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友だちの定義

久しぶりに友だちと会ったら、冬至だからと柚子をくれた。
二人で公園を散歩しながら、途中のカフェでコーヒーをテイクアウトした。
良く晴れて風もないので、陽のあたるベンチは探した。少し眩しくて、暖かくて、とても気持ちいい。
熱いコーヒーを飲みながら、とりとめのない話をする。
週末から上映される映画のこと。最近、読んだ本、そこに出てきた音楽のこと。
会うのは本当に久しぶりで、前回が何時だったのか、お互い思い出せなかった。
昨日も一昨日も会って、話していたような気がする。
私たちはどこか似ているのかもしれないと、ふと感じることがある。
こんな風に会って話せる、友だちがいて良かった。

友だちと呼べる人が、私は本当に少ない。
数えると片手で十分足りてしまう。
知り合いは仕事関係の人が多く、彼らは親しくても知人の域を出なかったような気がする。線引きをしている訳ではないけど、友だち?と、問われると考えてしまう自分がいる。
友だちの定義ってなんだろう? 人によって違うと思うけど‥。

友だちで、思い出す本がある。
『さかな1ぴきなまのまま』 佐野洋子さんの本だ。
読んだのは、ずっとずっと前で、自室の本棚を探ったが見当たらなかった。
誰かにあげてしまったんだろうか?
それとも書店か図書館で、読んだんだろうか?
なぜこの本を思い出すのか? 内容も鮮明に覚えていないのに‥。
ネコとおばあさんと、ヘビが出てきた。
ヘビは小さくて、ニコニコしていて、とても可愛かった。
ネコは少し迷惑そうだった気がするけど、二人は並んで魚を食べていた。
ストーリーよりも、ネコとヘビと、おばあさんの顔や表情が脳裏に浮かぶ。
佐野洋子さんは、やはり絵描なんだと、あらためて実感する。
ヘビが本当に嬉しそうだったので、その顔ばかりは浮かんでくる。
いるだけで嬉しいのが、友だちかもしれない。

氷砂糖が溶け始めた。



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