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#冲方丁

9/3 『マルドゥック・アノニマス 8』を読んだ

「1巻まるごと400ページ、エンハンサー100名の総力戦!」ってオビに書いてあるけど、はたしてそれは宣伝文句として適正なんだろうか? 面白いけどこれから読もうって人にリーチするものか? 8巻ともなれば最早ついてくることを信じるのみか。面白さでねじ伏せてやるという腹積もりか。確かに面白かったけども。 主人公の活動から離れたところで、大勢の能力者たちが出てきてはやられていく様を描く……というと、まるで西尾維新『悲報伝』のようでもある。あちらは新たに登場したキャラが片っ端から退場し

5/18 『マイ・リトル・ヒーロー』を読んだ

オンラインゲームの世界に閉じ込められて意識不明になった子どもの話と聞いて、SAOよりも.hack//な世代としては注目せざるを得ない、ましてやそれが冲方丁の手によるものならば。ただ、読み進めていけば、どうやら意識不明の謎は本筋ではなく、あくまで本筋の物語へのすこしふしぎなきっかけにすぎないものとわかる。まあそれはそれでありだろう。考えてみれば.hack//も、意識不明になる仕組みとか理由ははっきり描かれてたりしてなかったしな……SAOではその辺どうなんだろうか。 それでは本筋

3/23 『SGU 警視庁特別銃装班』を読んだ

現代~近未来の日本を舞台に、治安が極度に悪化した東京で銃撃爆撃どんと来いの大都市大捕物活劇ということで、ノリとしては『シュピーゲル』シリーズに近しきものを感じるので、久々にクランチ文体が炸裂するとこ見れるかしら、と期待していたら、そこに現れたのは……『刃牙』だった。クランチ文体ではなくイタガキ文体だった。 ドキュメンタリー番組のように、物語の何年か後に事件の関係者に当時の所感を語らせたインタビュー記事、というていで書かれているのだが、銃撃戦や修羅場の最中に「証言」がちょくちょ

12/20 『骨灰』を読んだ

ホラーものは苦手だし、そう沢山観たり読んだりはしてないので滅多なことは言えないが……それでもこんなに、出てくる怪異怪現象に対し「コワイ!」と思うと同レベルで「この、クソ、お前、っの野郎……!」と、敵意というか、忌々しい思いをいだくホラーというのもなかなか無いんじゃないだろうか。とにかく、いやらしい。罠を張って獲物を穴に呼び込み、因縁をつけたら……まさしく、暗いところを探って灰が服についたとか、そういうレベルで「因縁をつけ」てくる……相手の家に侵入し、獲物に憑りつく。そして好き

4/4 『マルドゥック・アノニマス7』を読んだ

前巻で二つの時間軸が合流し、バロットとウフコックもようやくの再会と思いきや再び離れてしまったが、今巻では時間軸もまた二手に分かれることとなった。幸いにして、ウフコックの再潜入作戦は短期で決着し再再会でき、ハンター勢力の一部をも削ることに成功したが、半ば切り捨てられていた勢力の始末をさせられたに等しく、そしてハンター自身も眠りから目覚め、新たに分かれた最新の時間軸ではその力がますます増大している。新たな時間軸には「行われている葬儀は一体誰のものなのか」という謎もあり、実にハラハ

1/13 『剣樹抄 不動智の章』を読んだ

大江戸諜報絵巻の第2巻。これを読む前になんとドラマ化もされ、そちらもとても面白かった。しかもドラマは今巻に収録されている話もやっており、なので原作既読勢として観てたのに途中でドラマに追い抜かれるというレアな体験もした。 そんなドラマをしっかり楽しんだ上で読んだ第2巻、まず驚いたのは、原作義仙様、若いな! ドラマじゃ舘ひろしがやってたんだよ? 23歳て。えらい豪胆な改変だったんだな……と思うが、しかし意外とアリというか、ナシではないな、と思えた。舘ひろしレベルの迫力と雰囲気を原

11/10 『月と日の后』を読んだ

面白かった。 冲方平安朝廷史シリーズ(勝手称)の2作目ということで、言わば前日譚にあたる『はなとゆめ』を事前に読み返したりしていた。おかげで本編ではそこまで詳しく描かれなかった人物などがこの時どうしてたかみたいなこともなんとなく類推できたりしてよかった。行成頑張ってたなあとか。伊周は……いろいろあるだろうなあとか。 そして主役たる彰子だが、なんだか読んでいくにつれ、冲方丁の他作品のヒロインたちを思い起こさせる。内裏に入れられるも自分にできることが何もなくしだいに現実感覚さえ

9/8 『生き残る作家、生き残れない作家 冲方塾・創作講座』を読んだ

面白かった。 とりあえず今現在の心境として、作家になろう、作家として生きていこうという意思は抱いていると言えるようなレベルでは抱いていない(奥歯に奥歯が挟まったような言い方)ので、その上でこのような作家指南本を買うのはひとえに作家買いでしかなく、例えるなら買ってもないゲームソフトの攻略本だけを買って読み耽るような真似なのだけど、困ったことに昔子どもだった頃の俺はそのような真似をよくやっていたのであった。ゲームソフトどころかハードさえ持ってないのに買ったりしていた。そんでいざ

7/4 『博奕のアンソロジー』を読んだ

面白かった。 作家の宮内悠介が自らテーマを決め、自ら希望の作家を選んでそのテーマにまつわる原稿をお願いして書いてもらったという企画。冲方丁がそこに名を連ねていたので買ってみた運びで、ほかの作家は名前は知ってても作品はほとんど読んだことない人ばっかりだったが、新しい出会いを求めるいい機会にもなった。まさに読者たる自分にとっても博奕だったわけだ。結果としては、だいたい勝ち越したと言っていい。 梓崎優「獅子の町の夜」 金持ちの博奕。最初の話だからまずは前菜的にラ

3/24 『マルドゥック・アノニマス 6』を読んだ

面白かった。 3巻から地続きの話と、その3巻に至るまでの話が複雑に入り乱れながら描かれて、しかも途中からはハンター側からの視点まで入ってくるしこたま複雑な構成が実に3冊分続くというのはあらためてとんでもなかったなあと思いつつ、その二軸がとうとう一つに結び合わさり新たな展開を迎えて熱い。 『アクティベイター』でもそうだったが、動作の一つ一つに意味を込めた複雑で細かい動きの描写にとても力が割かれている。バロットとハンターの会談シーンとか。誰がどう動いてどんな働きをするか、この

2/5 『アクティベイター』を読んだ

面白かった。 もともと、冲方丁の近未来SFポリティカルアクションであるスーパー傑作『シュピーゲル』シリーズで起こった事件の一つを、舞台を現代に置き換えてやってみようというコンセプトだったと記憶している。世界観が未来から現代へと、言わば後退しているがゆえに、舞台を構成する諸要素がグレードダウンしている面は否めない……たとえばいくら最新鋭のステルス戦闘機でも制御するために人間の脳を搭載したりしないし、都市の影で暗躍する殺し屋が何もない空間からいきなりトンデモ重火器を転送したりしな

6/5 『マルドゥック・アノニマス5』を読んだ

面白かった。 相変わらず時系列が狂喜乱舞している。序盤は囚われのウフコックがそうなるに至るまでの回想という体裁だったが、ウフコックがバロットに助け出されてからはそこからの脱出パート(最新時系列)と、ウフコックを探すバロットやイースターズ・オフィスのフェイズと、ウフコックを手中に収めたハンター達のフェイズが交互に描かれるかたちだが、バロットフェイズとハンターフェイズも時系列通りにピッチリ組み合ってるわけでもない。この時空乱舞とそしてとうとう3ページにわたっちゃってる登場人物たち

12/16 葵遼太・著 冲方丁・ストーリー原案『HUMAN LOST 人間失格 ノベライズ』を読んだ

タイトルがまんま過ぎないかと思うが、丁寧なノベライズだった。映画を観てから読めば映画のシーンが克明に思い出される。映画との差異もほとんど無かったかと思うが、戦闘シーン、アクションシーンは結構臨場感があり、映画とはまた違った楽しみが得られた。映画でのアクションシーンを正確に覚えてないってのもあるが。これはノベライズの作者の技量によるものかもしれない。

7/15 冲方丁『剣樹抄』を読んだ

面白かった。 誰が呼んだか大江戸シュピーゲル。たぶん冲方読者はみんな言った。 まあ冲方読者からしたらそのようにしか見れないが、そうでなくとも、泰平の世たる江戸と対テロ組織超人集団を組み合わせるという発想にはたまげた。これによって、時代劇でありながら現代的な物語にできるというのだから。なんて思ったけど時代劇には全然詳しくないので、鬼平犯科帳とか銭形平次とかが全然元々やってたりしたら恥ずかしい。 ただ、そうしたぶっ飛び集団である拾人衆が、読み通してみるとそれほど多くは活躍し