6/5 『マルドゥック・アノニマス5』を読んだ

面白かった。
相変わらず時系列が狂喜乱舞している。序盤は囚われのウフコックがそうなるに至るまでの回想という体裁だったが、ウフコックがバロットに助け出されてからはそこからの脱出パート(最新時系列)と、ウフコックを探すバロットやイースターズ・オフィスのフェイズと、ウフコックを手中に収めたハンター達のフェイズが交互に描かれるかたちだが、バロットフェイズとハンターフェイズも時系列通りにピッチリ組み合ってるわけでもない。この時空乱舞とそしてとうとう3ページにわたっちゃってる登場人物たちの動向乱舞を読んでて、我ながらよく混乱しないなと感嘆する。あえて時空を乱して情報の出し方や因果関係などで描写をコントロールしているからだろうか。まァとんでもない。そんかわしちょっと最新時系列が、その分進みが遅いというワリを食っているわけだが、それもあまり気にならなかった。これがどう合流していくのか、そして合流していった果てに何があるのか、依然として楽しみ。おそらくはそこからがクライマックス「法廷編」の始まりではないかと睨んでいるが。
シザースの見えない脅威によってじわじわと窮地に陥っていくハンターサイドだが、マクスウェルのような凶悪な人物が出てくる一方で、ヘンリーのようなもうカタギになっちゃえよと言いたくなる人物もおり、層が厚い。勢力のパワーを感じる。エンハンスメント全然関係なくヘンリーのあのおもてなし力はズルいよ。と思ってたらヘンリーにシザース疑惑がかかっちゃってヘンリー……!ってなるし、それに対するヘンリーの粛然たる態度にヘ、ヘンリー……!!ってなるし、都市じゅうの悪をかき集めたような悪徳勢力である〈クインテット〉なのに、死んでほしくないと思ってしまうような人たちが出てきてしまう。バジルなんかも表層の荒々しさの奥に秘めた輝かしい知性と直観力、誉められたときの照れ方とか、今巻でだいぶ死んでほしくなしみが増してきちゃった。ケイトは前作からの経緯を考えれば当然生き延びてほしいし、ショーンもバロットに再会してほしく、ラスティはまだちょっと死んでほしみが勝つ。
レイ・ヒューズとベル・ウィングの超突発にして超突風のシルバーロマンス超特急にも目を輝かせつつ、次巻が早くも待ち遠しい。

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