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アトピー周辺知識27: 栄養療法・アミノ酸

 前回の記事にてアレルギー性疾患でのアミノ酸摂取の重要性に触れた。そもそもアトピー患者は胃腸障害故に何よりタンパク質の摂取総量が足りておらず、ビタミン・ミネラルと併せてタンパク質の摂取を意識して行う必要がある。

 自身に必要なタンパク質摂取量を知る為に、体重や年齢から自身の必要量と食事から判断する現状の総摂取量を大まかにでも計算しておくとよい。


・プロテインの勧め

 タンパク質摂取における障害として、牛乳や卵のアレルギー・胃腸障害による消化不良や乳糖不耐症・脂質やカロリー過多が挙げられる。
 上記障害を回避しつつ効率的な摂取方法としてプロテインは第一に候補に挙がるだろう。ただその利用の際は胃腸障害をフォローするために消化剤(有名なものだとワカモト・タンパク質分解酵素のサプリでも可)等を併用すると良い。プロテインはタンパク質含有量が極めて多く(肉類の3倍程度)、食材だと近い割合のものはゼラチン位しか無い。
 また牛乳(カゼイン)アレルギーならばホエイプロテイン、乳糖不耐症であればソイプロテイン
と使い分けると良いだろう。
 ただ人によってはプロテイン自体がアレルゲンとなる場合もあるため、摂取後の体調変化には注意し悪化する様なら摂取を中止する事。


 アトピー患者はその体質的に腸内環境が悪いため消化吸収能力が低く、また腎臓機能も低下している可能性があるため、無理の無い範囲でタンパク質摂取を心掛けるべきである。そのためあくまで不足分を効率的に補う目的でプロテイン等は用いる。本格的な運動をしないならタンパク質を10g程度足すだけでも充分事足りる。

 また胃腸への負担を徹底して軽減するならアミノ酸サプリ(EAAではなく各種アミノ酸をバランスよく網羅したコンプリート・タイプが望ましく、EAAで摂るならタンパク質全体の2割程度に抑える)という形で補う方法も有る。
 腎臓機能への負担を和らげるならばBCAAでの摂取割合を増やす等、多様な選択肢から自身の体質や症状に合った無理の無い選択を行うべきだろう。

 タンパク質やアミノ酸の摂取は複数回に分けて行う。タンパク質は1日の中で平均的に摂取した方が体内での利用が効率的になり、アミノ酸は一度に大量に摂取すると浸透圧の作用により腸管内の水分が増えて浸透圧性の下痢を起こしかねないためである。


・治療における栄養補助としてのアミノ酸摂取
 アミノ酸の中でもアルギニン・グルタミン・HMBは創傷や炎症・湿疹が主症状であるアトピー性皮膚炎患者に必須の栄養素(条件付き必須アミノ酸)であり、タンパク質の追加摂取を特に行わない場合でもそれらだけは優先して摂取したい(HMBは必須アミノ酸であるロイシンから生成されるが、摂取したロイシンの5~10%程度しかHMBに変換されないため直接摂取した方が治療効果が高い)。
 HMBはタンパク質の合成促進と過剰な炎症反応を抑制する働きがあり、アルギニンとグルタミンは皮膚の修復促進だけでなく免疫機能の低下を防ぐ効果を有し湿疹の予防に有効である。
 アルギニン・グルタミン・HMB摂取のONS(経口的栄養補助)として褥瘡治療に効果的と医療関係者にも有名な「アバンド」もそうだが筋トレ用のサプリが摂取に重宝し、ものを選べばコスパも良い場合が多い(ただ個別にサプリを買えば1/2〜1/3の額で済むのでアバンドは少々割高か)。


 アルギニン・グルタミン・HMBの摂取必要量だけで合計16g程度となるため目立った皮膚症状のある場合は基本そちらを摂取し、症状が落ち着いてからはある程度をタンパク質や各種アミノ酸に置き換えて網羅的に摂取するというのが良いだろう(カルニチンやオルニチン、BCAAを加えて摂取するのも勿論良い)。
 自身の使用感としてもHMBの充分な摂取により炎症が軽減され湿疹も収まり、痒みが沈静化し傷の修復が進むのを実感出来た(アルギニンだけでは炎症や痒みを抑えられなかった)。


 …ちなみにHMBはBCAAに分類されるロイシンの代謝産物であり、近年の研究ではこのBCAAの代謝低下(BCAA代謝酵素の発現低下)が細胞老化の原因であると見られている。
 老化は当然にHMB産生の低下を招く訳だが、これは老人性皮膚疾患や筋力低下を引き起こす。この構図はアレルギー性疾患やアトピー性皮膚炎の発症や患者の筋肉が付き難い体質(高BMI)とも似通っており、共にアミノ酸療法の有効な疾患として認識・治療されるべきものだろう。
 …そもそもが胃腸障害によるミネラル・アミノ酸欠乏に端を発した疾患であり、アミノ酸補充により解決するのも理に適っているというか当然の話ではある。


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