もとこ

社会に伝わる哲学を

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最近の記事

「一般的な死」と「死刑囚の死」

0. はじめに 私はまだ20代後半なので、つい最近まで自分の死というものを身近に意識したことはなかった。しかし、昨年末に心臓に痛みを覚え、束の間ではあったが死の恐怖を感じた。幸い大きな総合病院で診てもらったところ、ストレートバック症候群という心疾患とよく間違われやすい症状であることが分かった。特に、治療や投薬が必要な病気ではないため、検査を終えてからそのまま帰宅し、数ヶ月経ったが元気に過ごしている。  そうしたちょっと怖い経験をしたので、「死」について考えることが近頃少しだ

    • 反出生主義の実現とは

      0. はじめに  反出生主義とは、子どもを産むことは非道徳的であるとする哲学的立場である。はじめに私自身は反出生主義者であることを明かしたい。その上で、本投稿において、反出生主義の実現とは何かについて考えてみたい。表題を少し補足すると「反出生主義の理想が実現した状態とは何か」になる。  私は一般的に反出生主義の実現とは「反出生主義の思想が世界に広まり、全人類が自主的に反出生主義を実践、すなわち子どもを産まないようにすることで全人口がゼロになること」(実現A)だと思っている。

      • 思想の広め方 – 反出生主義を念頭に

        1. はじめに 反出生主義とは、子どもを産むことは非道徳的であるとする哲学的立場である。本投稿では、反出生主義の詳細な紹介や思想の是非については述べず、その思想の広め方(啓発活動)についてのみ考察する。したがって、反出生主義とは関係ない何らかの思想などを広めたいと思っている人にとっても本投稿は参考になりうるし、なってくれれば幸いだ。啓発方法に実現性があるか否かはなるべく読者の判断に委ねたいと思っており、かつ実現性はなくとも何かのヒントになれば幸いと思っているため、実現性が乏し

        • 反出生主義への疑念 – 実践すべきかについて

          0. はじめに  反出生主義とは、子どもを産むことは非道徳的であるとする哲学的立場である。はじめに私自身は反出生主義者であることを明かしたい。その上で、本投稿において、私が抱いている反出生主義への疑念を明らかにする。自身が反出生主義者であるにもかかわらず反出生主義への疑念を投稿する理由は、純粋な知的探求心や、自分の立場に縛られずに自由な思考をしたいという思い、また自己の思想も含めて批判的な態度で臨むべきという自戒の念からきている。  本投稿においては、「反出生主義は実践すべ

        「一般的な死」と「死刑囚の死」

          「なぜ働かなければならないのか」 - その真意

          はじめに「なぜ働かなければならないのか」この質問、インターネットで検索するとそれなりに回答があるのだが、どれも直接的な、悪く言えば表面的な回答になっている気がしてならない。つまり、回答者が質問者の意図を汲み取れず、質問者が本当に聞きたい答えを回答者が返せていないのである。(裏を返せば、そもそも質問者の聞き方が悪いということにもなるが。) 私が考える「質問者の本当の問い」と「それに対する返答」は後半に回すとして、まずは「表面的な回答」について考察したい。以下に、インターネット

          「なぜ働かなければならないのか」 - その真意

          反出生主義を知ったきっかけ

          皆さんが反出生主義*を知ったきっかけは何だろうか。 1. 思想・哲学を調べていて 2. 仏教について研究していて 3. 希死念慮などを検索していて 4. 知人・友人・家族などを通して 5. 不意にSNSで見かけた 6. noteやWebサイトのホーム画面などでたまたま見かけた 7. この投稿で知った      ︙ 一部重複するものもあるが、概ねこんなところだろうか。 *反出生主義とは、子どもを産むことは非道徳的であるとする哲学的立場。 反出生主義を広めるヒント私は反出生

          反出生主義を知ったきっかけ

          神はいるのか - 哲学的考察

          果たして神は実在するのか、死後の世界はあるのか。この問いは長年に渡って人類の間で語られてきた。しかし、その多くが各宗教における聖典の解釈論争や(対立宗教の)教義の矛盾を指摘するような一般人には理解が難しい、枝葉末節な議論に終始してきたのではないかと思う。そこで今回は、そうした神学論争からは少し距離を置いて、一般人でも理解できる哲学的見地から「神はいるのか」について考察したいと思う。 本投稿の補足と背景本題に入る前にいくつか補足と背景を述べたい。冒頭にて、「神は実在するのか」

          神はいるのか - 哲学的考察

          反出⽣主義であまり語られない視点 - 非自発的人類滅亡

          近年、反出生主義に関する文献やインターネット上での議論が徐々にではあるが増えている。しかし、その中で反出生主義者側があまり語らない視点があると思ったので、今回はその紹介をしたい。何をもってあまり語られていないとしたのかは、筆者の目にとまったか否かのため、勝手ながらただの主観だ。あまり語られない話なので、反出生主義の主流の議論からは外れて傍流の論点になる。論点は非自発的人類滅亡だ。 自発的ではない人類の滅亡 反出生主義の議論において人類滅亡を語る場合、その多くは反出生主義が成

          反出⽣主義であまり語られない視点 - 非自発的人類滅亡

          反出生主義に対する反論へのコメント

          このnoteは、他の方の投稿に対するコメントとして投稿しているので、興味がある方は、文末の記事を読んでください。(前記事も含めて拝見いたしました。論点が多岐にわたっているため、すべてにコメントはできませんが、めざめさんやそのページに訪れた人の助けになれば幸いです。) 各論に入る前に反出生主義の重要なポイントを提示したい。まず、親と子ども本人が努力したとしても、残念ながら子どもが「自分の人生は不幸だった」と思うことは十分起こりえるし、そんな不幸な可能性があることを我々人間は子

          反出生主義に対する反論へのコメント