インクルージョンと芸術の関係

クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの人生を追った映画、ボヘミアン・ラプソディ。音楽のすばらしさや、メンバーたちの友情などが描かれで感動的な映画として有名ですね。同時に、多様な人たちが音楽を通して心を通わせる場面や、主人公が自分のアイデンティティを深めていく葛藤も描かれており、現代にインクルージョンの意味を投げかけるきっかけにもなっていたこともわかります。気づいた点を数点ご紹介します。

見た目の違いを受け入れること

主人公は移民であることや、見た目のことで周囲から何度もからかわれます。バンドのメンバーたちも初対面ではそうでした。それが、歌を歌い出した瞬間に、その素晴らしさに圧倒されて、からかっていたことを撤回すべく、喝采に包まれるのです。

主人公ではなく、バンドのメンバー側、観客側になった時、誰もがこのような経験をしているのではないでしょうか。自分とは見た目が異なる人に出会った時に、無意識に出してしまう戸惑いの表情や態度。そのことに気づかされる場面が何度もあるのです。

ジェンダーを超えること

バンドメンバーたちの衣装の華やかさも映画の魅力の一つです。主人公が最初のライブで来ていた服は、よく見るとお母様が来ていた服でした。他にもブティックで中性的な服装を試してみる場面や、TV出演時にマニュキュアをしている場面などが出てきます。それらがとても自然で、今の時代にもフィットする感性のものばかりでした。男らしく、女らしく、と言われる服装もある中で、本人に似あうものであれば自由に選んでいいのではないかと、私たちにも投げかけているのではないでしょうか。

多様性を受け入れること

コンサートの場面では、多様な人たちが観客として描かれます。会場、TV映像を見る人、事務局として働いている人。そうして、誰もが自分らしいスタイルで音楽を楽しんでいる様子が分かるのです。

音楽や美術、観劇など、芸術の世界では、他者との違いを超えて同じ楽しみを共有する体験ができることが醍醐味ではないでしょうか。ステージに立つメンバーが多様な個性を持っておりそれを表現していることで、観客側も自分の中のインクルージョンが進み、進化していくのではないかと思います。


映画で主人公を演じたラミ・マレックがアカデミー賞受賞スピーチで伝えたメッセージもこれらにつながっています。彼自身も移民というバックグランドを持っているのです。

“We made a film about a gay man , an immigrant, who lives his life just unapologetically himself. The fact that I’m celebrating him and this story with you tonight is proof that we’re longing for stories like this. 

 I am the son of immigrants from Egypt , a first generation American. And part of my story is being written right now. And I could not be more grateful to each every one of you and everyone who believed in me for this moment. ”


ボヘミアン・ラプソディ公式サイト