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#5 アメリカ高校1日目

私がこれから通う高校が決まった。車で十分程で通える場所にある大きい公立高校だった。一学年五百人程在籍していると思われる。今日は登校一日目。父さんはその高校で書類を受けとるために私と一緒に高校まで来た。私はその大きさに驚いた。高校の前には黄色く、大きいスクールバスが何台も停まっていた。近くに湖があり、鴨などの野生の鳥を見かけた。りすなどの小動物も沢山いた。日本で野生のりすを見たことが一度もなかったので写真を何枚か撮った。校舎の前にはトラの像が配置してあった。後から知ったが、この高校のマスコットキャラクターはトラらしい。

学校の中に入ると、多くの学生で賑わっていて、騒がしかった。廊下にはよく海外のドラマで見かけるような青いロッカーが並べてあったが誰も使用してないようだった。このロッカーを開け閉めしている生徒を見かけなかった。長い廊下の奥には、生徒面談室があり、そこに行って、父さんがそこにいたおばさんに何か話しかけた。私は椅子に腰を掛け、ガラスから見える、廊下を行き来する生徒たちをぼんやりと眺めていた。今日からこの学校に通うと思うと、楽しみでもあったが、不安でもあった。父さんは何かおばさんと話した後に、「頑張れよ」っと言って、学校を去ってしまった。私は一人取り残された。不安になったが、しょうがないと諦めた。

おばさんが、私にベラベラ話しかけてきた。私は何を言っているのか、さっぱり理解出来ないので、困った顔をした。おばさんは、こいつ英語分からないわ、と面倒な顔をしたように思えた。

「英語話せる?」
「ノー」
「じゃあ、これ読んでみて」


そう言って、おばさんは机に置いてあった紙を指した。私は中学で習って覚えている、または見覚えのある単語を探して、読み上げた。私でも知ってるような単語が意外と連なっていた。分からない単語は適当に英語っぽく読み上げた。


「喋れないけど、読むのはなんとか出来るのね」


おばさんは、私がほとんど英語を聞き取れないし、返答も出来ないのに、意外と音読だけできるということに驚いていた。私はラッキーだっただけだ。さっきの紙は簡単な英語ばかり使っていて、ごく一般の日本の中学生でも読めるような何かのお知らせのプリントだった。


おばさんが「私について来て」みたいなことを言ったように思ったので、私はリュックを持って、ドアを開けて、ついて行った。おばさんから貰った、学校校内の地図を片手におばさんについて行った。しかし、私は地図を読むのが苦手で、既に地図上でおばさんと私がどこにいるか分からなくなってしまった。地図上で今、おばさんと私が今どこを歩いているのか考えるのを辞めた。私は諦めて、ただおばさんの後をついて行く。階段を降りたて、廊下を何度も曲がり、廊下の奥の教室の扉を開けた。このおばさんは先生らしき人に何か話かけていた。おばさんは先生らしきおじさんに説明した後に教室を去ってしまった。


“Hi everyone, so this is a new student joining us. Have a seat right over there.”
先生らしきおじさんは私に適当に席に着けといっているようだったので、真ん中の一番後ろの席に着いた。教室には二十人程の生徒が着席していた。私は自己紹介をしなくてはいけないのだろうと推測し、緊張していた。しかしクラスメイトに自己紹介をするようにと先生に催促されなかった。私は安堵した。皆の前で英語で自己紹介するものだと思っていたので、とても緊張していたが、その必要はないらしい。私の名を名乗って、「アイアム フロム ジャパン。ナイスト ミー チュー」とでも言おうかと考えていた。私は学校に行く途中に考えた自己紹介文をカタカナで書いたメモをポケットにしまった。

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