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慰めや応援すら辛く感じることがあります。そんな時の為におはなしはあると思っています。読書をするにも労力と時間が必要です。疲れた身体でTwitterを見ながらさっくりと読めるのが #1日1物語 というわけなのです。読まなくてもいい、チラ見から心が弾む何かを届けられますよう。
宅カフェ
ロイヤルミルクティーを家で飲みたい。
美味しくてカフェみたいなクオリティのもの。
調べるとコツが出てくる。
試してみたのを総合して自分流にしてみた。
熱湯でティーバッグを蒸らす。
お湯の量はカップ1/3。
茶葉が開いたら牛乳を入れる。
残りの2/3量。
それをレンジへ。
牛乳が温かくなったら取り出す。
ティーバッグを取り出して。
召し上がれ。
いい色に仕上がっているはず。
「いいか、人ってのは文字より数字に目が行くんだ。『大容量』よりも『1キロ増量』とあると買いたくなる」
「本当ですかあ。そんなんで騙されますかねえ」
「数字を見るわけだな」
「はあ」
「『6枚入り』と見ると『6枚切り』と思い込むわけだ」
「……だから今朝の食パン薄いんすね」
すごい時代になったもんだ。運転中でも歩道で動くものは認識されて、フロントガラスに映し出される。人はちゃんと「ヒト」と表示される。たいしたもんだぜ。まさかこんな時代が来るとはなあ。おかげでこの世界で人間は俺だけだってバレちまうよ。あーあ、そろそろ引越ししねえとなあ。
ソワソワさんはじっとしていられない。
ある日おばあさんを助けたらお巡りさんに褒められた。小さな頃から叱られてばかりのソワソワさんが初めて褒められた!
嬉しくてもっと褒められたくてお巡りさんになっちゃった。街中を歩き回ってみんなを助けたら、たいそう喜ばれたとさ。
「あなたとは来来来来来世くらいで出逢いたいです」と手紙に書いた。今世や来世くらいでは到底かなわない恋だった。
そうしたらあなたから会いに来てくれた。タイムマシンに乗って。「宜しくお願いします」と見たこともない花を一輪くれた。遠い未来では恋人に贈る人気の花だとか。
「今から魔法をかけてやる」
「どんな?」
「悪よけだよ。悪いものから見えないようにするんだ。見つかってしまえば戦うしかない。そうなると勝つのは難しい。だから見つからないのが一番なんだ」
「戦わないために?」
「そのとおり!」
夢。何も話さない。悲しそうに笑うだけ。
夢でしか会えない。でも眠りさえすれば夜に会える。眠るのが楽しみになった。彼も嬉しそうなのが伝わる。
嬉しくてどんどん想いが溢れてくる。まるで初めて出逢った頃のよう。胸の中に泉がある。愛が湧き出る泉。
夢でしか会えなくても。
うちの猫がゾンビになった。
朝は元気だったのに仕事から帰ったら息がなかった。「すまん」と撫でると唸ったんで思わず落としちまった。キャリーに入れた途端に豹変だ。爆音ふかして引っ掻いてやがる。
一体何があった?うちだけか?猫だけか?人は?
あやばいキャリーこわれたか
地域の歴史資料に、ここで若くして命を落とした人の名がある。
わたしは彼を知っている。
だって彼はわたしを守って亡くなったのだから。
わたしだけがまだここで生きている。
あれから数百年が経った。五百年を超えて数えるのをやめた。
「いてふ」
と彼は呼んでくれた。
「特別な能力を持って如何ですか」
「びびった。使いこなせるかって。短気だし。カッとなって使っちゃうんじゃないかって心配した。この前もそんな事件あったろ? けど、いざ能力を授かると慎重になるもんだ」
「あなたの能力は?」
「怒ると全裸になる」
「ありがとうございました」
神は存在する数だけいる。信じる者の中に信じる数だけ。
人に呼ばれると神の力は増す。助け赦し感謝。力に対する敬い畏れ。それらが神の彩となる。
縁切りの神を呼ぶ少年がいた。声が乞う「ぼくの弱さを切ってください」と。
無色だったその神に彩が迸る。
新しい街を探索していたら森の入り口に着いた。
一本道が奥へと続いている。
途中で人とすれ違う。一人だったり二人組だったり。
肩パッドの入った大きめのジャケット。袴にブーツ。羽織に帽子。刀?!
服装が古くなっていく。
森を抜けたら元の街。振り返ると道はなし。
「今日はいい日だったな」
少し嬉しい帰り道にとても綺麗な緑色の虫を踏む。靴底に感触が残る。
小さな命の灯を消してしまった。
心に灯った微かな喜びも消えてしまった。
その花の香りを鼻腔が覚えている。記憶にない懐かしい香り。
人生で初めて香水売場に入りその香りを探す。花の香りを再現したというその店にそれはあった。
同じ香りが背後からする。振り向くと泣き顔の見知らぬ女性が嬉しそうに呟く。
「無事でよかった」
僕はいったい誰?