見出し画像

フランスの桜。ヨーロッパの街並みの中に、春いっぱいの日本庭園。


マックの春限定メニューには、桜餅パイがあったっけ? スタバの桜ドリンクに、桜風味のキットカット。
定番のお花見。どこまでも屋台が続く桜並木。
私の大好きなイカ焼きが焼き上がる、屋台からのいい匂い。


私の頭の中にはほとんど食べることしかないけれど、それでも日本の春がなつかしい。
もう2回も、日本の春を見ないまま、この暖かく、期待と変化に満ちた季節が過ぎていく。時が過ぎるのは本当に早く、フランスで迎える2度目の春。


一番最後に見た日本の春は、私が大学を卒業した年、家族旅行で東京に出かけた時に見た、一面をピンク色に染める靖国神社の桜。
同級生が新社会人として就職し、入社していったこの年の春、私は留学に発てるだけの十分な費用を貯める為に、アルバイトに専念した。
半年間、大学生の頃から続けていたデパートで働き続け、フランスに発ったのが10月。一年の語学学校時代を経て、大学に入り、あっという間に2回目の春がやってきた。

フランスでは新学期は9月から始まるから、日本のように春は別れと出会いの季節ではないけれど、それでも私にとって春は、何か自分の周りの環境が動き始めて、新しいことの始まる予感のする季節だ。


去年の春。語学学校でフランス語を勉強していた時は、クラスにはまだ誰も友達がいなかった。でも、今も続けている食料配布のボランティアを始めたのがちょうど一年前の4月で、この毎週2回づつのボランティアがきっかけで、少しづつ多国籍の友達ができていった。私を取り巻く人や環境が回り出して、ここから世界が広がっていった。
そこからの一年、高校生以来音楽をやっていなかった私が、フランスの大学の音楽学部に受入許可をもらい、自分の専攻が音楽になる日が来るとは思いもしなかったけれども、この一年間大学でフランス人の中に混じって学び、あっという間に学期末の最終試験を迎えようとしている。

そして今年の春。大学で、落ちこぼれつつ必死に授業についていく日々。ずっと音楽を学び、音楽の生活に浸ることが憧れだった私は、この4月、いよいよクラスの子とコンビを組んで、フランスで路上ライブを始めた。

私の毎日は、この春から、一気に音楽でいっぱいの生活になった。

少しづつ、自分が本当はやりたいけど遠いと思っていたことに、近づいていく。
自分の心から好きなことを学び、真っ直ぐにそれに向かうことは、生きている中でこの上ないくらいの喜びを感じるけど、同時に、自分の努力がそれについていけるのか、不安でもある。

そんな時、普段は当たり前で、もう慣れたと思っていたフランスでの日常生活が、急に孤独に感じる日がある。日本の、あの温かな春が懐かしくなる。
桜を思い出す。
フランスにいてあれと同じ景色を見ることはできないと思いながら、何となく温かみを感じたくて、家の外に出て絵に描いたようなヨーロッパの街並みを歩いていたら、桜のようなかわいらしいお花が咲いているのを見つけた。
心がほっとする。

フランスにも日本庭園、Jardin japonais

私が留学しているこの南フランスのトゥールーズには、素敵な日本庭園もある。
大きな公園の一部に日本庭園があり、フランスでありつつ、この庭園が人気の観光名所の一つになっている。
Jardin japonais(ジャーダン・ジャポネ)と呼ばれて親しまれているこの庭園は、春になって満開の桜があちこちで咲きほこっている。
フランスで桜の景色を見ることはできないと思っていたけれど、ここに来ると、日本の春を感じられるような気持ちになるのだ。
日本から離れた今、このコンパクトな庭園が、とても愛らしく、貴重な空間のように思える。

公園全体の中でも、特に日本庭園は人で溢れていて、フランス人の方たちも、思い思いに日本らしい春を楽しんでいる。
日本の桜も見たくなって、家族に電話した。ちょうどお花見に出かけるところで、菜の花とのコントラストがきれいな写真を日本から送ってくれた。

フランスの日本らしい春。
日本の春。

私の撮った写真を見たおばあちゃんが、これは桜じゃなくて花桃だね、と教えてくれた。じゃあ桜ではないのか。
でも、どこの国にいても共通で、お花の咲く時期というのは、新しいことが花開く期待感と、温かさに満ちている。
あちこちに花開く桜を見ていると、私もこんな風に、満開に花を咲かせられるように頑張りたいという意欲さえ湧いてくる。

明日は、いよいよ私が参加しているジブリオーケストラの最終公演。
そのコンサートの後は、直行で路上へ演奏しに向かう。月曜日からの1週間が始まると、大学での音楽学の授業。
いつ、私がこんなに音楽でいっぱいの毎日を送る日が来ると想像しただろうか。

落ち込むこともあるけれども、この時を全力で楽しみたい。
来年のこの季節には、私は何をしているのだろうと想像しながら、次に桜に出会う季節になる頃には、もう一歩、二歩、いいえ三歩、成長した私になれることを願って。

この一年も、満開で頑張ろう!


#フランス #留学 #春 #桜 #大学卒業 #入学 #新社会人 #新生活 #音楽 #フランスの春 #日本庭園 #jardin japonais #みんなでつくる春アルバム #創作大賞2024  #エッセイ部門

この記事が参加している募集

みんなでつくる春アルバム

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

最後までご覧頂きありがとうございます💓 食べることが大好きで、私のエネルギーの源です!が、今は収入源がなく食費が払えないので、サポートして頂けると私の来月の生活に直結してかなり助かります🙇‍♀️仏語と音楽で仕事をすることが目標。一緒に未来を応援いただけたらとても嬉しいです!