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塩田千春展 魂がふるえる【感想】

8月の終わり頃、念願だった「塩田千春展 魂がふるえる」を訪れました。

森美術館(東京・六本木)で開催されている、塩田千春の過去最大規模の個展です。

印象的な「魂がふるえる」というこの展覧会の副題は、「言葉にならない感情によって震えている心の動きを伝えたい」という思いが込められているとのこと。

副題の「魂がふるえる」には、言葉にならない感情によって震えている心の動きを伝えたいという作家の思いが込められています。
出典|塩田千春展:魂がふるえる - 森美術館 MORI ART MUSEUM

訪れてみると、誇張でも比喩でもなく、確かに魂はふるえるんだ、ふるえるとはこういうことかと作品の端々から感じられました。

■息をのむ空間、インスタレーション

会場に入るとすぐ、ブロンズ作品やドローイングが壁に沿って並んでいました。
ひとつひとつを眺めながら進んでいき、ふと何の気なしにふりむくと、背後には圧倒的な赤の光景が広がっていました。

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塩田千春《不確かな旅》2016年

メインビジュアルにも起用されている《不確かな旅》が早速登場です。
繊細で緻密な糸の重なりがダイナミックな空間を生み出していました。
赤い糸が、自分の横にも、上にも、背後にも、足元にも張り巡らされていて、「そのように創られなかったらこの世には存在し得なかった」空間や空気を作り上げていました。

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塩田千春《静けさのなかで》2002/2019年

焦げた木の匂いを漂わせる焼けたグランドピアノが印象的な空間でした。
「音を奏でる」という楽器としての「本質」を失ってもなお、そこに存在していました。音をなくしても、姿が静かに語っているようでした。
存在そのものが失った「本質」を想起させ、今はない音までもを私の中に存在させるのかもしれないなと感じられました。

■最後に手がけた油絵

インスタレーションがSNSなどで話題となっているこの展覧会ですが、絵画や写真、映像作品の展示もされていました。

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塩田千春《無題》1992年

飾られていた抽象画がとてつもなく好きでした。
この油絵を最後に、絵画を手がけることはなくなったと紹介されていました。自分の表現の方法として、油絵は適さないと感じたからだそうです。

画面に配置された色の前に立ったあの感覚が好きだったので、もうこの方の絵画が見られないと思うと物寂しい感じがました。でも確かに、あの人の空間芸術は他の手法による作品とは別格だと、絵画とインスタレーションを交互に見て思った節もあります。

■空間芸術の魅力

空間芸術で私が好きなのは、「二度とないその瞬間に立ち会う」ことなのかもしれないですね。

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塩田千春《集積―目的地を求めて》2016年

大量のスーツケースが吊り下げられたあの空間の、ゆらゆらと相互にぶつかり合ってゆれるスーツケースの、その影、あの影、二度と見られないあの瞬間だけ作り出される影が、ただただ美しかったです。
ずっと見ていたいとさえ思いました。

■ぜひ、ふるえてきて欲しいと思う

写真で見ていたよりも圧倒的に心を掴まれました。
言葉だけではこの体験は表現しきれないなと感じます。

ぜひあの空間を訪れて欲しい、と誰かに伝えたくなるような美術展でした。

「魂がふるえる」を表現した作品から、「魂がふるえる」ということを感じながら、自分の心も確かにその作品たちにふるわされました。

【塩田千春展 魂がふるえる】
会期:2019年10月27日まで
会場:森美術館
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※ただし10⽉22⽇(⽕)は22:00まで(最終⼊館 21:30)

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