくなってしまった理由の1つが、カトリックではなくプロテスタント、特にピューリタン的考えが、貧しいのはまじめに働かない本人のせいにされてる、って!
リゾートやパブの話はまあまあ面白かったけど。

この本が発行されたのは2001年で、当時はまだこういう庶民や下層階級の人を紹介するような文献がまとまっていなくて画期的内容だったらしい。今では結構あるかもしれないが。

いろんな話を数字で説明するのは、わかりやすいようでわかりにくい。
ディケンズオースティンの小説を読んだほうがよほど、イメージは沸くような気がする。

2.『イギリス近代史講義』 by 川北稔(講談社現代新書)

目次
プロローグ 歴史学は終わったのか
第1章 都市の生活文化は以下に成立したか―歴史の見方
第2章 「成長パラノイア」の起源
第3章 ヨーロッパ世界システムの拡大とイギリス
第4章 世界で最初の工業化-なぜイギリスが最初だったのか
第5章 イギリス衰退論争-陽はまた昇ったのか
エピローグ 近代世界の歴史像

プロローグはちょっと固く、でも、本文に入ったら興味深い話がたくさん、と思ったが、読み進めるうちにだんだん疲れてくる。
1度読んだだけでは忘れてしまうので、もう1回読みながらメモでも取ろうかと思ったけど、そんな気にもなれず。
読み終わってから少々時間がたってしまったけど、初耳で、とりあえず今でも覚えているのは、16世紀か17世紀あたりでも、イギリスは意外と晩婚で20歳代半ばくらいにならないと結婚せず、核家族が普通だった、ということくらいか。

3.『たいした問題じゃないが ―イギリス・コラム傑作選―』 by行方昭夫(編訳)

20世紀初頭のイギリスのエッセイ文学を代表する4人、ガードナー、ルーカス、リンド、ミルンのエッセイの傑作を集めたもの。内容が日本でいえば新聞のコラム的(それよりも1篇は長いが)ということで、コラム傑作選となっている。
友人がつまらなくなって途中でやめた、というのであまり期待せずに読みだしたおかげで何とか完読でき、イギリス流のユーモアや皮肉も少しは堪能できた。期待して読み始めたら、やはり途中でくじけたかもしれないが(笑)
4人それぞれ、カラーがある。とりあえず一番面白いと思った内容だけ、部分的に上げておく。

ガードナー:『趣味について』
「去年あんなに誰にも好まれていた帽子が今では、まるで古代バビロニア人の流行でもあったかのごとくやぼったくなっている」
「鼻にリングを通している蛮族の写真を見ながら、その奇妙な習慣を話す妻に、『でも、君、鼻のリングは野蛮で、耳のリングは文明的だなどと、どうしていえるのかな?』」

ルーカス:なし

リンド:『忘れる技術』
「忘れるというのは、本当に単純な事柄ではない。心理学者が長年必死になって研究した後、ようやく自信をもってようやく忘れる技術を教えることが出来るようになるであろう。(中略)記憶しているのが、個人にも民族にも、地球上で最大の悪の1つであることは明白な筈である。不満の記憶は血液を汚す毒である。シチリア島の「敵討ち」は、行ってみれば、いつまでも記憶していることから生じる結果である。」

ミルン:『日記の習慣』
「多数の日記は、胸躍るような経験に乏しいので、内面の経験を書き記すことになるのだと思う。(中略)日記をつけている人は将来自伝を書くことを視野に入れておかなくてはならない」

ちなみに、ミルンが、「クマのぷーさん」の作者その人であることは、解説で知った。

4.『翻訳家の仕事』 岩波書店編集部編 (岩波新書)

37人もの著名な翻訳家(中には本業は小説家であったり、他の職業の方もいる)の、「翻訳家という仕事」に関するエッセイ集。
引き込まれる文章もあれば、この人の文章こそ翻訳してもらわないとわからない、というようなわかりにくいものもあり。平均すれば、いろんな話が聞けて、まあまあ面白い。

「翻訳家」として、名前を知っていた方は、木村栄一(ラテンアメリカ)、小田島雄志(シェイクスピア)、亀山郁夫(カラマーゾフの兄弟)の3人だけだったが、実は、この方の翻訳は読んだことがある!という方はたくさんいらした。いかに翻訳者の名前を記憶していないものか、お世話になっているのに、ごめんなさい、という感じである。

技術的な話を書いている方も中にはいらっしゃるが、翻訳家を志す方へ役に立つような話、というのは、実にお金にならないか、こうすればよいという王道はない、ということくらいのような気がする。

個人的に興味深かった話は、読んだことのある小説の作者についてのトリビア的なこと。
『百年の孤独』のガルシア・マルケスは、祖母の語り口をヒントにしている。
『存在の耐えられない軽さ』のミラン・クンデラは、はじめは母国語のチェコ語で執筆していたが、自作のフランス語訳の「不忠実」に嫌気がさし、フランス語で執筆するようになった。
アルゼンチンの作家、ボルヘスは、英語を話す家庭で育ったが、あえてスペイン語で小説を書いた。
などなど、マニアックな話ばかりで、覚えておいたから役に立つというわけでもないが、役に立ちそうもない話ほど、真の楽しみになるものだと思う。

*アマゾンのリンクを張ろうとしたらえらく高額なのでびっくり。現在品切れらしい。

5.『英語の階級~執事は「上級の英語」を話すのか?』 by 新井潤美(めぐみ)

同じ著者の本をもう数冊読んでいる。
いつも、タイトルが気に入って読み始め、あとで同じ著者だった!と気づくパターン。

英語の学習書として読むにはちょっとマニアック。
英国の階級(アッパークラス、ミドルクラス、ワーキングクラスなど)によって違う、アクセントや単語の選び方などが主な主題となっている。
意外とミドルクラスの人とか、執事のほうが、硬い英語を話したりすることもあるとか。上の階級に見せようとして、今は使わないような古臭い表現を使ったりとかするらしい。
でも、アッパークラスでは、pardonとかweekendは使わない、なんていわれると、何も話せなくなりそうだ。

何が楽しめたか、というと、実際に例として引いてきている題材。
ドラマ『ダウントン・アビー』、映画『マイ・フェア・レディ』や『メアリーポピンズ』、ディケンズの小説など、好きな作品がたくさんでてくるし、あのシーンはそういう意味だったのか!とまた確認してみたくもなった。


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