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大河ドラマ「光る君へ」第25話~清少納言の「空寒み 花に紛へて 散る雪に」和歌の考察

こんばんは、もちまるです。

今回も「光る君へ」の感想になります。

今回は…こちらの和歌について考察していきたいと思います!
(もはや和歌マニア…)

空寒み 花に紛へて 散る雪に 少し春有る 心地こそすれ

島内裕子 校訂訳 『枕草子 上』より

空が寒いので、桜の花びらのように散っている雪に
少し春めいてきたような気がする

島内裕子 校訂訳 『枕草子 上』を参考

この和歌は、平安の風流人、藤原公任が下の句だけを詠んで、清少納言に渡したもの。

この下の句に上の句を付けてごらんといういわば挑戦状のようなものですね。

「少し春有る 心地こそすれ」は、『白楽天詩集』を踏まえていると言われています。

『白楽天詩集』に、「三時雲冷多飛雪。二月山寒少春有」という一節があります。

・「三時雲冷多飛雪」
三時(=春夏秋)、雲、冷ややかにして、多く雪を飛ばす
・「二月山寒少春有」
二月、山、寒くして、少し、春有り

島内裕子 校訂訳 『枕草子 上』より

という意味になります。
公任が踏まえたのは二月、山、寒くして、少し、春有りの部分ですね。
(和歌では、「少し春有る 心地こそすれ」と表現しています)

さて、公任から『白楽天詩集』を踏まえた下の句を渡された清少納言どうする…!

清少納言は、この公任の下の句が『白楽天詩集』を踏まえている事をすぐ見抜きます(さすが清少納言!)

清少納言が詠んだ上の句
「空寒み 花に紛へて 散る雪に」は、

『白楽天詩集』の先ほど記述した

「三時雲冷多飛雪」

を踏まえていると考えられています。

公任が用いた「少春有」の句の上に続く「雲冷多飛雪」を使って、典拠を心得ていることを匂わせた。

萩谷朴 校注 『新潮日本古典集成 枕草子 上』より


公任が詠んだ一節が『白楽天詩集』の一節を踏まえていると理解し、
更にその句の上に続く文章を用いて和歌を詠んだという訳です。
何という頭の良さ、すごすぎます清少納言。

平安時代の人達は、和歌や中国の漢詩を暗記していたのでしょうか。

度々和歌の中に、別の和歌や物語などの引用などがあるのを大学時代からすごいなぁと思っていました。

実は、清少納言がこの上の句を詠んだ時、その場には立派な方がたくさん揃っていたということが『枕草子』に記述されています。

「皆さんご立派な方がお揃いの所へ公任様のご返歌をどうして通り一遍に言い出せようか」(『新潮日本古典集成』より)

ということで、中宮様に相談しようとした所、天皇がいらして一緒にお休みになっていて相談出来ない様子だったよう。

そこで清少納言はこの上の句をぶるぶるふるえる手で書いたというのです。

結果、この清少納言のふるまいはとても賞賛されたという事が『枕草子』には記述されています。

清少納言も緊張して返歌を考えたというのが、親近感がわきますね。

和歌を考察して改めて清少納言の才気あふれる様子をうかがい知ることが出来ました。

『枕草子』に描かれている場面が大河ドラマの一場面になっているというのがとても楽しかったです。

考察することで更にドラマの背景や清少納言のお人柄について知ることが出来て嬉しいです。

…ということで考察はこの辺りにしておこうと思います。

ここからは余談です…

ドラマで和歌が出た時、『枕草子』にその場面があると知ってすぐに図書館で本を予約しました。

図書館に行くのも面倒だなと思ったのですが、それ以上に考察したい!という気持ちの方が勝ちました(笑)
結果、借りて良かったです。

「光る君へ」が始まる前は、数年間、図書館に行っていなかったのですが、最近またお世話になるようになりました。
私が学生時代の時に比べて新しくてきれいな本が増えてびっくり。

大学生の頃、地域の図書館の研究書は茶色くなってカビの多い本が多かったので、きれいな本が増えて研究もはかどります。

それでは今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。







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