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ゲーム会社のお仕事(アシスタントディレクター編)

こんにちは。ふくもちです。
とあるゲーム会社で働いている私の仕事内容を紹介する記事、第2弾です!
昨年6月14日

<<次回予告!>>
なぜか遅れるスケジュール。
その穴を埋めるべく、会社に引きこもってデバッグに勤しむ年末年始。
マスターアップは3日後だというのに、ゲームの完成度が70%!?
「ディレクター、ちょっと鼻声ですけど大丈夫ですか? 花粉症にしては早すぎません?」がフラグになるなんて!
ここで秘儀! 発売日にパッチを配信だ!
この次も、サービスサービスゥ!
(スケジュールなどの進行管理を紹介します)
※「ゲーム会社のお仕事(版権管理編)」より

と、まあ大変ド派手に次回予告なんぞをしてから、早8か月!
寝かせに寝かせまくった【進行管理編】をようやく書ける段階になったのですが「『進行管理は、いろんな〆切を追いかける人です』としか言えなくない?」ということに気が付いてしまいました。
そこで【アシスタントディレクター(AD)編】に変えてお送りします。

<この記事、どのくらいで読める?>
まとめまでであれば【4分~5分】 ※約2,200字
余談まで読むと【5~6分】 ※約2,900字

そもそもディレクターとプロデューサーって何が違うの?

これは業界どころか会社によっても解釈が異なると思います。
私が所属する会社では

ディレクター :作品の中身(シナリオや絵など)に携わる長
プロデューサー:作品の外側(営業や宣伝、収支計算など)に携わる長

という分け方です。
ADはゲームの中身を作るディレクターの補佐ですので、中身における進行管理や、品質管理の部分を担っています。

ディレクターとプロデューサーの違いを認識していただいたところで、早速ADの仕事を紹介します。

進行管理

ひと言で説明するなら【〆切の鬼】
発注、納品、実装など、様々なスケジュールを組んで、〆切を守らせにあちこちを駆けずり回る役です。
ドラマでよく描かれる、出版業界の編集者さんをイメージしてもらうといいかもしれません。(実際のところは分かりませんが)

公式サイトの制作や店舗特典、営業広報といった、ゲームの外側におけるスケジュールとの兼ね合いもあるので、正直、ゲームの中身と外側で進行管理を分けるのはよろしくありません
そのため、全体のスケジュール作成はAPが行い、ADは中身部分を守らせる〆切の鬼に回ることが多い気がします。

発注リストの作成と素材管理

何がどのくらい必要かを洗い出し、リスト化。そのリストを基に、制作状況などを管理します。
ディレクターの性格にもよりますが、必要素材を洗い出した後、グラフィッカーさんなどに発注する用の発注書に使う資料を集めたり、発注書のたたきを作成したり、というところまで作業することもあります。

シナリオやイラストなどの素材チェック

「面白い、面白くない」「構図や表情の描き方」というクリエイティブ部分はディレクターがチェックし、ADは誤字脱字や設定との相違が無いかといった【正確さ】の部分をチェックします。
ディレクターのほうでも見てくれていることが殆どですが、Wチェックは重要です。

収録立ち会い

ボイスありのゲームの場合は、キャストさんの収録に立ち会います。
ここでも、演技のニュアンスはディレクターが、読み間違いや収録漏れの確認をADが、という役割分担で進めます。
時々、収録中にテキストの誤字に気が付いたり、読みやすいようにテキストを書き換えたりすることがあります。
その変更を記録しておき、後でゲームに反映させるのもADの仕事です。

スクリプト入力と演出チェック

スクリプト入力というのは、出来上がった素材を組み合わせて、ゲーム演出を実際に構築していく仕事です。【スクリプター】という専門の職種もあります。
プログラマーとは異なり、開発言語を分かりやすく簡略化したツールで作業をするので、CやJavaなどのプログラミング言語に関する知識がほぼゼロでも扱えるというのが大きな特徴です。
多くのゲーム会社さんでは、社内総出で作業したり、スクリプターを臨時で雇用したりすることが多いと思います。

ADは、いろんな人が作業してくれた演出を見て、意図通りになっているか、不自然な点は無いかをチェックするのが仕事です。
最終的にはディレクターがチェックしますが、その前に直せるものはAD段階で差し戻します。
時々人手が足らなくなると、自分でもスクリプト作業をやります。

デバッグ

ゲームが急に止まらないか、映像におかしな点はないか、といった不具合を調べるのがデバッグです。
基本的にはデバッグ専門の会社さんに一通りチェックをお願いします。
ADは外部からの報告を基に、不具合の内容を確認・検証し、修正が必要と判断した場合、各所に修正依頼を出すのが仕事です。
修正の優先度決め、どの不具合を直したか、といった管理も行います。

まとめ

ADは、ゲームで遊んでいてちょっと感じるストレスや萎えを無くせる重要なポジションだと思っています。
誤字が多いとテキストを読み進めるにはストレスになりますし、演出に解釈違いがあると萎えてしまいます。
そしてそれらが積もると「このゲーム面白くなかった」という、完全なマイナス感情に変わります。
でも、ADがしっかりとチェックして潰すことで、小さなストレスを無くし、「このゲーム面白かった」に変えることができるのです!

これはADだけでなく、スクリプトやデバッグなどの専門職にも言えることですが、0から1を作るだけがゲーム開発者ではありません。
ディレクターやプランナーといった0→1の部分に注目されがちですが、ぜひ、こうした縁の下の支えにも注目してみてくださいね。

余談

版権管理編の次回予告に書いたアレコレを解説します。全部実話です。

会社に引きこもってデバッグに勤しむ年末年始。

2018年から2019年の年末年始は会社に泊まり込んでデバッグしていました。
これは私のスケジュール管理がザルだったのと、想像以上にシステム構築に時間がかかったため、外部デバッグの開始までに素材実装が終わらず、ひたすら自分でデバッグしてその分を巻き取るという力業をやったからです。
当時社内にはデバッグに回せる人手が無く、基本一人でやりました。
本来は二重三重チェックが基本です。絶対ダメです。

「ディレクター、ちょっと鼻声ですけど大丈夫ですか? 花粉症にしては早すぎません?」がフラグになるなんて!

忘れもしない2019年1月2日。隣の席のディレクターにかけた言葉です。
その2日後、見事に風邪をひき、39℃近い熱を出したディレクター。
マスター提出(品質チェック用のゲームROMをプラットフォーマーに提出すること)の2週間前で、かつ前述のとおり自社デバッグ中でてんやわんやしていた時期だったので、戦力の喪失は非常に痛手でした。健康 is 大事。

マスターアップは3日後だというのに、ゲームの完成度が70%!?
発売日にパッチを配信だ!

最近は便利なもので、インターネット経由で修正パッチの配信ができます。
本当は発売日当日にパッチを配信するなどあってはならないのですが、開発が間に合わず、一部の機能をパッチに組み込んで配信しました。
何度も言いますが、ここに書いたことのほとんどは非推奨です。

以上、解説と反省でした……。
ゲーム業界を目指す学生さんや、ゲーム業界に転職希望の方、ぜひこれを反面教師に励んでいただければ幸いでございます!

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