虎の子日記　２時間一本勝負忍耐勝ち②

私はバーテンダーのはしくれである。
さっき出会ったばかりの二人の男女が来店したある日の恋愛模様、の続きのおはなし。

二人が来店してからもうすぐ二時間になろうかとしていた。
とにかく彼女をデートに誘いたい、このまま約束を取り付けずに帰らせてなるものか、と必死な青年。
テーブルの上には飲みかけのグラスが次々ならぶ。
もうお腹いっぱい、そろそろ酔いも回ってきた。
さあ青年よ、どうする？

もうラストスパートをかけたかったのだろう、彼は「結婚したら子供って何人が理想？」と、初めて会った女性との会話としてはかなり突っ込んだ話になってきた。「え～・・？」とちょっと困る彼女。
ああー、ここでこんなタイミングでそんな話だしちゃだめだよ、そういうのはお付き合いが始まってから！BARでそんな話したらこのあと・・・なんて恐怖感植え付けて引かれちゃうでしょ！
助け船を出したいところだが、バーテンダーはお客様の会話が聞こえていても、無粋な反応をしないのが流儀である。

そして彼が最後に放った一球「自分、自衛官なんです。公務員だから将来安泰です」
え！いきなりプロポーズはいっちゃった？？
ってか、やっぱり自衛官だった！私の勘に間違いなかった！1000円獲得！（自分で自分に1000円賭けていた）いやいや、それどころじゃない、あーあ彼も飲みすぎたのか、本音出しすぎだし攻めすぎだよう・・・私は密かに応援していただけに、かなしいエンドロールが心の中で流れていた。

ところが！なんと彼女のほうから連絡先を交換してくれたのだ。
まさかの、キーワードは公務員か？それとも彼の熱意にうたれたのか？
もういい加減帰りたくてそうでもしないと帰してくれないと悟ったのか？

そして二人が来店してから二時間。
お会計は二万円を超えていた。
チャージをいただかない当店で、ジントニックは一杯800円。
それが二万円超えとはどれだけ彼が粘った・・いや、頑張ったかおわかりいただけるだろう。
日頃鍛えた強靭な体と屈強な精神力で、彼はフラッグを手に入れたのである。どうか幸せになってほしい。彼女を大切にしてあげてね。いやまだ早いか？結婚式の二次会は当店をぜひご利用ください・・・
心の中でつぶやく私。
お見送りした時彼の「やったぜ姉さん！」という声が聞こえた気がした。

ボーイズよ、これが男の忍耐力だ。
バチェラー改造計画はまだまだ続く。