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ゲーム会社のお仕事(版権管理編)

こんにちは、ふくもちと言います。
とある会社でコンシューマゲームを作っています。
「ゲームを作っている」といっても、絵描きやデザイナー、シナリオライターなどのクリエイターやプログラマーではなく、進行と版権の管理業務がメインです。
一般の方からすると、ゲーム会社において、クリエイターやプログラマー以外の人は何をしているのか、正直見えにくいと思います。
そこで、今回の記事を作成しました。

<こんな方にオススメです!>
・将来ゲーム会社で働いてみたいと思っている学生さん
・ゲームなどのコンテンツが好きで、その裏側に興味のある方
・現在管理業務をお仕事にされていて、業界チェンジを考えている方


■版権管理って何?

版権管理とは【作品の権利まわりを管理する】仕事です。
その中でもいくつか種類があるため、それぞれ分けてご紹介します。

■ライセンス業務

自社キャラクターを使った商品制作を他社に許諾したり、逆に他社のキャラクターを使って商品を作る許可を取ったりする仕事です。
IP(Intellectual Property。知的財産権)ビジネスとも言われます。
私が所属している会社は、どちらかというと【他社に許諾】することが多いです。
例えば他社さんから「御社のキャラクターでグッズを作りたい」との依頼があったとき、どういった業務を行っているかと言うと……

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 ①グッズの種類や製造数、使用する素材を確認
 ②社内で「作品にふさわしい内容か」などを検討し、許諾
  契約書のフォーマットを基にドラフト(下書き)を作成し、社内外に確認を取り、締結
 ③商品デザインや色校正の監修
  ここは作品のクリエイターにも見てもらいます
 ④許諾料の請求書を発行、必要に応じて報告書などを受領する

なかなかにやることが多いですね(笑)
ただ「OKです」としているのではなく、デザインやラインナップを見て
「このキャラも人気ですよ」とか
「作品の発売記念日に合わせて展開できませんか?」
といった提案も行います。
【商品企画】や【プロデュース】といった側面も持ち合わせているかもしれません。

ゲームだけでなく、アニメや漫画、ドラマなどでもライセンスに関する仕事は多いと思います。

■他社との共同事業における収益管理

正直これを「版権管理」のくくりにして良いのか悩みましたが、昨今の【製作委員会方式】増加により、こうしたお仕事をされる方も多いと思いますので入れておきます。

アニメでよく【「作品タイトル」製作委員会】というのを見ませんか?
これは『この作品は複数の会社でお金を出し合って作っているんですよ』ということを意味しています。
複数、というのは3社でも5社でも、多いところは16社くらい関わっていることもあります。
そして、各社で「商品化の窓口はA社、DVD化はB社、キャラソンなどの音楽事業はC社が担当」といった割り振りがされます。
割り振りを基に、各社でコンテンツビジネスを進めていくのです。
お金を出し合って一つの作品を作っているということは、儲けが出たときは各社で分け合わなければなりません。
収益管理は『ここでいくら儲かりました。なので皆さんへの配分はこれです』という計算や手続きを行う仕事です。

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私が所属している会社は、他社との共同で作った作品が多く、アニメの製作委員会にも入っているため、非常に大変です。
具体的にどのような業務をしているかと言いますと……

 ①毎月、ゲームの販売数量やグッズの売り上げ、上の項目で説明した他社への許諾によって得た収益を記録する
 ②3カ月に一度(4月、7月、10月、1月)、出資率や契約に定めたロイヤリティ料率に基づいて分配額を計算し、報告書を作成する

文字にすると単純そうに見えますが、作品数が多かったり、関わる会社さんが多くなると本当に大変です。非常にややこしくなります。
例えば弊社の作品で
 ・他社と共同でゲームを制作。
  ゲームの売上に応じて、共同制作の会社さんにロイヤリティを支払う
 ・その作品のアニメ製作委員会に入っており、商品化許諾の窓口を担当している
物があるのですが、アニメ版のグッズ化という形で許諾を行った場合、以下のようなお金の流れになります。

スライド3

 ①商品化を許諾。A社から許諾料をもらう
 ②A社からもらったお金を、アニメの幹事会社であるB社に報告し、窓口手数料を引いて支払う
 ③B社から作品に関するすべての窓口の収益報告が届き、お金を出した割合に応じた「出資分配」と、原作元への許諾料が支払われる
 ④B社から支払われたうちの「原作許諾料のみ」を、ゲームの共同制作者であるC社に一部支払う

……ややこしいと思いませんか?
しかし、1社だけで莫大なお金を出すことが難しくなりつつある今では、とても大事な仕事であり、これからも増えてくるものと思われます。
計算はExcelがやってくれるので多少苦手でも問題ないですが、
何を、どのくらい、いつ、支払う(またはもらう)のか
の理屈部分を、契約書から読み取ったり、間違えないようにしたりという点は非常に大事です。

■商標、特許などの法務

これが一番「版権管理っぽい」仕事ではないでしょうか。
ただ、私は法律の専門家ではなく、会社もこうした業務は法律事務所の先生に基本お任せをしているため、詳しいことは書けません。申し訳ありません!

■この仕事に就くには?

具体的に「ライセンス管理」などで募集をかけていることもあれば、総合職、プロデュース職、商品企画での採用というケースもあると思います。
私の場合は総合職ですし、版権管理以外の仕事もしています。
そのため「ライセンス管理をやりたいんです!」という意気込みで入社しようとすると、なかなか難しいと思います。

<勉強しておくといいこと>
・算数、数学
 四則計算や割合ができればOKです。動く点Pとかは間違っても出てこないので安心してください(笑)
 数字に対する苦手意識は無くしておいた方が良いと思います。
・読書(特に新書)
 契約書を読むことが多くなります。長くて小難しい文章に慣れましょう。
 また、「何が書かれているかを読み解く力」も必要になりますので、『主題は何か』『論述の展開の仕方』『結論は何か』に注目しながら読んでみてください。

■最後に

いかがでしたでしょうか?
ゲーム業界に拘らず、キャラクタービジネスを行う会社さんに共通する内容になってしまったのですが、作り手だけではなく、こうした仕事も作品を支えています。
少しでも参考になりましたら幸いです。

<<次回予告!>>
なぜか遅れるスケジュール。
その穴を埋めるべく、会社に引きこもってデバッグに勤しむ年末年始。
マスターアップは3日後だというのに、ゲームの完成度が70%!?
「ディレクター、ちょっと鼻声ですけど大丈夫ですか? 花粉症にしては早すぎません?」がフラグになるなんて!
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この次も、サービスサービスゥ!
(スケジュールなどの進行管理を紹介します)

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