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「カナレットとヴェネツィアの輝き」展    in  SOMPO美術館

先日、東京・新宿のSOMPO美術館で開催中の「カナレットとヴェネツィアの輝き」展を見に行った。
行ってから2週間ほど経ってしまい、東京展は閉幕が近づいている。

10月12日(土)~12月28日(土)
*休館日:月曜日
※ただし、月曜日が祝日又は祝日の振替休日となる場合は開館
巡回情報
2025年2月15日〜4月13日 京都文化博物館
2025年4月24日〜6月22日 山口県立美術館

今年最後の美術鑑賞になるので、だいぶ前からとても楽しみにしていた。
そして、期待どおりの見ごたえのある展覧会で、混みすぎることもなくゆったりと鑑賞できたので、良い締めくくりとなった。

行く前の予習にとても役立ったのが、山田五郎さんのyou tube。

サイトの鑑賞ガイドもよい。(当日会場でももらえる)
https://www.sompo-museum.org/wp-content/uploads/2024/10/Canaletto_Guide.pdf

カナレットは18世紀イタリアの画家で、ヴェドゥータ(景観画)の巨匠。
その美しい作品を何度か見たことがあるが、カナレットを中心として取り上げる展覧会は日本で初めてである。
今回の展覧会では、スコットランド国立美術館など英国コレクションを中心に約60点(そのうちカナレットの作品は18点)が、5章に分かれて展示されている。
概ね7割くらいの作品は撮影が可能だ。

第1章      カナレット以前のヴェネツィア
第2章      カナレットのヴェドゥータ
第3章      カナレットの版画と素描-創造の周辺
第4章      同時代の画家たち、継承者たち―カナレットに連なる系譜の展開
第5章      カナレットの遺産

順に見ていこう。

第1章      カナレット以前のヴェネツィア

ヴェネツィアは、今では「イタリア」という国の都市の1つであるが、もとはヴェネツィア共和国という1つの国であった。
ローマ帝国末期、ヴェネト地方に住む人々はフン族から逃れるために、葦が生えている沼地だったところ(ラグーナ)に移り住み、小さな国を建国。数々の苦難に耐えながら、交易によって発展。18世紀末、ナポレオンの侵攻まで、1000年もの間、共和国の体制を維持した。
ちなみに、建国からの歴史は、塩野七生氏の「海の都の物語: ヴェネツィア共和国の一千年」に詳しい。

会場に入ると、すぐに大きな「ヴェネツィア鳥瞰図」。

ヴェネツィア鳥瞰図(ネット画像)

ファクシミリ版だが迫力は十分。
本などでは何度も見ているが、この大きさで見るとどれだけ細部まで描きこまれているかわかり驚く。

この章では、撮影不可だったが、ワイングラスなどの美しいガラス製品や、ジョバンニ・バッティスタ・ティエポロの油彩画などが展示されていた。


第2章      カナレットのヴェドゥータ

カナレット(1697~1768)は、18世紀ヴェネツィアで活動し、都市景観を緻密に描き出した「ヴェドゥータ」という絵画のジャンルの巨匠として知られています。
ヴェネツィアの「絵になる」眺めを描いたヴェドゥータは、グランド・ツアーでこの地にやってきた英国貴族たちが旅の記念としてこぞって買い求めた絵です。
従って、現在カナレットの作品の多くはイギリスに残され、その最大規模の所蔵者は英国王室です。
現代の私たちが、旅先で記念写真を撮るのと同じような視点で描かれたヴェドゥータは、元祖”映え”と言えるかもしれません。

鑑賞ガイドより

グランド・ツアーとは
貴族の子弟が教育の仕上げとして数年かけて文化の中心地を巡った周遊旅行で、18世紀後半の英国でその最盛期を迎えた。
特に英国人貴族の場合、たいていの目的地はフランスかイタリアであり、ヴェネツィアは人気の旅先であった。

パンフより

展示は第3章のほうだったが、ここで、カナレットの肖像画を載せておこう。むかって左がカナレット

<カナレットとヴィゼンティーニの肖像>(エッチング)by ジョバンニ・バッティスタ・ピアツェッタ/アントニオ・ヴィゼンティーニ

いよいよカナレットの作品を。

<サン・ヴィオ広場から見たカナル・グランデ>1730年以降
<サン・マルコ広場>1732-33年頃
<カナル・グランデのレガッタ>1730-1739年頃

ヴェネチアのイベントの中でもエキサイテイングなレガッタ。
14世紀以降、カーニバルの催し物の1つだったが、時に賓客を歓迎するためにも開催された。

キリスト昇天祭は、数多いヴェネツィアの祝祭の中でも「海とヴェネツィアの結婚式」が行われる重要なものであった。
この儀式で、ドージェ(元首)は、ブチントーロという御座船で、アドリア海に出て、「海よ、汝と結婚する」と唱えながら金の指輪を海に投げ入れる。
ちなみに、現在がドージェはいないので、ヴェネツィア市長がその役を務めるそうだ。

カナレットは、この昇天祭を題材に作品を残しているが、描かれた時代によって、変化がみられるのも面白い。
写真撮影がうまくなくて、変化が良く見えなかったが(笑)

<昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ>1760年
<昇天祭、モーロ河岸に戻るブチントーロ>1738-1742年頃

ロンドンの景色もどこかヴェネツィア風。

<ロンドン、テムズ川、サマセット・ハウスのテラスからロンドンのザ・シティを遠望する>1750年頃


<ロンドン、北側からウェストミンスター橋を望む、金細工師組合マスターの行進>1750年頃


<ロンドン、ヴォクスホール・ガーデンズの大歩道>1751年頃
<ロンドン、ラネラーのロトンダ内部>1751年頃

ローマ。

<ローマ、パラッツォ・デル・クイリナーレの広場>1750-1751年頃


<ナヴォナ広場の景観>1750-1751年頃


第3章 カナレットの版画と素描-創造の周辺


版画や素描も貴重だけど、やはり油彩画のほうが魅力的なので、この章は写真をとらなかった。

第4章 同時代の画家たち、継承者たち―カナレットに連なる系譜の展開

あたかもカナレットのような景観画が並んでいる。

<リアルト橋>ミケーレ・マリエスキ


<ルッカ・サンマルティーノ広場>ベルナルド・ベロット(カナレットの甥)


<スキアボーニ河岸、ヴェネツィア>ウィリアム・ジェイムズ

次の作品は、写真が撮れなかった。

<カプリッチョ:セント・ポール大聖堂とヴェネツィアの運河>ウィリアム・マーロー(ネット画像)

我々が見るとさほど違和感を感じないけど、例えば、出雲大社の隣に日光東照宮があって、真ん中に天橋立があるとか、そんな感じなのかな~。

ちなみに、カプリッチョとは、イタリア語で、「奇想」「気まぐれ」を意味し、現実の正確な景観表現から離れて、実在するものや空想上のものを組み合わせて構成した架空の景観画のことを言う。
カナレットカプリッチョも得意とし、古代遺跡や虚構の建物、あるいは異なる場所に実在する複数の建物の架空の組み合わせなどを巧みに描き出した。


第5章 カナレットの遺産


<ヴェネツィアのカナル・グランデ サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂を望む>by ウイリアム・ジェイムズ・ミューラー


ターナーのこの作品も見たかったなあ。
知っている画家の名前を見るだけでなんかうれしい

モネやシニャックの作品もあったが、一番良かったのはこれかな。

<カナル・グランデ ヴェネツィア>ウジェーヌ・ブーダン

一周してから、もう1度カナレットの作品を見直した。
カナレットの描いた作品は、ヴェネツィア共和国最後繁栄の様子を描いているという意味でも、とても貴重なものだ。
時間と空間の両方を旅することができてとても満足♪



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