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アメリカ入院日記 2

(これを書いている現在、既に退院しています。気力がなく、全く書く気にならなかった。)2回診察→検査→ER→入院 という流れ。

前回はこちら。

超音波検査をした施設でERに行くことを勧められる。

私としては歩けるし、痛みもあるけどタイレノールで抑えられる程度だったので、施設の人の「驚愕!なんでこの人普通に歩いてるの?」という態度のギャップが本当の体調を間接的に知ることになり、恐ろしい。

「救急車呼べるよ、タクシーで行くの?」

むしろ地下鉄で行けるし、戸惑いしかない。

2回診察してもらったドクターから自分の携帯に電話があり、

「超音波検査の結果を見た、今すぐに近くのERに行きなさい」とのこと。さらなる確定。

撮影してもらった超音波検査のデータをCDに焼くのでちょっと待ってて、と言われる。

え?緊急でERに行けって言うのに?

データで次の病院に送信できないの?とスピード感に戸惑う。そんなに痛くないのでもぞもぞしながら待つ。

CDをもらい、Good Luck!とエレベーターまで呼んでもらい、外に出る。幸運とは。運が必要なのですか、私。そういう意味じゃないことはわかってて卑屈になる。

すぐに保険会社に電話。状況を話してどこの病院に行くのが適切なのかを聞く。たまにやってくる大きな痛みをこらえ、インドっぽい訛りの英語のおじいさんの言うことをよく聞く。ここは大事。それはわかっている。

携帯で車を呼ぶ。

正直、この時点では焦らなきゃいけないことなのか自分では全くわからなかった。でも医療関係者に救急車を呼ばれそうな具合なんだ、と言い聞かせ、地下鉄で行くという方法を考えるのをやめる。

痛みと痛み止めのせいか、自分の体の表面がかさぶたに覆われているようだった。ぼんわりというか宙に浮いている感覚というのか。いつもの自分ではない感覚。

運転しているお兄さんはまさか乗せた人がこれからERに向かってるとはつゆ知らず、いい具合のラップミュージックを流していた。

ふふ、アメリカの日常。さようなら。


ERに着くとなんとERらしからぬ暗い待合室に約20人ほど座っていた。

薄っぺらい小さな紙に名前と症状を書く。それが「受付」らしい。

ラテン系のまあるいご婦人一人がそこに来る全ての人の受付を担当しているようだった。一人あたり約15分かかっている。

これは本当にERなのだろうか。ここにいる人全員が患者さんだとすると受付に3時間かかるんじゃないかとぞっとする。

ERに来た意味は…?

救急車呼んでもらった方がよかったのか…?

そもそもここの病院でよかったんだろうか…?

湧き出てくる嫌な感情と痛み。その繰り返しだが待つしかない。

当たり前だがそこにいる全ての人が患者ではなく、付き添いの人等もいたので1時間半弱で受付を済ませることができた。これから何が起こるのか予想してしまうが、答えはない。

受付を一人でさばいているラテン系のご婦人は私の症状の欄を見て、

「またまた、嘘でしょ、本当にこう言われたの?」(こんなことあるわけないじゃない)と言った風に沢山質問をしてきた。彼女は少し笑っていた。

いや、今日の午後受けた超音波検査のCDあるので見てください、としか言えない。嘘をついてERに来ているわけではないのだが、ERにはきっと色々な事情の人が来るのだろうと思わざるをえない。彼女の判断はともかく、ちゃんと受付してとにかく中に入りたい一心だった。

また一旦椅子に戻され、手続きをする。

案内されやっと中に入れたら、あなたが入る予定のベッドが今ないので椅子で待ってて、と言われる。

そして驚いたことに処置室に入ってから、私は数年前にここに来たことがあることを思い出した。ただ前回は真夜中に行ったせいか、症状のせいか、受付をした記憶が全くない。

すっぱり忘れていたので、まあるいご婦人の"Have you ever been here before?"の問いに"No"と答えてしまった。しまった。


ERの処置室はカオス。

I'm from Europe. とそれだけ連呼しているおじいさんの足はパンパンに赤く腫れ上がっていた。とにかく辛そうな人と、病院関係者が雑多にうごめいている。

...私本当にここでよかったのかな、とまたも疑念を抱く。

中へ案内し、椅子に座らせた人は一向に戻って来ない。このまま放っておかれそうだったので、テキパキ動いているナースらしき人にベッドがないからここにいることを伝える。すぐにベッドを用意してくれた。

ベッドに行ってもとにかく待つ。

医学生が何度も調子を訪ねに来るが何も進まない。超音波検査の施設ではあれほど急かされたのに、ERでは私の症状はきっと軽いものとされている。

ガウンに着替えさせられ、尿と血液検査。

血液検査してくれたナースは私の腕を「打ちやすいけど、黒人さんの肌のよう」と言った。

???

意味がわからなくて他のナースにそんなことある?と聞いたら人によりけり、とばっさり言われた。わかりずらいナースジョークか?皮肉か?今でもよくわからない。

血液検査の時に点滴の管を付けられ、点滴はついていないが右腕があっという間に「患者」のそれになる。

左腕にはQRコードの入ったIDとFALL RISKと書かれた黄色のリストバンドを付けられる。できることはとにかく待つのみ。

血液検査をしてくれたナースが、とてもカジュアルに

「痛かったらモルヒネ打つけど?どう?大丈夫?」と言う。

「コーヒーでもどう?」のノリだ。

ひええ。

痛みのスケールを10段階で言うと?の質問に、少し大げさに7と答えたからか。私の答えは即決、NO。

自分に起こってることは何だかよくわからないし、誰が誰で何の担当で何のために自分のベッドにやってくるかわからなかった。

シャッタースピードを遅くして写真を撮ったら、私と背景だけが全くブレていないような写真になるんだろうなと思った。人々の出入りが激しく、常にガチャガチャしている。

担当医、外科医、アンケートを取る人、ナース、学生、清掃員、カテゴリーできないスーツの大人たち、そして私以外の患者。

近くでは死にたいを連呼するアル中のおじさんがいた。靴は白のエアフォースワン。その患者に対するナースの慣れた態度がそのERでの頻度の多さを表しているようだった。

数時間が経ち、また学生が来て、かっこいい顔をして言う。

「あなたの欄を確認したら、今日は入院って書いてあったけど。

今夜これからそのまま手術かもしれない。

後から外科医が来て詳しく説明するから。」


?????

こんな大きなニュースをさらっと学生がするのですね。彼女が来たのはこれが最後だった。それ以降、特に何も説明はない。はっきりと何が起こるのか確定して欲しい気分。

CTスキャンをするため、造影剤を全部飲んで、と言われる。

そういえば今日の午後に超音波検査があるから、水飲んでって言われたんだった・・・と遠い日のように思い出す。

まだ同じ1日が続いてる実感がない。


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