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身を切る改革と寝屋川市の市長報酬カット案

みなさん、こんにちは。海原雄山です。

今回は何かと話題になっている、大阪府寝屋川市の市長歳出カット案について、先日月曜9時のツイキャスでお話させていただいた内容を備忘録的に文字にしておこうと思います。


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そもそも、寝屋川市の市長歳出カット案とは

そもそもで寝屋川市長の歳出カット案とは何なのか、簡単におさらいしましょう。

4月の大阪府寝屋川市長選で再選された広瀬慶輔市長は19日、これまで実施してきた給料の3割カットをやめると発表した。新たに、市政運営に対する市民の「支持率」が50%を下回った場合のみ、市長ら特別職の給料を3割を上限に削減する制度を10月に導入するという。事実上、現状以上の削減にはならないが、広瀬市長は「1期目は『試用期間』としてカットしていただけだ。今後は市民の評価を報酬に反映させたい」と述べた。関連条例案を20日開会の市議会に提案する。

読売新聞オンライン(2023/06/20 )
「市長らの給料、市民の「支持率」50%下回れば3割上限で削減案…大阪・寝屋川」

今年4月に再選した寝屋川市の広瀬市長は、これまで報酬カット3割を実施していましたが、これをやめ、代わりに支持率に連動して報酬削減幅を決めるという新しい報酬案を提案しました。

そして、その制度設計が下記のとおり。

「支持率」の調査は任期中の4年に1回を想定。8月の「市民意向調査」で実施予定で、無作為に抽出する18歳以上の市民約3500人を対象に市政の評価を問い、「とても満足」「やや満足」の割合を「支持」、「とても不満」「やや不満」の割合を「不支持」として計算し、不支持が上回った場合、ポイント差を給料のカット率とする。例えば、支持40%、不支持60%なら、給料は20%カットする。

読売新聞オンライン(2023/06/20 )
「市長らの給料、市民の「支持率」50%下回れば3割上限で削減案…大阪・寝屋川」

つまり、支持率より不支持率が高い場合、その差を削減幅にするわけです。

ただし、以下のような制限があります。

ただ、副市長や教育長の給料が部下より低くなるのを防ぐため、削減率は30%を上限とする。広瀬市長は「市政に対する『経営責任』の覚悟を示すための制度だ。市民に給料額を決めてもらうことで、より大きな納得につながる」と強調する。

読売新聞オンライン(2023/06/20 )
「市長らの給料、市民の「支持率」50%下回れば3割上限で削減案…大阪・寝屋川」

つまり、副市長等の部下より低い報酬となるといけないので(副市長らも結局報酬を下げざるを得なくなる?)、報酬削減幅の状ⓖんを30%までとなっています。

現状、広瀬市長は1期目から30%の報酬削減を行っていますので、削減幅の上乗せはありません。

巻き起こる批判

つまり、今回の新しい報酬削減案では広瀬市長にとっては金銭的に損をすることはないと言うことになります。

むしろ、不支持率が支持率を上回っても、例えば支持率45%、不支持率55%ならば、差引10%分だけ報酬をカットすればいいことになります。

なので、『実質的に報酬アップではないか』、『やり方がコスイ』等の批判があがっています。

また、『選挙の時には報酬3割カットの実績をうたっていたのに、選挙後すぐにやめるなんて公約違反の裏切りだ』などという声もありました。

これらの批判は、維新支持者中心に見受けられますが、読売テレビの某解説員の方も、『報酬をカットしないようにするために、市民にウケの良い政策しかしなくなる』という趣旨の批判をしていたそうです。(当方未確認)

今年春の寝屋川市長選において、広瀬市長は維新支持者の半数からも支持を得て当選しました。

身を切る改革とはうたっていないものの、維新の候補者と同様に、政治家の厚遇された身分に切り込んで、役所の無駄も省いてくれることを期待して票を入れた方も多いかもしれません。

そんな有権者からすると、もしかしたら期待を裏切られたと思う人もいるのかもしれません。

この報酬カット案をどう解釈するべきか

まず、身を切る改革のおさらい

そもそも、維新の政治家が必ずと言っていいほど公約に入れているのが、『身を切る改革』。これは、先述のとおり政治家の優遇厚遇を見直すことで役所の無駄等に切り込むにあたって説得力を与える役割があります。

役所には『無駄を削れ』『財政が悪いので、給料カット』と言っても、自分たち政治家が何の身銭も切らないのでは、役人も言うことを聞くわけがないわけで、まず政治家が報酬カット等で模範を示すというのが『身を切る改革』ということです。

寝屋川市の財政状況と身を切る改革の必要性

では、寝屋川市の財政状況はというと、今年1月に当方がリリースしたnoteのとおり、実は健全そのもの。

必ずしも行政改革だけの成果ではなく(中核市移行に伴う交付金増等)、また、人件費の増加等もあるため、完全無敵というわけではないですが、少なくとも財政危機等と言う状況からは程遠く、むしろ毎年のように基金は増えている状況です。

なので、本当に寝屋川市で身を切る改革を必要としているのかは疑問であると考えられます。

本当に公約違反なのか?

一部から今回の報酬カット案について、公約違反ではないかという意見がありますが、結論から言うと、私が把握する限りの情報をもとに考えると、必ずしも公約違反とは言い切れないのではないかと考えられます。


こちらは、広瀬市長の選挙時の選挙公報です。

これを見ると公約として報酬カットについては言及がありません。

また、当方が寝屋川市民ではないので確認できませんでしたが、選挙時に配られたビラについても、過去の実績として報酬3割カットと記載があるものの、それを次の任期においても継続するとの記載は確認されなかったとのことです。

だとしたら、報酬3割カットが公約とは言えず、公約違反までは言い過ぎかもしれません。


今回の報酬カット案の意義

そもそも、今回の報酬カット案というものは、維新の身を切る改革と違う位置づけのものではないでしょうか。

政治家の厚遇優遇を見直し模範を示すという趣旨なら、削減幅を変動させる必要性はありません。

市政に対する『経営責任』という表現が先ほどの引用元記事にはありましたが、どうやら維新の身を切る改革の趣旨とは少しずれるようです。

ようは、市政の結果への責任として、市民の評価を自身の報酬に連動させるというのが狙いのようです。

市政の結果が出せていないのに、市長が報酬を満額もらうのは、市民目線からはやはり納得のいかないことでしょう。

逆にしっかりと市政運営をしてくれているなら、報酬は満額受け取るべきです。

これは、成果に似合った市長報酬を実現する報酬体系で、極めて合理的ではないでしょうか。

また、読売テレビの某解説員の方の、『市民受けの良いことしかしなくなる』という指摘については、そこは首長個人の政治家としての信念の問題かと思いますので、報酬のカット云々抜きにそうなる可能性は秘めていますので、あまり関係のない話かと個人的には考えます。

市民ウケが悪いけど必要な政策ならば、議会が追及すればいいだけの話。

その議会の議論が真っ当なら、世論がの風向きが変わるでしょうし、だとしたら、それに合わせてむしろ市長の意思決定も変わっていくのではないでしょうか。

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