やそら

当事者研究者、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士。 noteでは日々の現場でのこと…

やそら

当事者研究者、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士。 noteでは日々の現場でのことや思索を綴っていきます。 どうぞよろしく!

マガジン

  • 当事者研究者、福岡市の精神保健医療福祉分野で働き始めました!

    2022年12月、日本ピアスタッフ協会が主催する全国ピアスタッフの集いの分科会講師として招かれたのがきっかけで福岡市で働くようになった当事者研究者が、精神保健医療福祉の現場で目撃したり、経験したり、見舞われたりしたあれこれについて綴っていきます。

  • 『当事者は嘘をつく』にまつわる論考

    小松原織香さんの著作『当事者は嘘をつく』に関してあれこれ書いた文章をまとめています。

  • 関東在住の大学院生が福岡移住に至る物語シリーズ

    関東で30年間生きてきたぼくが、今夏福岡移住に至った物語を綴っています。

  • 近況報告とか書かずにはいられなかったこととか

    福岡移住前後のぼくの近況とか、特にこころを突き動かされるような事態に見舞われた際に、ぼくが考えたり感じたりしたことを綴っています。

最近の記事

乖離との向き合い方について

以前ある人に、「川田さんも社会性ないよね」と言われた。 十年近く前に、当時お世話になっていたカウンセラーに「もうコミュ障とは言えないですよね」と言われた。 これらの言質から察するに、「コミュ力がある」=「社会性がある」では必ずしもないのだろうと思われる。 最近、大学時代の恩師に会って、自分で思っていた以上に「乖離」的な症状が自分強くて酷いのかもな、と思った。 きっとそもそも、「自分の中の複数性でもって客観性を担保する」という発想やアプローチ・考え方自体が、そうそう一般

    • 「自己愛という鎧」再考

      伊藤公雄 1996 『男性学入門』を読んでしばらくしてから、当該本においてとても有名な表現をもじって、「自己愛という鎧」について、みたいな文章をだいぶ前に書いた記憶がある。 7日に帰関して、父やその他の家族と話していて気づいたことがありました。 それは、「まるで小説の主人公みたいな人生だ…(嘲笑)」という自分の20歳の頃の実感を強化するような自己語りをして/自己物語を作り上げてきてしまったな〜ということでした。 よく兄(次男)に、「やそらさんアスペじゃん」などと言われる

      • 一年間の福岡生活をふりかえる

        「楽しく、幸せに」生きたい!と思って、福岡に来たという語り方をしてきた。 「福岡来ちゃえばいいのに!」という「蜘蛛の糸」に夢中で飛びついて登り切ったと書いてから、「『楽しく、幸せに』生きるんや~!」というのは、関東での生活全般に煮詰まって隘路にはまり込んで、そこでの生活が「地獄」となりつつあった自分にとって、「自分自身に発破をかける/を激励するためのスローガン」だったのかな、と思うようになってきた。 精神保健医療福祉分野で30年以上前から「これからは当事者が主人公の時代だ

        • 福岡生活一周年に寄せて

          一年前の今日、神奈川県座間市の夜勤介護を終えてから飛行機に乗り、夜に不動産業者に寄って、この家の鍵を入手し、何もないこの部屋に辿り着いてとにかく冷房だけつけて寝た。 関東を発つ前、いろんな人に挨拶をして回っていた際、ある人に、「どうして福岡なのかわからない」という問いを投げかけられた。 当時はうまく答えられなかった。 奈良県で2022年に元首相に向けて放たれた凶弾は、「川田家」にも直撃していた。 それから「川田家」はゴタゴタし、当時八王子市に住んでいた自分も流石にいろい

        乖離との向き合い方について

        マガジン

        • 当事者研究者、福岡市の精神保健医療福祉分野で働き始めました!
          22本
        • 『当事者は嘘をつく』にまつわる論考
          6本
        • 関東在住の大学院生が福岡移住に至る物語シリーズ
          32本
        • 近況報告とか書かずにはいられなかったこととか
          4本

        記事

          トリエステの社会協同組合におけるピアスタッフ雇用の実態から感じた日本のピアスタッフが置かされている社会状況の差異

          7月8日にトリエステの社会協同組合の視察に行った。 1991年に制定された社会協同組合法の第一条第一項で、「市民の人間的発達と社会的統合に向けた共同体の一般的利益を追求する目的を有する」とされており、社会福祉・保健医療の供給を目的とする事業で、専門職によって結成されるAタイプと、障害者に労働参入の機会を提供することを主目的としたBタイプがあるとされている。 自分がいったのは、まさにBタイプの社会協同組合でした。 その社会協同組合では80名程いる組合員の中に、一名ピアスタ

          トリエステの社会協同組合におけるピアスタッフ雇用の実態から感じた日本のピアスタッフが置かされている社会状況の差異

          渡伊前の当事者活動に関する仮説と修論執筆後ぼんやりやれたらなと思っていた事

          『精神障害者支援の思想と戦略―QOLからHOLへ』の中で、田中英樹(2019 : 74-75)は、2008年のイタリア訪問の知見から「進んだイタリアでも課題は散見される」とし、その課題を列挙する段落のなかで、「セルフヘルプグループの活動もアメリカや日本と比較してもあまり活発には見えない。イタリアの精神障害者の生活が他の地域住民並みに向上したとも言い切れない」と記述している。 上記の記述は、田中がイタリアのセルフヘルプグループ活動が日本ほど活発ではないことを問題視しているよう

          渡伊前の当事者活動に関する仮説と修論執筆後ぼんやりやれたらなと思っていた事

          イタリア視察を終えて今自分が思うところの「当事者」論

          最近、「かわいい」と「当事者」は似ているな~と感じます。 どちらもメチャクチャ多義的で、発せられた文脈や発した人の含意するところを丁寧に読み解く必要があるくせに、安易に多用されるところとか、とりあえず言っておけばいいみたいな感じとか、そっくりだと思いませんか?? ぼくが大学生の時、1970年代に端を発する障害者運動や女性運動との出会いを通じて、まさに「当事者として声を挙げてもいいんだ…!」と大いにエンパワーされた経験があります。 特に障害者運動において「当事者」という概念

          イタリア視察を終えて今自分が思うところの「当事者」論

          またまた遠い福岡……

          実家を出て、さあ埼玉の山間から成田空港まで頑張るぞ…!と思ってキャリーケースをひきずりながら最寄駅に移動したら、西武池袋線が飯能駅ー小手指駅間で人身事故の影響で運転見合わせ中と報された。 1時間前には着くように調べていたので、とり乱しつつ他のルートを探して、よしこれなら離陸の43分前に成田空港に着けるぞ…!と持ち直して、成田空港第三ターミナルに着いて小走りでジェットスターのチェックイン手続きに向かうと長蛇の列……。 どうやらジェットスターのチェックインシステムが落ちてしま

          またまた遠い福岡……

          研究とかポジショナリティとか

          イタリア視察中、研究者を主な立場とする視察メンバー二人に自分の修論データを渡すことができました。 なんと一人は視察の合間や帰りの飛行機の中の時間を使って読み切ってくださったらしく、共に羽田空港に降り立った時に「いただいた修論、読み切りましたよやそらさん!」と声をかけていただき、マジっすか(読んでほしいと言ったくせにドン引き)…!?となりました。 その方が自分の修論を折に触れて読んでくれているのは、なんとなく知っていたので「さすがに自分も久しぶりに読むか…」と読み始めたもの

          研究とかポジショナリティとか

          人として共に同じを保障しようとする姿勢

          ※昨日の朝書きました。 いろいろあって修論を読み直している。 昨日やっと歴史部分が読み終わった。 今までは気にならなかったけど、イタリアに行ってから改めて日本の精神保健医療福祉のあゆみをふりかえると、いくつか「ん?」と思う表現が出てきた。 たとえば、 1987年に精神衛生法が改正されてできた「精神保健法」 従来の日本の精神科医療のあり方を反省的に捉え、「従来よりも精神障害者の人権に配慮した良い法律ができた」というようなトーンで語られることが多いのだけれど…、人権への「配

          人として共に同じを保障しようとする姿勢

          関係規定的存在として関係に生き、そのあり様を自ら記述する

          イタリア視察中、バザーリア法パラダイム下の精神科医療に長年携わってきた精神科医の方からバザーリア法以降、イタリアの精神科医療では「医学モデルから関係づくり」そして「現象学的精神医学」が重視されるようになったというようなお話を聴いた。 また別の精神科医も「診察は関係をつくる場」だと説明していたのが印象に残っている。 「関係」といえば、自分が長年勤めた自立生活センターでも介助者と当事者が「介助するーされる関係」を超えて、「命を見合う関係」が理念として生き続けていた。 またあ

          関係規定的存在として関係に生き、そのあり様を自ら記述する

          やそらの過活動日記もといセルフカルテ

          ◎帰国後のスケジュール 7月10日 10時30分頃:帰国&視察旅行終了 12時過ぎ〜18時30分:スーパー銭湯で過ごす 19時30分〜翌朝5時30分:大学時代の友人に会い、うっかり終電を逃してしまいカラオケBOXで友人と共に一夜を明かす 7月11日 5時30分〜7時:最寄駅へ向けて移動 7時〜8時30分:早朝に実家組を騒がす訳にいかないと判断し、モーニングをやっているファミレスで時間を潰しながら長男の迎えを待つ 13時〜14時30分:大学院キャンパスに向かう 15時30分〜1

          やそらの過活動日記もといセルフカルテ

          他者へのリスペクトと「当事者」

          トリエステ病院跡地の一角で不思議な経験をしてきました。 そこには、精神保健局の職員や日本では一般には当事者と呼ばれるのであろう方々も何名かきていました。 ぼくは基本的に円卓会議の類が苦手です。 大学や大学院にいるとそのような場所に座って、顔を突き合わせて話したりすることが多いように思うのですが、妙に緊張するというか、からだが強張ることが多いです。 病院跡地の一角ではじまったプレゼンテーション?も円卓というか四角卓でのそれで、ざっと15名がいました。正確には当事者の方?が

          他者へのリスペクトと「当事者」

          6月30日から7月10日までのイタリア渡航中に掴みたいもの

          イタリアに発つ前夜、視察団一行でNHKで特集されていた滝山病院に関するドキュメンタリーを視聴しました。 自分は正直、滝山病院の件は話には聞いていたのですが意識的に情報が入らないように避けてきていました。 「いかんともしがたい現実」を前に、自分がどう振る舞えばいいのかもわからないし、ただただ無力感を突き付けられたり、なんだか無性に悲しかったり、虚しくなるばかりな気がしていたからです。 実際、みんなで黙々と見入っている際もなんだか無性に涙ぐみそうになる場面があったり、「人間

          6月30日から7月10日までのイタリア渡航中に掴みたいもの

          トラウマからの回復

          最近、FBの公開日記を書こうかな~、書きたいな~、書かないとな~と思っても筆を取り出すのにとても時間がかかります。 以前はからだ中のモヤモヤをとにかく言語化したい衝動をここにぶっつけていた時期もあったのですが、人間生きているといろいろと変化がありますね。 先日の「現状整理」も書き出すのにとても時間が要りました。 実は「現状整理」を書いてから妙な夢を見ました。 夢の中で右耳から巨大な何かがふとした拍子にボロっと落ちたのです。三秒位逡巡して、どうやらそれは巨大な現実ではあ

          トラウマからの回復

          現状整理

          現状整理 一般的には近況報告と銘打ちそうなところを現状整理とする辺り、察していただきたい。最近の状況の変化に自分自身とても戸惑っているということを。 5月の半ば位から、あんまりここにも書けないような事態に見舞われてドタバタし始めて、それでもなんとか自分なりに(主に経済的な)見通しを立てながらやりくりしたり、福岡に来てやっと落ち着けられる場所を見つけられたな〜。自分はきっと社会運動の現場から離れて、こういう時間、こういう癒される感覚を抱ける場所・空間を求めていたのかもしれな