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最初に歌えなくなったのは高校1年春

エピソード     ①

登場人物

モッツァレラ→わたし
K先生→高校で割り振られた声楽の先生
F先生→中学生の時に出会った外部の声楽の
    先生
Z先生→小学生〜中学生まで通っていた合
    唱団の先生

 高校の時の話をさせてください。

 高校受験で選んだ学校は音楽科のある学校でし

た。歌うことが大好きで私の人生には音楽が必要

だと思っての選択でした。

 受験も無事終わりこれから私は歌いたい放題

だ!と思って意気揚々と入学してから待っていた

のは地獄でした。

 入学して1、2ヶ月経った頃歌が歌えなくなりま

した。練習時よりレッスンの時の方が酷くカッサ

カサのカッスカスの声なったんです。声に関し

て、普通に生活する分には全く支障はありません

でした。実際、同級生や担任の先生等誰にも気づ

かれませんでした。でも歌おうとすると声の出が

悪くなってしまったのです。レッスン中K先生は伴

奏を弾きながら歌のレッスンをしてくれます。私

が歌えないと先生の顔がどんどん赤くなって険し

いものに変わります。そして「練習不足でし

ょ?」「練習が足りないからできないのよ」と言

われました。K先生は真っ赤になった顔で怒ってレ

ッスン室を出ていきました。私は一人取り残され

たその部屋で泣き崩れました。うずくまって小さ

くなって暫く泣いていたのを今でも鮮明に覚えて

います。私にとって歌うことは生きることでした

から、自分でもどうして声が出なくなったのか、

どうやったら出る様になるのか、いつまで出ない

のか解らず本当に混乱していました。この先出る

様になるのかもわからなくて多分来週もこのまま

なら怒られるんだろうなぁと言うことだけはわか

っていました。

 K先生との出会いは学校での初レッスンです。詳

しい仕組みは分かりませんが、事前に提出してい

た音楽歴と歌声を聞いて学校側が割り振るんで

す。初レッスンでは挨拶が主でした。自己紹介や

ら今後レッスン頑張っていきましょうね。みたい

な感じで私が高校に入るためについていたF先生の

事も知っていると言うことがわかりました。面識

があると言われて私は少しホッとしていました。

「家も近いし、仲もいいのよー」と言われまし

た。私はF先生を信頼していましたから、「あ、信

頼できる?」と思い始めていました。

 しかしK先生は後日始まるレッスンで「F先生の

ことは忘れてやっていきましょう。」と言ったの

です。「え?忘れるって何?」と思い混乱しまし

た。まず、「私がこの学校に入学できたのはF先

生のお陰なのに、なんてことを言うんだこの人

は!しかも仲も良いって言っていたじゃない

か!」と思いました。声楽を知らなかった私にま

ず声楽の"1"を教えてくれたのはF先生です。私は

F先生のことを信頼していたのでまずその発言で

不信感が生まれました。

 

 F先生について説明します。

F先生は私が高校を音楽科にすると決めた中学2

年生の時に紹介してもらった先生です。その時通

っていた合唱団のZ先生に紹介してもらいました。

そのZ先生は最初、私が受験する高校の先生を紹介

してくれようと考えていたそうです。ですが、私

の心のことを考えてF先生を紹介してくださった

そうです。あとで母にZ先生が「モッツァレラちゃ

んの心がほぐれるかと思って……私では解せなかっ

たみたいだから……」と言っていたと教えてくれま

した。

 Z先生の思惑通り私はF先生をとても信頼してレ

ッスンに励みました。

 F先生のレッスンは私が晴れて入学が決まった

所で卒業ということになりました。私はどうし

て?と思いましたが、F先生の言い分では「2人の

先生について指導法が違うと混乱するだろうか

ら」ということでした。本当は嫌だったんです

が、何かあったら連絡して良いというので渋々卒

業を受け入れました。

 話を戻します。K先生はプリプリ怒ってしまうの

で声が出にくいと話せる状況にありませんでし

た。なので出なくなった声は自分でどうにかする

しかありませんでした。次の週はどうにか乗り切

りました。方法?そんなのありません。死に物狂

いで出ない声を絞り出すだけです。その時K先生は

満足そうな顔をしていました。何もわかってない

んだなぁと思いました。

 無理やり出しているのでいつ喉がダメになるの

か恐ろしかったけれど目の前のK先生も怖かったの

でやり切るしかありませんでした。何ヶ月か前ま

ではあんなに大好きだった歌う時間がこんな恐怖

に溢れた時間になるなんて思ってもいませんでし

た。

 これが今の私の始まりです。終わりの始まりと

でも言うんでしょうか。

 
 一応続きます。
 
 

 

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