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大河ドラマ「光る君へ」第24話〜さわの和歌を考察する(『紫式部集』より)

こんばんは、もちまるです。

今回も大河ドラマ「光る君へ」についてです。
(バタバタしているうちに更新が遅れました…)

今回は、主人公まひろ(後の紫式部)が親友のさわが亡くなったとの知らせを手紙で知る場面がありました。

手紙には和歌が添えられていました。

いつもの事ですが、その和歌がどういう意味なのか気になってしまい…!
考察することにしました。

和歌はこちら。

行きめぐり 逢ふを松浦の 鏡には 誰をかけつつ 祈るとか知る

南波浩校注『紫式部集』より

この和歌は、『紫式部集』に収載している和歌です。

『紫式部集』を見ているとドラマ内のさわにはモデルがいる事が分かりました。
筑紫の肥前の友達として登場してきます。
肥前は、現在の長崎県です。

『紫式部集』に収載されているこの和歌が含まれた一連の流れを見てみましょう。

ドラマでの該当和歌が登場する前に、さわのモデルとなった人物「筑紫の肥前」の友人が紫式部に手紙を送っていました。

その手紙のお返事に紫式部は和歌を詠みます。
その和歌がこちら。

あひ見むと 思ふ心は 松浦なる 鏡の神や 空に見るらむ

南波浩校注『紫式部集』より

とても素敵な現代語訳がありましたので、現代語訳はこちらの記事から引用させていただきました。

(現代語訳)
あなた(=友達)に逢いたいと思う私(=紫式部)の心は、あなたが住む肥前の松浦の鏡の神が空から見てくださっていることでしょう。

http://kakitutei.web.fc2.com/murasaki/kagami.html  より

その紫式部の和歌に対して友達の返歌が、さわが詠んだとされる和歌になっています。

行きめぐり 逢ふを松浦の 鏡には 誰をかけつつ 祈るとか知る

南波浩校注『紫式部集』より

(現代語訳)
行き巡り逢うのを待つという松浦の鏡の神は、誰のことを心にかけつつ祈っていると知っているのでしょう。あなた(=紫式部)のことを思っているのですよ。

http://kakitutei.web.fc2.com/murasaki/kagami.html  より

お互いが、お互いを大切に思っている事が伝わる贈答です。

松浦の鏡の神を軸にして、お互いの会いたい気持ちが伝わってくるあたたかい和歌たち。

さわは、まひろに会いたいと願いながらこの和歌を詠んだのでしょうか。
会えずに亡くなってしまうとは、何て切ないのでしょう😢

この和歌のキーワードになっている松浦の鏡の神とは、松浦にある鏡神社のことだそうです。
(余談ですが、松浦という場所は、以前の仕事でお世話になり縁を感じています…)

鏡神社のHPに大変興味深い記事がありました。
(平安時代から現代まで続く神社に歴史を感じますね)
HPはこちら。

以下、HPの引用です。

源氏物語第22帖「玉鬘」にて鏡神社が物語の舞台となります。玉鬘は幼少の頃を鏡神社で過ごし、その美しさから求婚者が多く、玉鬘への愛の深さを詠まれた歌に「君にもし心たがはば松浦なる鏡の神にかけてちかわむ」とあります。都に戻った玉鬘は光源氏の寵愛を受け、物語の中でも随一幸せになれたヒロインであり、「玉鬘」より「真木柱」までの10帖は玉鬘10帖とも呼ばれ、源氏物語の中でもドラマティックで大変人気の有る部分です。

https://kagami.or.jp/keidai/genjimonogatari/  より


何と!『源氏物語』に鏡神社が出てくるとは!
玉鬘は、幼少時代を鏡神社で過ごしたのですね。

紫式部が『源氏物語』で玉鬘という存在を登場させた時、その脳裏には筑紫の女友達の存在があったのでしょうか。

『源氏物語』に和歌のキーワードとなった神社が登場するくらい、紫式部にとって友達の存在は大切なものであったのではないでしょうか。

このさわのモデルとなった筑紫の女友達との話がさらに『紫式部集』に登場します。

とほきところへ行きにし人の亡くなりにけるを、
親はらからなど帰り来て、悲しきこと言ひたるに

いづかたの 雲路と聞かば 尋ねまし 
列離れけん 雁がゆくへを

南波浩校注『紫式部集』より

(現代語訳)
遠い所(筑紫の女友達とされている)に行った人が亡くなったのを、親や兄弟が悲しいと言ったので
どちらの雲路かと知っていたならば、たずねてゆきたいものですが。
列を離れたという雁の行方を。

水垣久訳注『新訳 千載和歌集』を参考

この和歌が『千載集』に収載されているということで、『千載集』の本を見たところ以下のような注釈がありました。

親兄弟を残して死んだ人を「列をはなれけむ雁」になぞらえ、弔った。
(中略)
「雲路」は雲の中にあると想定された道。鳥や天女はそこを通ると考えられた。

水垣久訳注『新訳 千載和歌集』より

やはりさわのモデルとなった人物は、早くに亡くなってしまうようです。

ドラマは史実に沿っていたのですね。

まさか、まひろが手紙を受取るというほんの少しの場面から、
こんなに話題が広がるとは思っておらず、びっくりです。

情報量が多すぎて何が何やら状態ですが、今回のまとめとしては…

・「光る君へ」に登場する「さわ」には『紫式部集』にモデルとなる人物がいた→筑紫の女友達

・筑紫の女友達との和歌の贈答でキーワードになった鏡神社は、
『源氏物語』の玉鬘の部分で登場する

というところが特に、重要な点になるかと思います。

難しい話になってしまいましたが、今回はこの辺で終わりにしようと思います。
(色々バタバタしている中で書いたので、もし間違いがあったらすみません🙇)

長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

*おまけ*

どうしても『紫式部集』が気になって、気になって、ポチしてしまいました
読むほどに世界が広がる、難しいけれどとても奥の深い本です。




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