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#2 高速道路を走らせて

私はスーツケースを受け取るために、待っていた。私の大きい、日本からやってきた、パンパンのスーツケースは流れてきた。私は慌てて、スーツケースをベルトコンベアから次々と引き下ろした。すると、おじさんが何か私に話しかけてきた。

私は彼が何を言っているか理解出来ずにいると、彼は私が積み上げたスーツケースを押してくれた。その時に、父が彼に何か英語で言っていた。そしたら、彼はつまらなそうに、私から離れて行った。父曰く、彼は私のスーツケースを押すのを手伝って、その手伝い賃をもらおうとしていたようだった。私は彼がただ単純に親切心で私の多いスーツケースを運ぶのを手伝ってくれたのだと勘違いしてしまった。

私達はスーツケースを押して、空港の外に出た。空気が美味しかった。それもそのはずだった。飛行機の中で、着陸前に窓から外の景色を眺めたら、一面木々に覆われていた。また、湖や池もあちらこちら見かけられた。木々の間に家や店などの建物も見かけられた。このような場所にこれから暮らしていくのかと思うと少し不安になった。私は緑に囲まれて暮らした経験がないからだ。そのこともあってか、私は外に出て、空気が美味しいということに感動した。

空港の駐車場に着くと、父は中古のフォードの車を誇らしげに見してくれた。その車は真っ赤とは表現するにはふさわしくない、もう少し暗い赤色だった。父はこの色が気に入って購入したらしい。私もこの色を気に入った。綺麗な色だと思った。そして、何より大きかった。日本で所有していた車とは全く違った。日本では頑張って、ぎゅうぎゅうで、六人乗れる長方形のカクカクした箱の様な車に乗っていた。しかし、この目の前にある車は余裕を持って、七人乗れた。また、七人分の席の後ろには荷物を置くスペースがあった。とにかく、私にとってみれば、この車はとてもでかかった。大きい、この一言に尽きた。

私はスーツケースをトランクに放り込んだ。車に乗り込んで、この空港を後にした。父は運転して、車を高速道路で走らせた。高速道路の道は広く驚いた。そして、道の周りは大きな木が立ち並んでいた。大きく、真っすぐ、天に向かって背を伸ばしていた。私はこの木々の多くが松の木であることに気が付いた。松の木は背が低く、くねくね絡み合っているのが一般的だと思っていた。しかし、防砂林の松のように、背が低く、くねくねした松は見当たらなかった。この赤黒いアメ車は道路の右側を時速60マイル、約100キロの高スピードで高速道路を駆け抜けた。私は窓から目が離せなかった。わくわくした。同時に不安も感じる。ここで生活していくんだ。そう思いながら、外を眺めていた。

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