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将来の夢 【2/4】

小学生の頃、私の将来の夢は漫画家だった。

というより、絵を描く職業=漫画家だけだと思っていた。
漫画のストーリーを考えた覚えはないから、今思えば漫画家と言うよりイラストレーターになりたかったのだと思う。

上手い絵を描くにはどうしたら良いかを考え、漫画の一コマをトレースした事もあった。
当時はトレーシングペーパーなんて知らなかったから、自由帳の白紙や父の仕事部屋から拝借したコピー用紙を好きなコマに押し当てて必死に描き写していたっけ。


成長するにつれて、私の将来の夢は漫画家ではなくなった。
小学校の高学年ごろには通訳(英語)にあこがれ、中学生になると保健室の先生になりたいと思い、高校では理学療法士を志して勉強し、高3の夏には「将来の夢」がなくなった。

とりあえず家から一番近い大学に入ってからは、「なりたい」より「安泰」を選ぶようになった。
卒業後はそのまま同大学の嘱託職員として働き、契約満期を迎えるタイミングでパン屋を営む先輩に呼ばれてマネージャー(と言う名のなんでも屋)を経験させてもらった。
結婚を機に上京して、出産を機に辞めるまで、グラフィックデザイナーのアシスタントになった。
そして今は少し堅い事務職のパートとして働いている。

「将来の夢」は一つも叶わない、と嘆くつもりは一切ない。
むしろ、夢を叶えるために必死に努力してこなかった事を反省している。


コピー用紙で絵をトレースしていたあの頃から20年以上経った今、私は初めてトレーシングペーパーを買った。
今度こそ、ちゃんと夢を叶えたいと思う。

『イラストレーター』
それが私の将来の夢。

*書いた人* モブキャラ夫婦の妻・ユミ

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