その花の香りを鼻腔が覚えている。記憶にない懐かしい香り。
 人生で初めて香水売場に入りその香りを探す。花の香りを再現したというその店にそれはあった。
 同じ香りが背後からする。振り向くと泣き顔の見知らぬ女性が嬉しそうに呟く。
「無事でよかった」
 僕はいったい誰?

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