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離職歴がある人材と企業のエコシステム

大学院で離職歴がある人材と企業の関係について研究するきっかけの一つが、労働市場における離職人材の捉え方について違和感があったことです。日本では、離職歴があることはデメリットとされ、就職に苦労することが知られています。新卒一括採用を経て就職し、転職したとしてもキャリアを継続することを前提されているため、離職歴があることは企業にとって不安材料であるからです。

そうなると、再び活躍できるのか不安がある→おそらく特別な支援が必要である→かわいそうな存在である、とう態度で対応されることもあります。離職歴がある私自身もそうでした。


けれども、実際には人材が企業で再び働くことは、社会全体に大きな影響を与えています。これまで関わったベンチャー企業のバックオフィス職(人事や経理・総務などの管理部門)として再就職をする事業では、早い時期にバックオフィス人材を獲得することでIPOを目指すことが多いベンチャー企業の成長に貢献し、また、人材が再び働きだすことで家族が自分のやりたいことに目を向け始めることもあります。企業側にも、これらの仕組みを支援することは、多様な背景を持つ人材獲得としてダイバーシティ経営を進めるだけでなく、サステナビリティ活動の一環となり、企業信頼度を向上する一つとなるのです。

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また、かつて担当したひとり親(シングルファーザー・シングルマザー)の就労支援では、地域の企業で人材が働きだすことで、経済的な余裕が生まれてお子さんたちの進学を後押ししたり、元パートナーと対等な立場で話ができるようになり双方が前を向いて歩きだせるようになったという事象もあります。地域の企業にとっても、就活用のスーツの貸し出しなどを行うことで企業信頼度を向上させることとなったり、かつての就労支援利用者が活躍する企業が人材の獲得に動いて事業継続につなげたりという事象が見られました。

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社会の中の仕組みとして考えると、捉え方が変わるのです。そうしてまた、仕組みを理解しておけば、自分が周囲のサポートを必要な時はそれらを受けながら、また社会に復帰しておけばよいし、復帰後に誰かの復帰を後押しする側に回ればよいのではないでしょうか。今は、仕組みの中のどの状況にあるのかということです。