地域の歴史資料に、ここで若くして命を落とした人の名がある。
 わたしは彼を知っている。
 だって彼はわたしを守って亡くなったのだから。
 わたしだけがまだここで生きている。
 あれから数百年が経った。五百年を超えて数えるのをやめた。
 「いてふ」
 と彼は呼んでくれた。

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