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モフリーの始め方③~メニュー開発編Vol.2~

さて、今回はモフリーの始め方③~メニュー開発編Vol.2~という事で、二番目の柱のお話。


②手間と材料をかけないで作れるか検証する。


業界潜入編で書いたのだけど、飲食店に勤めて感心した事の一つが、

『一つの食材が様々なメニューに使われていて廃棄が出ない(あるいは減る)ように工夫されている』

という事だ。

そしてそれは発注する種類も絞れて、食材の管理業務が大幅に軽減される事にも繋がっていく。

たとえばcafe Mo.freeの場合、卵はミックスサンドにエッグサンドに豆腐丼、ケーキ、プリン、フレンチトースト…といったように幅広く使われている。その為、

「今週はお客さんが少なかったから卵がいつもより余っちゃうなぁ」

という事態になっても、卵に関しては多少の在庫を抱えていても消費期限を迎える事なく使い切れてしまう。

要は管理が多少ザルでも大丈夫という事で、こんな小さい店の規模なのに在庫のコントロールに腐心しなくてもいい、というのは大きなメリットだと思う。

デメリットは言わずもがな、卵を切らしてしまうとこれだけのものが作れなくなってしまう、という事だ。そのため卵が少なくなってしまった場合、仕込みに優先順位をつけて一部を品切れにさせたりもする。

さて、②の本題。以前ガトーショコラのレシピを公開した際にも書いたけど、cafe Mo.freeに於いてメニュー開発最優先事項は、


・他のメニューに使い回せる材料があること

・めちゃくちゃ簡単

・見栄えが良い



僕が実際にやった事は、何でもいいから公開されている、とにかくめちゃくちゃ簡単で自分でも出来そうなレシピをいくつかピックアップして実際に作ってみて、そこから使われている材料を加減していく…という手法。

Vol.1で沢山挙げてもらったメニューはここでだいぶ絞れてくる。実際に作ってみて、面倒なやつは自動的に弾かれていくのだ。

ちなみに例を挙げると、この思想の元に辿り着いたガトーショコラのレシピがこちら。

・チョコレート150g

・卵4コ

・生クリーム50㏄

・薄力粉10g

「これしか使ってないの?」というような無駄を削ぎ落した非常にシンプルなレシピだ。当然味と原価も十分に考慮されているけれど、あくまで先に挙げた3つが最優先で、いくら味が良くて原価が絞れてもこの最優先事項が守られなければ採用しない。

そしてそれらメニューのオペレーションが無理なくこなせるか、何度も検証する。

ただ単純にその料理を「作れるかどうか」というだけではなく、沢山のオーダーが入った時にスムーズに提供できるか、という事の確認でもある。

cafe Mo.freeにはスパゲティは置いていない。でもナポリタンやカルボナーラも本当は出したかった。出来る事ならピザも作りたかった。

しかし先程の「食材の汎用性&種類を最小限にする」という事に加え、パスタ用にお湯を常に沸騰させていなければならない事や調理のタイミング等、オペレーションに無理があるな…という理由で見送った。

もちろん完全に諦めた訳ではなく、この問題が解決されるのであればメニューに載せたいし、時々「ほんとは出せるんじゃない?」と思い立ってピザやスパゲティやグラタン等、それっぽいのも含め試作している。

また、クタクタに疲れて帰って来て「今日はやりたくない…」という状態でタイマー片手に作り始める、という事を何度も試してみた。

どんなに調子が悪かったり疲れていても自分が仕込まなければならない状況なんてきっとザラにあるだろうとやっていたのだけど、これは予測した通りだった。この「自分がどんな状態でも作れる」というのはとても大事な要素だと思う。


ちなみに見出しの画像にローストビーフ丼も描かれているけど、これはグランドメニューに採用されなかったものの最終候補まで残ったメニューの一つだ。だけど採用されなかったと言って使わない選択は勿体ない。レギュラーじゃなくても、スポットやイベントで出したっていいのだ。

とにかく「一人でお店を運営する」という事が僕の中で決まっていた以上、待たせずに提供するというのは至上命題の一つで、この話は「モフリーの始め方②~業界潜入編~」で詳しく書いたので、こちらを何卒。


そしてメニュー作りには欠かせないものの一つ、「マーケティング・リサーチ」。これにも触れておきたいと思う。

その昔働いていたところでは頭文字を取って「MR(エムアール)」なんて呼ばれていたけど、直訳すると市場調査だ。商品やサービスを提供するには、ニーズを知らなければならない。果たして自分が提供しようとしているものの需要はあるのだろうか、という事はもちろん、味や盛り付けのヒントとなるものはないだろうか、という事を探る為に様々なお店で調査をした。


ちなみに当時のフォーマットがこちら。

市場調査報告書

誰かに手伝ってもらう事も考えてわざわざ名前を書く欄も作ったけど、友達がいないので結局一人でやったのはここだけの話。


味と盛り付け、量、価格を調べるだけでなく、注文してからどれくらいで運ばれてくるのかを、実際にストップウォッチで測りもした。

厨房とホールに何人いて、この時間の客席はこれくらい埋まっていてこれくらいで運ばれてくる…というのも統計を取ったし、料理だけでなく、駅から離れるとどんな客層なのか、喫煙や禁煙の利用者数、年代の差、滞在時間は長いのか短いのか・・・というのも出来る範囲で調べた。


そんなリサーチにも明け暮れていた時の写真がこちら。都内某所の珈琲とガトーショコラ。

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ビートルズのカップが素敵でした。


またある時は、都内某所の高級紅茶専門店へ。

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今でも覚えているけど入ってみたら女性客で満席、とても中年男性が一人で休むお店ではなく、非常に落ち着かなかった思い出(個人的な感想です)。


こちらは埼玉県の某所、品の良い老夫婦がやっているカフェ。

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奥様が作るさっぱりしたチーズケーキと、マスターがこだわって集めた器に丁寧にハンドドリップで淹れる珈琲。


などなど、半年というリミットなのでそこまで多くは行けなかったけど、自分の料理を一旦離れて、世間では何をどんな値段で出しているのかを客観的に見るためにも、できるだけ多くの店を回った方がいいと思う。

大事なのは「テーマを決める」事。

たとえばフレンチトーストとテーマを決めたら、価格はいくらでどんな量と盛り付けで何が乗っているか。注文してから提供までどれくらいの時間でテーブルまで運ばれるのか。そして味はなるべく「美味しい」という言葉を使わずに表現する。

そういった、ただ美味しい物を食べに行くという目的だけじゃなく、料理人と経営者の目で観察するとより多くの事が参考になると思う。さらに言うと、なるべく悪い部分よりも良い部分を探す事だろうか。盗めるところを積極的に探す事を心掛けた。

そしてこういった足で集めたデータは、時々不安になる自分への「自信を与える材料」にも繋がる。自分で集めた情報や分析したデータが多ければ多いほど、「これだけやったじゃないか」という自分へ言い聞かせられるのだ。合ってるかどうかはとりあえず置いといて、自分に自信を持つ、というのは本当に大切な事だと思う。

開業までの準備期間というのは状況やタイミングがあるので人それぞれだけど、ほとんどの人は思い立ってもすぐに出来るものではない筈だ。僕は2年半くらいで出来たけどおそらく早い方だし、実際はもっとかかると思っていた。

これは目的を達成する為の行動の全てに言える事かもしれないけれど、出来るかどうかあやふやな状態で意志を持ち続けるのは、いかに「大丈夫、絶対やれるぞ」と常に自分に言い聞かせられるかどうかによると思う。

なにせ30代も半ばに差し掛かろうとする人がある日「脱サラしてカフェをやるんだ!ネコと毎日いられるように!ピアノが毎日弾けるように!」なんて宣言して仕事を辞めようとしたら、周囲の人は大抵反対すると思う。

そりゃそうだ。なにせ決意した時は知識もお金も経験もまるでなかったから。

そう言われるだろうな、と実際あまり周囲の人に言わなかった僕がぽつりぽつりと構想を明かし始めたのは、勉強のために入ったチェーン店を辞めた頃くらいからだ。それでも「実は・・・」なんて言ってみたらネガティブな意見の方が圧倒的だった。


そんな中で自分は大丈夫だと言える根拠を作るには、本当に小さなものの積み重ねだったりする。


とにかく大事なのは、踏み出す第一歩と目標に向かっていく姿勢を持ち続ける事だ。

もちろん動き出してから無理な事はたくさん出てくるのだけど、出来る事も案外出てきたりする。役に立たなかった知識が突然応用出来たりもするし、向いてないと思い込んでいた事が実はそうでもなかったりする。

未知のもの、これは無理かなというものに立ち向かう時、とにかく必死で「自分の能力でちょっとでも役に立つものはないか」と頭をフル回転させると、思ってもいなかったものが武器になったりする。

大人になると、自分のひきだしって実はけっこう増えてるもんだなぁとつくづく感じた。つまらない毎日を過ごしていて何の取柄がないと思っていたけど、なんだかんだ成長しているものだと感じさせる日々の連続だ。

これを読んでくれた人で、諦めている事に対して少しでもやる気になってくれたら嬉しい。自分を信じてとことん頑張ってほしい。


成功していない自分が言うので、もちろん何も保証はしないけど。

最後まで読んで頂きありがとうございました。