#7★「ママ、遠慮しないでね?」
6個入りのお菓子が、3個残っていた。
1つはおじいちゃんが、
1つはパパが食べたことは分かっている。
残りは3つ。
こどもたちは3人。
あれ?あと1つは、誰が食べたんだろう?
おじいちゃんと一緒に、おばあちゃんが食べたのかな?
ん?ママは、食べた???
こどもたちは、お菓子を食べる前に考えた。
「ねぇ、ママ~?ママは、これ食べた?」
ママは心の中で小さく舌を出した。
(あ…。それこないだお腹すいて先に食べちゃった…。ごめーん!笑)
「うん…。食べた!!!」
こどもたちは何故か疑っていた。
「え~…。本当にぃ???」
小6の長女と小4の次女は、ママをじーっと見つめた。
「え??うん。食べたよ??なんで?」
きょとんとするママの目の奥を、さらにじーっと見ていた。
すると、5歳の長男が、
自分の手元に置いていたお菓子を、ママのお皿に乗せに来た。
「はい。これ!!!ママのね。」
ふふん!と誇らしげな顔をして、彼は自分の席に戻った。
「えっ…。いやいや、本当にママ食べたって!」
戸惑うママを横目に、
長女は残りの2つを、ナイフで半分に切ろうとしていた。
「ねぇねぇ。みんな1人1個食べていいんだよ?」
息子が置いてくれたお菓子を、彼のお皿に戻しながら、ママは言った。
すると、
「これね、ママがさつまいも好きだから選んだんだよ?」
「ママいつも遠慮しちゃうからさ。食べてよ?」
「僕、今日だけは、はんぶんでもいいよぉ~!」
こどもたちは、本心で言っていた。
遠慮や我慢ではなく、
本気で想って言ってくれたことが伝わる声だった。
ママは嬉しかった。
嬉しさと同時に、申し訳なさも感じた。
「気ぃ遣わせてごめんね。ありがとう。」
こどもたちはニヤニヤして、
「ううん。ママと一緒に美味しいねってしたかっただけ。」
「えー!じゃあ1個食べちゃお~♬」
「え!僕も1個食べていいのぉ?お腹ぽんぽこりんかなぁ、大丈夫かなぁ」
そう言いながら、お菓子を美味しそうに頬張っていた。
ママはこどもたちを育てているけれど、
(こどもたちに育てられているなぁ…)
と改めて感じた。
「はいっ!!!!」
とっても小さくちぎったお菓子を、長男はママの口元に持ってきた。
「いいの?」
ママが聞くと、
「いいよ!」
と嬉しそうに口に入れてくれた。
「うんっ!!美味しいっ!!!」
ママは本当に嬉しそうな顔をした。
長男も、満足そうに笑った。
そんな2人を見て、
長女と次女も嬉しそうに笑っていた。
〖こどもたちに笑顔でいて欲しい〗
そんな想いと同じくらい、
〖ママに笑顔でいて欲しい〗
そう想ってくれるのが伝わってきた。
(愛されてるんだなぁ…)
忘れられない朝になった。
(※こちらの記事は2023年4月に書いた記事の再掲です)
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