見出し画像

#1 リンゴが投げられる

やっと着いた。長く、くたびれた。身支度をし、立って、機体の外に出る。多くの人が行きかう。皆少しどこかへ急いで、大きな荷物を持って歩いている。頭では分かっていたけど、やっぱり実際に聞くと実感する。日本語が聞こえない。日本語以外の言葉が飛び交う。私はこの地に着いて、人々が英語で会話をしているのに驚いた。いや、私だって、アメリカでは主に英語が話されていることはもちろん知っていた。だけど、日本にいた頃に英語に触れる機会は学校の英語の授業のみだった私は、頭では理解出来ていても、もしかしたら、アメリカでも日本語が飛び交っているのではないかと淡く期待していた。しかし、勿論、この浅はかな期待は裏切られた。日本語以外の言葉が飛び交っていた。私には、何を言っているかよく分からないが、イングリッシュが飛び交っているのではないだろうか。大声で話しながら、何か係員の人達は楽しそうに笑っていた。


日本にいた時は主に「日本人」と接し、日々暮らしていたけれど、ここではその常識は存在しないし、通用しない。周りを見渡しても、さっきまで同じ飛行機に乗って、一緒に異国に来た同志、日本人らしき人はもう見当たらない。もうどこかに行ってしまったのであろう。ああ、本当に来てしまったんだな。そう思う。私は周りを見渡した。アメリカ合衆国に正式に入国する前の空港での入国審査の時点で私は日本にいた時との違いを痛感していた。色んな色の肌の人がいる。体の大きさも様々。頭に何かスカーフらしきものを巻いている人もいる。髪型や髪の色、髪の長さやヘアースタイルも人それぞれ。車いすに乗っている人もいる。本当に多種多様な人がいるのだと感心した。日本では、主に表面上ではある程度似ている人達と日々生活してきたから、私はこの違いに戸惑っていた。


無事なんとか、入国審査を通過し、アメリカに入国した。それにしても、なぜアメリカの入国審査の審査官はあれほど怖いのか。ただ、私は英語を理解出来ず、英語で何か色々質問攻められるから恐怖を覚えるのだろうか。眉間にしわを寄せ、鬼の様な顔をしていたおじさんだった。空港では多くの人で賑わっていた。空港の警備員は大きな声で何か怒鳴っていた。あそこにいるおばさんが果物を持ち込んでいたのだ。真っ赤で美味しそうな林檎。果物は持ち込み禁止だった。係員は大きな声で怒鳴っていた。そして罵倒後、おもいっきり、林檎をゴミ箱の中にたたきつけた。果物を持ってきたその女性は悲しそうにゴミ箱の底にある赤く美味しそうな林檎を見つめていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?