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現在を紡ぎ、未来へ繋ぐ。

 我々は「今、ここ」にいる。過去からあらゆるものが繋がって、現在に至る。そして、運命的、必然的に先祖は出会い、神秘的にいのちを授かったみなさんの人生は歴史の1ページを織りなす。みなさんの行動は大小・善悪に関わらず、たくさんの人に影響を及ぼしている。まさしく、バタフライ効果。
 養老孟司氏は著書『養老先生のさかさま人間学』で“人生は絵を描くようなものである”と語る。キャンバス(canvas)の大きさは人それぞれで如何ようにも描いていける。ただ、一度塗ってしまえば、元には戻せない。けれども、描かれた絵をどういうまなざし(視点)で見るかは各々の心(捉え方)で変えられる。畢竟するに、過去に起きた事実そのものを変えることはできないが、その見方は変えられる。後悔しても事実は変わるものではない。だからこそ、今という時間に向き合って、これからやってくる未来を作っていけばいい。これからの未来はみなさんがどうしたいかで決められる。
 映画『シグナル~長期未解決事件捜査班~』は、現在と過去の刑事が無線機だけで繋がり、未解決事件に挑む。ここでは、過去を変えることで未来を変えている。みなさんは過去に戻りたいと思ったことはあるだろうか。また、後悔したことはあるだろうか。勿論、後悔そのものは決して悪いわけではない。そこから学ぶことは多々ある。それが次に繋がっていくし、成長していくのではないか。後悔するということは、思い描いた道があったわけだから、それらを次に生かせばいい。どの道を通ったとしても、すべてみなさんの人生であり、それが次の世代に必ずや繋がる。
 上記ドラマと同じく韓国ドラマのリメイク版である『知ってるワイフ』は、あの頃に戻って人生をやり直したいという思いがあって、過去に戻って生きるのだが、結果的に人生は変わらなかった。同じ妻と結婚することになるけれども、あり方が変わっていた。物事をどう受け止めるかは人それぞれで、狭い視野で捉えれば、目の前の大切な人を悲しませることもある。しかし、たくさんのことを学び、視野を広げることができたら、異なった受け止め方ができるかもしれないし、目の前の大切な人を仕合せにしてあげることもできる。みなさんはどんな人生を思い描いているだろうか。人に紡いでもらってばかりいる人生を歩むか、それとも自分自身で人生を紡ぐのか。
 タイムスリップは理系の人間としては憧れるが、残念ながら現在の我々の技術では人生をやり直すことはできない。時間は不可逆的なのだ。前号の“桜”と同じだが、人間がもし不死身で永遠のいのちをもつとしたら魅力的だろうか。もし、過去に戻られるなら、今を蔑ろに生きてしまうのではないだろうか。人生は一度きりだからこそ、「今」という時間はかけがえのないものであり得る。それ故、どんなことが起きるか全く分からない人生の、その一瞬一瞬を味わえたら素敵だと思う。
 
  마음은 이렇게 알다가도 모르지 (IVE『LOVE DIVE』より)
  気持ちはこんなふうに 分かるようで分からない


🎵 人生相談&哲学対話ほのぼのカフェ 🎵
 
【Q2】IVEの一押しは誰ですか。
【A】何度も通信で紹介している韓国グループIVE(アイヴ)は、2021年12月に『ELEVEN』でデビュー。女性グループでデビュー後7日後に音楽番組で初1位を獲得。この曲を毎日聴き入るほどの出合いは凄いです。IVEは“I HAVE”の略で、自分が持っているものを堂々と見せるという意味が込められています。なお、敢えて一押しを言うなら、ガウル(가을)さんですね。韓国語で“秋”という意味です。季節の秋も好きです。発表されたばかりの2曲目『LOVE DIVE』もうっとりします。
 ついでに、前回紹介したSTAYC(ステイシー)は第31回ソウル歌謡大賞でベストパフォーマンス賞を獲得。今までの曲調の路線とは違う『RUN2U』は圧巻であり、素晴らしく、これからの活躍が楽しみです。
 
【Q3】なぜ、お通知(通信)を始めようと思ったのですか。
【A】ありきたりな教員として数学を教授したいのではなく、誰もやっていないことをやりたい思いが強く、授業を通して、今思うことを言葉で伝えたいです。けれども、話す時間は有限であるため、通信として言葉を紡ぎ、小さき流れが生まれたら最高です。嬉しいことにご家族で読んで下さっている方もいます。本当にありがとうございます。
 
【Q4】先生はどうして私たちに赤血球等の話をされるのですか。
【A】理系人間としては科学、とりわけ身体の構造には興味があります。そして、「いのち」に向き合う出来事が多々あったためです。理系の皆さんには、あらゆる科学(事象)に関心をもってほしいです。
 
【Q5】先生は「問い」を集めて何を目指しているのですか。教祖になりたいのですか。
【A】ただ、単に通信を書くネタ(きっかけ)が欲しいだけです。しかも、私が一方的に書き綴るという形式よりも、皆さんが思い描いていることを踏まえたうえで、何か伝えられた方がより伝わる文章が書けるかなと思っています。
 それに、私ひとりが立てる「問い」には限界があります。しかし、皆さんに書いてもらうと、なるほどそういう観点があったかと、私自身の学びになるし、皆さんが普段どういうことを考えているのか興味深いところですし、参考になってとても面白いです。そして、それに答えようとすると、新たな知識を手に入れることも多々あるし、私の中で問いを立てて言葉を構築することができるので、至れり尽くせりなのです。
 4月から始めた科目『看護総論』では、「対話」をテーマにしています。対話というのは、人との対話に限らず、自分との対話、物との対話などがあります。対話に欠かせない一つとして、“問い”が挙げられます。勿論、その問いに対して絶対的な答えなどありません。でも、その問いや人に向き合うことが求められます。宗教的な教祖というのではなくて、どんなことにも耳を傾けられる人でいたいなと常々思っています。だからこそ、色々な問いに触れ、自分を成長させたいのかもしれません。

2022.4.18

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