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【芸術】創作と年齢と果たすべきことー米村昭彦「NEXTART」展@長崎県美術館

1:90歳を超えて創作すること

長崎県在住の洋画家 米村昭彦氏の展覧会「ネクスタ―ト展」に参加したレポートです。

会場は、米村先生が長崎で美術教室を開かれている関係か、終始家庭的な温かい雰囲気です。

関係の深い方3名が米村先生を囲んで、質問する形式でギャラリートークは進行していきました。終盤になり、長崎市にある「風の大地美術館」館長ウエダ清人さんからの質問の時間へ。

地元ながら、この美術館の存在を知りませんでした。
市内と港を一望できる風頭公園に建つギャラリーは景色も最高でしょうね。今度尋ねたいと思います。

さて、画家でもあるウエダ館長の質問は、創作についてです。ウエダ館長は60歳を過ぎたころから、「惰性」で創作しているとおっしゃいます。
「米村先生の創作意欲は一体どこから湧いてくるんですか。」

米村先生は嬉しそうに笑って、あのね、と話し始められました。

「年齢ごとにやるべきことがあるんだよ。
10代と20代は、とにかく自分のために技術と知識を身につける。
30代と40代は、その技術と知識を生かしてなんとか身を立てる。
50代と60代は、自分の経験と力を社会と人のために使う。

僕が長崎県の美術協会や地域の美術振興、教科書の仕事をしたのはちょうどこの頃。そして、
70歳を過ぎたころから、少しづつ自分のために創作できるようになるから。僕なんて90だから、毎日自分のためだけに絵をかいて、本当に楽しいよ

だから、ウエダさんはまだまだ社会のために役立つことがしたいし、それをする時期なんだよと先生は話を結び、マイクを置かれました。
ウエダ館長は、いやいや私なんかとさっきより柔らかくなった笑顔で手を振っておられます。なにか得心したような面持ちで。

2:人生の四季

人生は四季に例えられます。

青春・朱夏・白秋・玄冬

若く美しい時を経て、つらい研鑽の日々を過ぎ、実りの時を迎えて、静かに朽ちていく。

米村先生の「四季」は一般のものとは異なっていますが、むしろなるほどと納得しました。

農耕を主とした時代から、社会が成熟化した現在では、人が求める生き方も、人に求められる役割も異なるのでしょう。

少なくとも、自分自身を振り返ってみると、40歳も半ばを過ぎると、自分の成長や熟達に向いていた関心が、社会や後進の育成の方に向きつつあります。

米村先生の言葉が正しければ、70歳を過ぎてから自分のための創作意欲がわいてくるはずです。

「年を取るのが楽しくなりそう。」

そう思いながら、美術館を後にしました。





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