超話題のなんかすごいらしいSF『三体』を読んだよ

例えるなら「ずっとサビ」なのが、SF小説『三体』なのだ〜!

去年の寒いぐらいの時期、周囲の本好きの評判やちょっとマニアックな書店やたら見かけていた『三体』(劉慈欣・著)を自粛期間に思い切って読んでみた。
『三体』が気になっているけど買うか迷っている人にぜひ読んでほしく、雑な推薦文を書いてみる。

正直言うと、巷で「三体すごいすごい」と騒がれているその「凄さ」は、SFオタクにしかわからないのかもしれない。にわかSFファンの私にとっては "SFとして"どこがすごいのかは正直よくわからなかったので……。
(SFオタクにとっての凄さを具体的に知りたいひとは、巻末にある訳者大森望さんの解説を読むのがおすすめ。どこがどうすごいのか、アツく教えてくれている。)

でも、読まなくていいというわけではなくて、持ってるなら絶対先に読んだ方がいいし、迷ってる人も読んだ方がいいと思う!寝ずに読めるほど面白かった。なんでこんなに面白いのかというと、下記の要素がごっそり入っているからなのである。

小説『三体』で味わえる楽しさ
・推理小説を読んでいる時のドキドキ
・SFならではの壮大なスケールのワクワク
・生きることに対する根源的な問い
・洋ドラさながらのバディのやりとり
・歴史小説を読んでいるかのような登場人物の人生の機微……
・現実に即した歴史の重み……
・文系にとっては想像力を試される数々の意味不明科学描写
・トンデモSFのようなイカれ具合(褒めてる)
・不条理(褒めてる)

これが一度に味わえるような、『機龍警察』でもあり『星を継ぐ者』でもあり『ハリー・オーガスト』でもあるのがスーパー小説『三体』なのだ〜!
(例えが貧弱でかたじけない。でも本当に「お〜ハリー・オーガストじゃん」となったシーンもある。)

正直読み終わってから、なんだかずっと物足りない気がしていて。
普通小説ってラストに向けてドドドドンと大展開だったりドラマがあるのだけど(歌でいうところのサビのような)それが無いというか、いやあるのはあったのだけど、そのドラマが弱かったように感じてしまっていた。
どうしてだろうと最初からパラパラと読み返した結果、ずっと「サビ」状態の超展開が続いていたからだと気付いた。
冒頭、文化大革命の時代から始まる最初の1章のシーンですら、未だに鮮明に浮かぶほど印象に残っている。どのシーンの話をされても「そんなのあったっけ?」とならない。「あ〜!あそこね、あのシーンやばかったよね!」となる。

逆に言うと、ずっとサビなので結構かなり相当疲れる!読後はぐったりする。日々の読書量にも左右されると思うけど、私はダメでした。疲れた〜。
自粛期間はあまり予定もなくゴロゴロしやすいと思うので、今こそ読んでほしいな〜。

それから個人的にウケた点は、スケールがデカすぎて逆に何もわからなくなったところと、登場人物の科学者のキャラについて。

サラッと「*万光年」とか「*千光年」とか言われても全く想像つかない。何もわからない。「1万5千時間」とか「5千時間」とかも出てくるが、こちらもちょっと計算するのが面倒くさいし、何もわからない。
東京ドーム●個分に対して「結局それってどんぐらいなん?」と言うときと同じ。全然わからないし想像も及ばない範囲だしなんかバカみたいにでかい数字なのでだんだん笑えてくるのだ。

それから、登場人物について。これは完全に好みの問題なのであるが、次から次へと出てくる登場人物が全員"暗い"ので、新キャラが出てくるたびにちょっとクスッとくる。暗い人が好きなので基本的に全員好き。儚げで暗いやつから、パワーあるけど暗いやつまで、なんか色々いる。暗さのバリエーションがすごい。
この人たちに鼻メガネ付けて会いに行ったら心底嫌な顔されそうだし、プピー!って鳴る伸びる紙が付いた笛を目の前でやっても、ツッコミすらされず無視されそう。花柄の服とか着ないんだろうな。アロハシャツとかあげたいな。アルミのフライパンでムクムクなるタイプのポップコーンとかしたことなさそう。一緒にしたいな。

このクスッとポイントはかなり個人的なものだし『三体』におけるオマケ要素なので、みんなにもそれぞれのクスッとポイントを見つけてほしい。多分結構ある。(作中ゲーム内の話とかギャグのオンパレードという感じもするけどどうでしょうか)
これもまた『三体』の魅力である。

そして何よりこの『三体』は最初から最後まで一貫して、「巨大なもの」━━例えば、個人の力ではどうにもならなかった(かのように思える)歴史上の出来事や、宇宙からのまなざし━━を通して、私たち人間の生き様・「生きる意味」について、その価値や正しさについて問うている。
急にテーマが壮大になってしまったが、事実なのだ。本当にそうなのだ。とにかく読んでほしいのだ!!!(『三体』について喋る人がいなくて寂しいので)

ちなみ“文系にとっては想像力を試される数々の意味不明科学描写”についてだが、私は文系なので終盤のスーパー科学話は結構かなり試されてしまった!

ミクロスケールの集積回路の原理は、マクロスケールの集積回路のそれとはまったく異なる。素材は原子でできた物質ではなく、一個の陽子だ。回路の〝pn接合〟は、陽子平面上で強い核力を局所的により合わせることで実現される。 (P.6425)

ふ〜〜〜〜〜〜ん。なるほどね。ミクロスケールの集積回路をね。へ〜〜〜〜〜〜〜。
(たまたま近所に素粒子物理学専攻の方がいたので事なきを得た。)

それでもなんか雰囲気でやってることとかやりたいことはわかるよ!安心して読んでほしい。(ちなみにちなむと、タイトルにもなっている『三体』だが、三体問題というものが物理の世界では実際にあるそうだ。そんなことすら知らなくても大丈夫だった。でも無知すぎて恥)

最後の最後にダメ押しでおすすめの理由を言いたい。『三体』は2021年にAmazonプライムビデオで映像化されるらしい!とても楽しみ。オリジナル作品ともなるとプライムビデオのトップページやら色々なところで力を入れて宣伝され、超話題作!というような触れ込みになるでしょう。
そんな話題作を前にして「あ、これ映像化するんだ〜!おもしろかったもんな〜」と古参ぶれるし「小説も話題になってたもんね。いい感じのSFだよ」っつって知識階級ぶれるし、読んでおいたほうが良いことが多い。こんなこと言うやつ女にはモテないが。

そういえばアマプラは前にも高い城の男を映像化していなかったか?さては優秀なSFファンが潜んでいるのではないか。

本当に雑な推薦文になってしまい恐らくSFとしての『三体』の魅力は何一つ伝えられていない気がするが、小説としては楽しんで読んでいるやつがいるんだなということだけでもわかってもらえたら嬉しい。

知恵がなくカッコいい形のリンクの貼り方がわからないので『三体』のAmazonをとりあえず貼っておく。
Amazon

じゃあ寝ます!おやすみなさい!


補足:note内にちゃんとしたレビューがあったので貼っておく。
こちらを読んだ方が有意義な時間の使い方になって良いと思う。
(引き続きかっこいいリンクの貼り方がわからない)
https://note.com/tanahashi/n/n76315293f57f


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