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最近読んだ本の話 vol.46

 「最近読んだ本の話」の第46弾です。だんだん冬が近づいてきました。もう冬なんだろうか?紅葉が終わったら冬かなあ。今週も最近読んだ本を3冊ご紹介します。


1、サラ・クロッサン『タフィー』

父さんの暴力から逃れ、家を飛びだしたアリソン。古い家の納屋に身を隠すが、家主のマーラという老女に見つかってしまう。認知症のマーラは、彼女を昔の友人・タフィーと間違えているようで――。孤独を抱えたふたりが出会い、思いがけない同居生活がはじまる。カーネギー賞作家が詩でつむぐ、友情と再生の物語。                                                       -Amazonより引用-

 詩で書かれた物語ってどんなものなんだろう?と興味があって、読みました。父親の暴力から逃れるため家を飛び出した主人公のアリソンが、認知症のマーラと出会い、2人の奇妙な生活が始まります。哀しくてやさしい物語です。読んでいると好きなところがいっぱいあって、「やさしいなあ」と思いながら泣きそうになります。マーラがアリソン(マーラは友達のタフィーだと思っている)を元気づけたり、アリソンがマーラが元気になるように笑わせたりします。やさしい2人です。1つ1つ題名のついた詩が、たくさん集まって物語になっています。少し前のできごと、今のこと、もっと前のできごとが書かれています。読んでいるとアリソンの気持ちが伝わってきて、この作品を書いた著者は他にどんな作品を書くのだろう、と興味が湧きました。


2、グレゴリー・ケズナジャット『鴨川ランナー』

日本と世界の狭間で生まれた中篇2本。
「鴨川ランナー」……外国から京都に仕事に来た青年の日常や、周囲の扱い方に対する違和感、その中で生きる不安や葛藤などを、「きみ」という二人称を用いた独特の文章で内省的に描く。京都文学賞受賞作。
「異言」……福井の英会話教室を突如やめる羽目になった主人公は、ある日同僚の紹介で結婚式の牧師役のバイトを紹介されるが……。
                        -Amazonより引用-

 日本語めっちゃ上手い!難しい言葉がふんだんに出てきます。たぶん著者は私よりも知っている日本語の単語の数が多そうです。「鴨川ランナー」と「異言」の2編が収録されています。「鴨川ランナー」は、高校生の時に訪れた京都の鴨川の光景をずっと心に思い描いて、日本語の勉強を続けて大学卒業後に京都にやって来た青年が、見たり感じたりしたことが描かれています。主人公は、鴨川にかかる四条大橋から北の方を見た景色に思い入れがあります。出町柳に住んで、鴨川の河川敷をランニングするのですが、私も同じ河川敷をランニングしていたことがあって、読んでいると景色が頭に浮かんできました。主人公は、日本に住んで何年たってもよそ者でしかない、と感じてがっかりするのですが、でもね、地域の中になかなか溶け込めないのは日本人同士でもそうなんだよ!と、著者に話しかけたくなりました。
 「異言」は、福井で英会話教室の講師をしていた主人公が、英会話教室が倒産して結婚式の牧師の仕事を始めるお話です。流暢な日本語を話す主人公が、恋人には英語で会話することを求められ、結婚式の牧師の仕事では片言の日本語でしゃべることを求められて、がっかりして気の毒です。一生懸命勉強したのに!


3、舞城 王太郎『畏れ入谷の彼女の柘榴』

舞城王太郎がすくい取る、不条理で愛しい人間たち。『林檎』『檸檬』に連なる、作家デビュー20周年の記念短編集!      -Amazonより引用-

 「畏れ入谷の彼女の柘榴」と「裏山の凄い猿」と「うちの玄関に座るため息」の3編が収録されています。どの物語も考えさせられるというか、私の考え方はこれでいいのかな?と、自問自答しながら読みました。特に最後の「うちの玄関に座るため息」は、『後悔しない』ことを最優先すると、力を尽くさないことになるのではないかという問題が、難しかったです。もしこの物語の中に私が入ったとしたら、ひと言も喋れないんじゃないか、それじゃダメだろう!と思いながら読みました。すごいなあ、こういう小説って。


 今週も「最近読んだ本の話」を書くことができました。読むのがなかなか追いつかず、来週はちょっと前に読んだ本をご紹介しようと思います。一歩ずつゆっくりやっていきます。最後までお読みくださってありがとうございました。

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