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危機的状況?岐阜市の財政状況について調べてみた

こんにちは、海原雄山です。

今回は、岐阜市の財政について調べてみました。

岐阜は最近維新の総支部が出来て、来年の統一地方選でも候補者を立てる予定となっています。

その県庁所在地である岐阜市ですが、財政状況については不穏な空気が醸し出されています。一言で言うと、少子高齢化の影響をおもむろに受けたような財政状況のように見えます。

岐阜で統一地方選を戦うにあたり、大事な論点になり得るところだと考えられますので、お付き合いの程よろしくお願いします。

岐阜市ってどんなところ?

まずそもそもで岐阜市について簡単にご説明させていただきます。

人口は約40.7万人(令和3年1月1日現在、住民基本台帳ベース)の中核市で、言わずもがなの県庁所在地です。

市の中心部には長良川が流れ、ハイキング気分で楽しめる山もあるとのことで、車で少し行けばさらに豊かな自然が楽しめる一方で、日本三大都市の1つ名古屋市へも通勤圏内と便利(名鉄特急で27分、JR新快速でなんと18分)と、自然との距離と都会との距離のバランスが非常に優れた市と言えます。

関西で言えば、大阪市中心部に電車で30分もかからずに出られる奈良市や生駒市に近いイメージかもしれません。

名古屋にすぐに出られることは利点でありますが、一方で普段人が集まるところとは言えないというのが、一部の地元民の見解のようです。

つまり、名古屋市のベッドタウン的な色彩の強い市と言えるでしょう。

岐阜市の財政について

では、本題に入りましょう。

今回は、2020年度までの直近5年間の決算カード等をもとに分析していきますので、特に断りが無ければ、2020年度の数字であると捉えてください。

また、類似団体とは、各市町村等を人口および産業構造等により全国の市町村を35のグループに分類したもので、岐阜市は「中核市」という類型に属しています。(関西で言うと、兵庫県の西宮市と尼崎市、大阪府の豊中市と吹田市、東大阪市等)

各種指標の状況

①財政力指数
財政力指数は「0.87」で、類似団体の平均「0.80」を下回っています。

財政力指数とは、地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で割り算して得た数値の過去3年間の平均値ですが、ここで基準財政収入額(同需要額)は、だいたいどれくらい自治体運営にあたって財源を確保できそうか(どれくらいかかりそうか)を示す指標だととらえてください。

その数値が高いほど収入にゆとりがあるととらえられますが、1を下回っていれば、地方交付税交付金がその分支給されると大まかに捉えてください。

岐阜市は、比較的財政力指数が良いと考えられます。

②経常収支比率
経常収支比率は「95.3%」で、類似団体の平均「92.7%」より数字としては良くないです。

経常収支比率とは、経常的な経費に経常的な収入がどの程度充当されているかを見るものです。比率が高いほど自由な施策が打てなくなり財政構造の硬直化が進んでいることを表すもので、70~80%が適正水準と言われています。

岐阜市の経常収支比率(単位:%)

年度により上下はありますが、だんだん95%くらいで定着していそうな傾向が見て取れます。

岐阜市は、「継続的な行財政改革により、普通債(臨時財政対策債等を除く地方債)残高の縮減や職員定数の削減など、義務的経費の縮減に努めてきたが、平成28年度以降は、地方交付税が大きく減収し、類似団体平均を上回っている。」と総括しております。

③将来負担比率
将来負担比率は「0」で、類似団体の平均「31.5%」より数字としてはかなり良いです。

岐阜市の将来負担比率



将来負担比率とは、地方公共団体の一般会計等の借入金(地方債)や将来支払っていく可能性のある負担等の現時点での残高を指標化し、将来財政を圧迫する可能性の度合いを示す指標で、標準財政規模(地方公共団体の標準的な状態での通常の収入と捉えてください)に対する「特別会計、第三セクターまで含めた地方公共団体の負債総額から積立金などを差し引いたもの」の割合を示したものです。

つまり、借金から貯金を引いたものが収入に対してどれくらいの割合かを示したものと捉えてください。(早期健全化基準:市町村では 350%)

④公債費負担比率
一般財源に占める公債費(地方債の元利償還等に要する経費)の比率で、この数字が高ければ財政構造の硬直化が進んでいることを表す。

柏原市は、「11.7%」で、類似団体平均の「13.4%」を下回っております。

実は、岐阜市の公債費負担率は、ここ5年間で着実に改善していっています。

岐阜市の公債費負担比率

⑤実質収支比率
実質収支の標準財政規模に対する割合。簡単に言うと、収入に対して当年度の収入と支出との実質的な差額が、どれくらいの割合かを示すものです。


岐阜市の実質収支比率(単位:%)

岐阜市は、「9.%」で、類似団体平均の「4.2%」を大幅に上回っています。

ここまで見ると、経常収支比率が高めなのが気になるものの、大した問題がないように見えますが、もう少し詳しく決算の中身を見てみましょう。

歳入の状況

では、歳入の状況を見てみましょう。

岐阜市の歳入決算額(単位:千円)

2020年度は、コロナ対策の国庫支出金を多く受け取ったため、大幅に増えていますが、そういう一時的な要因を除くために、経常一般財源等で見ていくと下記のとおりです。経常一般財源等は、歳入のうち毎年度経常的に歳入されるもののことです。


岐阜市の歳入経常一般財源等(単位:千円)


こう見ると、順調に経常的に入ってくる歳入はほぼ横ばいか、少々増えていることがわかります。

もう少し詳しく歳入をみていきましょう。

岐阜市に限らず、歳入の多くは、地方税です。岐阜市では経常一般財源等の約75%を占めます。


岐阜市の地方税経常一般財源等(単位:千円)

2019年度までは基本的に右肩上がりではあるものの、2020年度には少し落ち込んでしまいました。

ここから地方税を細かく見ていきますが、「臨時」に付与されたり「特定」の目的にも使う財源等も含むことをご了承ください。(それでも傾向は掴めるかと思います。)

地方税の多くは市町村民税と固定資産税で、これら2つで地方税収の約85%を占めています。

①市町村民税

岐阜市の市町村民税収入額(単位:千円)

市町村民税は毎年300憶前後で推移していますが、2020年度は前年度より約8億程減収となっています。

市町村民税を個人分と法人分で分けてみてみましょう。

個人均等割り(所得に関係なく一定額を徴収)


所得割(所得に応じて徴収)

ここ5年で個人均等割の伸びが約0.25憶円(約3.6%増)にとどまるのに対し、所得割が約10憶円(約4.2%)程伸びています。

近年給与所得の伸びもあってか、税収にそれが反映されているようにも考えられます。

一方、法人分については伸び悩んでいます。


法人均等割(資本金・従業員数などに応じて徴税)
法人税割(国に支払う法人税額を基礎として徴税)

法人均等割は、13憶円代で安定している者の、法人税割の落ち込みが大きいです。前年度から約10憶円程の下落で、個人分の増収分を打ち消してしまっています。


そもそもで個人に課す市町村民税に対して法人分については金額が小さい(地方税全体に対する割合は、個人:37.7%に対し、法人:6.5%)ので、市町村民税全体の伸びは個人の市町村民税の増減に大きく依存していると言えます。

しかし、法人税割の変動幅が大きいです。

今回2019年度から市町村民税が落ち込んだのは、恐らく消費税増税やコロナ渦で経済活動が停滞した影響が大きく作用して、法人税割の大幅下落が主な要因であると考えられます。

前述のとおり、名古屋市へのアクセスが良いので、企業が集まる都市というよりベッドタウンとしての性格が強いことから法人関係の税収は少ないかもしれませんが、今後法人関係の税収を増やすためには、40万人いる人口や、岐阜城などの観光資源もあることから、それらを生かした産業のさらなる成長余地がないか、検討は要すかもしれません。

②固定資産税
地方税のもう一つ大きな柱は、固定資産税になります。

岐阜市の固定資産税収入額(単位:千円)


固定資産税収もこの5年で約7憶円ほどの伸びで、前年度から2.5憶円程の伸びですが、市町村民税法人税割の減収を補う程には至っていません。

固定資産税は、土地・家屋等に対して課税され、ざっくり言うとその評価額を基準として税額が決まるので、近年の金融緩和による土地等の資産価格の上昇は、固定資産税収に追い風となったでしょう。

さて、ここからは、地方税以外の歳入についてみていきます。ここからは一般経常財源等の金額で確認していきますので、よろしくお願いいたします。

岐阜市の地方交付税経常一般財源等(単位:千円)

岐阜市の経常一般財源等における地方交付税交付金は減少傾向でしたが、2018年度を境に再び増収に転じています。

一見いいことのようですが、それだけ経常一般財源において地方交付税を頼らざるを得ない状況であるということの裏返しなのかもしれません。


岐阜市の地方消費税交付金経常一般財源等(単位:千円)

地方消費税についていうと、2020年度は消費税率上げの恩恵をフルに受けて、大幅に前年度から伸びています。金額にして前年度からの伸びは、約16憶円です。

岐阜市の経常一般財源等における地方消費税交付金の割合は、2020年度で11.4%で、地方税の次のシェアを占める財源となっています。

法人税割の激しい下落幅を考えると、なかなか削ることが難しい義務的経費の割合が高い地方財政において、安定財源とも言える地方消費税の意義というのは一層重く感じられます。

実は岐阜市の歳入で大きな特徴があります。

それは「諸収入」の多さです。

「諸収入」とは、貸付金元利収入、宝くじ収入、受託事業収入など、他の歳入科目に含まれない収入です。

岐阜市の諸収入決算額(単位:千円)

「臨時」だったり「特定」の事業に使う財源分を含みますが、2020年度で約350憶円にも上ります。前年度から2.5倍以上に伸びていますが、実は人口一人当たりの84,960円と、類似団体の17,096円の約5倍に上ります。


歳出の状況

ここからは歳出の状況です。性質別で見ていきます。

一時的な要因を除くべく、経常的な費用に充当される一般財源の金額を示す「経常経費充当一般財源等」の金額で確認していきましょう。


岐阜市の義務的経費経常経費充当一般財源等(単位:千円)

まず、義務的経費です。

これは、人件費、扶助費 (生活保護費、児童福祉費老人福祉費など) 、公債費など、その支出が法律上義務づけられたものや国の指示によって事実上強制されるもので、任意に節減できない極めて硬直性の強い経費とされています。

ここ5年で15~16憶円程伸びており、緩やかなペースながら右肩上がりで伸びているのがわかります。

では、人件費、扶助費、公債費のうち何が要因なのか、みていきましょう。


岐阜市の扶助費経常経費充当一般財源等(単位:千円)

扶助費は上下動あるものの、基本的に右肩上がり基調のようです。
ただし、扶助費の経常収支比率(扶助費が経常的な収入に対しどれくらいを占めるか)は類似団体平均よりやや低い方ですし(類似団体平均:15%。岐阜市:14.1%)、人口一人当たりの金額も類似団体より少ないです(類似団体平均:33,374円、岐阜市:29,723円)。

岐阜市は、「類似団体平均と同様に、近年は増加傾向で推移していたが、令和2年度は対前年度比0.3ポイント減の14.1%となった。
主な要因としては、障害者自立支援給付費や、私立保育所等運営費が増加した一方、子ども医療費助成事業や生活保護費が減少したことによるもの。しかしながら、生活保護費は依然高い水準となっている。」と総括しておりますが、扶助費の中でやりくりに苦心しているようにも見えます。


岐阜市の公債費経常経費充当一般財源等(単位:千円)

公債費は、減少傾向にあるようです。直近5年のピークより6.7憶円程減少しています。

岐阜市は、「令和2年度も新庁舎建設により普通債残高が増加したが、利率の高い地方債の償還が終了してきていることから、公債費は当面同程度で推移する見込みであり、引き続き適正な市債管理に努める。」としており、利率の高い債券がなくなったことにより、利払い負担が減ったことが要因のようです。

つまり、債券構成の組み換えが利払い負担の抑制につながっているということでしょう。

何か岐阜市としての歳出削減や債務削減の努力が実ったと言うより、現在相変わらずの低金利政策で調達条件が良いことから、地方債残高が増えても公債費は抑えられるというのが実態ではないでしょうか。(地方債残高については後述)


岐阜市の人件費経常経費充当一般財源等(単位:千円)

一方、人件費は上昇傾向が顕著に表れています。ここ5年で16憶円程の上昇となっております。

実は岐阜市は類似団体に比べて人件費の経常収支比率がやや高いです。(類似団体平均:24.8%、岐阜市:27.8%)

また、人口一人当たりの金額も類似団体平均より高いです。(類似団体平均:55,237円、岐阜市:58,723円)


岐阜市は、「類似団体平均を上回っている主な要因としては、保育所をはじめ、大学(短大・薬大)、高等学校や障がい者施設などを直営で運営していることによるものである。」と評価しております。

この評価どおりならば、「民でもできることを官でやっている」ということであります。

地方は必ずしも都会のように人口が多いわけでもなければ、人口構成も違うわけで、民間が採算に合わないため進出してこない分野もあろうかと思われますが、果たして岐阜市がすべて直営する必要性があるのかは吟味が必要です。

実際、岐阜市は、「職員定数については、民営化、委託化の推進などにより、ピーク時(昭和56年・4,999人)と比較して、令和2年度には、4,109人と、約18%削減するなど効率化を進めており、今後もさらなる行財政改革の取り組みにより、人件費の抑制に努めていく。」としており、この「肥大化」しているとも言える官営事業の見直しの途上にあるようです。

もし、維新が切り込めるとしたら、こうした方針をしてもなお、不必要に直営となっている事業が無いか、精査することかもしれません。

さて、義務的経費以外のもので注目すべきは、「物件費」、「補助費等」と「繰出金」です。

岐阜市の物件費経常経費充当一般財源等(単位:千円)

物件費とは、人件費、維持補修費、扶助費、補助費等以外の地方公共団体が支出する消費的性質の経費の総称で、旅費、交際費、需用費、役務費等が含まれています。

物件費はここ5年で約8憶円程の上昇となっていますが、岐阜市いわく、これは、「岐阜市行財政改革プランに基づき、各種業務の委託化などを推進しており、人件費から物件費へのシフトが進んでいる」とのことなので、岐阜市が直接行っていた業務をアウトソーシングしている結果であるため、人件費抑制のための必然の結果とも言えます。

また、直近1年でやや金額が減ったのは、「令和2年度は会計年度任用職員制度に伴い、物件費に計上していた経費を人件費に計上したことなど」としており、つまるところ期間雇用職員(的なもの)の制度が代わり、物件費に計上していたものが人件費に振り替わった結果というだけということです。


岐阜市の補助費等経常経費充当一般財源等(単位:千円)

補助費等とは、各種団体に対する助成金や一部事務組合への負担金のことです。

この補助費は減少傾向にありますが、「令和2年度は、幼稚園就園奨励費補助金の減など」が原因とのことです。

岐⾩市⾏財政改⾰⼤綱 2020では、「全事務事業に対し、費用対効果等を踏まえた見直しを実施するとともに、あわせて、福祉や教育をはじめとした全ての施策において、市が関与する必要性を視野に点検を実施します。」とのことですので、もしかしたらその結果なのかもしれません。

岐⾩市⾏財政改⾰⼤綱 2020より抜粋

上図のとおり、実際、岐阜市でもご多分に漏れず少子高齢化が進んでいるようですので、幼稚園就園奨励費補助金のニーズが減退したとしたら、その必然の結果なのかもしれません。


岐阜市の繰出金経常経費充当一般財源等(単位:千円)

繰出金とは、会計間相互に支出される経費をいい、ここでは一般会計から介護保険事業会計や後期高齢者医療保険事業会計と言った特別会計や公営企業への言わば仕送りのことを指します。

ここ5年で約12憶円程の伸びを示していますが、繰出金を含めてその他経費についての総括で、「介護保険事業への繰出金が増加した」としており、介護保険事業をはじめとした繰出金の増加が顕著のようです。

実際、類似団体平均と比べても重たい負担となっています。
(経常収支比率 類似団体平均:11.7% 岐阜市:13.0%
人口一人当たりの金額 類似団体平均:26,193円 岐阜市:27,567円) 

補助費等と繰出金の推移を見ると、もしかしたら、少子化で子育て支援のための事業は縮小させているものの、高齢化の影響によるコスト増が大きくなっていると言えるかもしれません。

収支の状況

では、収支の状況を見ていきましょう。


歳入と歳出の差額から、翌年度繰り越すべきお金を差し引いたものが実質収支です。

岐阜市はここ5年ずっとこの収支が黒字ですが、実質収支には、前年度から持ち越されているものもあるため、ストック性があるため、純粋なフローを見るとなると単年度収支(=今年度と前年度の実質収支の差額)を見たほうが、より収支というイメージに近い数字を見ることができます。


なんと単年度収支は、ほとんど赤字。

2020年度は黒字ですが、単年度収支の金額は、基金への積立金や市債の繰り上げ償還等は差し引かれていますし、基金の積み立てを取り崩した金額は逆に上乗せされています。

そのため、これらを逆にすれば、さらに実態に近いフローの状況を確認できます。

積立金や繰り上げ償還等は足し上げ、基金の取り崩しは、差し引くと、実質単年度収支という数字になります。


毎年の積み立て額は、徐々に減少していっています。余裕の無さが伺えます。


そして繰上償還金は毎年0にも関わらず、ほぼ毎年のように約20憶円程の積立金の取り崩しを行っています。

基金の増減を見ると、以下のとおり。


※減債基金は0

貯金にあたる財政調整基金も、特定の目的のために積み立てた特定目的基金も、ここ5年で半減しています。

特定目的基金については、鉄道高架事業基金、教育施設整備基金 、庁舎整備基金等の目的に対する支出であるため、致し方ないものではありますが、毎年のように財政調整基金を取り崩さざるを得ない状況であるのは、財政運営に苦慮している様子がうかがわれます。

これらをトータルして、先述の実質単年度収支は以下のとおりです。


なんと恒常的に赤字です。実質収支や単年度収支が黒字だった2020年度さえ、実質単年度収支は赤字だったのです。

実は、歳入決算額に占める地方債収入の割合が、類似団体平均よりも高い状況です。

人口一人当たりの歳入決算額
岐阜市:46,038円 類似団体平均:37,390円

歳入決算額に占める割合
岐阜市:7.5% 類似団体平均:6.9%

岐阜市の地方債収入額(単位:千円)

また、年々地方債収入が伸びているのですが、地方交付税で将来的に手当てされる臨時財政対策債ではなく、それ以外が伸びているというのが怖いところで、将来的に大きな負担になる可能性があります。

実際地方債残高は大きく伸びています。

岐阜市は、財政調整基金の減少について、「財源不足を補うため、令和2年度予算編成では35億円の取崩しを見込んだが、決算収支見込みを踏まえ、最終的に16億円を取崩した。」とあり、財源不足を財政調整基金で工面する状況であることに加え、年々地方債による調達額も増えています。

したがって慢性的な財源不足に陥っている可能性は否定できません。

まとめ

岐阜市の財政をまとめると以下のとおりと考えられます。

・各種指標は今のところ悪くはない
・歳入は、個人の市町村民税や地方消費税交付金の伸び等により増加傾向であるものの、直近では法人税割の大幅減収の影響が大きい
・歳出は、利率の高い債券が償還し終えたため公債費は低下傾向にあるが、直営事業が多いことにより類似団体平均より高い人件費、扶助費等は増加傾向
・同じく幼稚園就園奨励費補助金の減等により補助費は低下傾向にあるものの、介護保険事業等へのへの繰出金が重しとなり、少子高齢化による高コスト化傾向が垣間見える
・実質単年度収支は慢性的な赤字
・基金がここ5年で半減
・地方債残高は増加傾向

将来負担比率等の数字が良いので今のところ見かけ上問題ないように見えて、水面下では、少子高齢化の影響でにっちもさっちもいかない財政運営状況であることが垣間見えます。

自治体の自助努力で何とかできる部分とそうではない部分もあるため、その財政運営はかなり厳しいものと考えられます。

少子高齢化で子育てに関連する補助金事業等が縮小する反面、介護保険事業のための繰出金コストが増加するというのは、かなり象徴的な現象と言えるでしょう。

その収支の悪化状況を地方債発行や基金の取り崩しで対応していることから、早晩行き詰まる可能性も否定できません。

岐阜市自身も総括しているように、直営事業の多さが人件費の高さにつながっていることから、これをどれだけ民営化等により行政改革できるかがもポイントですが、「少子高齢化への地方政府としてどう対応すべきか」という全国的に避けて通れない課題に対して、一定の解答を岐阜市は求められているのかもしれません。

サブスク向け(少しだけ)おまけ

おまけとして、「もしも自分が岐阜維新だったら、どのような解決策を考えるか」という思考実験的なものをしてみたいと思います。

いわゆる、「ぼくがかんがえたさいきょうのせいさく」的なものですが、少しだけお付き合いください(笑)

まず、岐阜市が持っている利点として、名古屋という日本有数の大都市に近いという地の利があります。

だからこそベッドタウンとして一定の人口を維持しているわけですが、この魅力をさらに深堀して、名古屋市からさらに人口流入を促すような対応をすべきかもしれません。

法人関係の税収増は大きくは見込めないでしょうから、個人住民税収を増やすべくベッドタウンとして磨きをかけるというのが目指すべき方向性ということでしょう。

住む場所としての岐阜市の人口が増えれば、当然岐阜市での消費額も大きくなり、消費税収も増えることも考えられることから、一石二鳥と言えます。

冒頭で自然と都市とのバランスという魅力が岐阜市にあると言うことですが、裏を返せば、「宅地開発の余地がある」とも言えますので、ニュータウン開発などで若い世代を呼び込むような施策が待たれるところです。

固定資産税収も市の大きな財源であるため、こうした宅地開発も短期的にはコストがかかるにしても、将来大きなリターンとなる可能性はあります。

それらに加えて、消費地としての魅力も磨かねばなりません。

先日、木村拓哉さんが信長に扮して登場したイベントには全国から数十万人を超える人々が集まりました。

これは岐阜市の人口を上回る数であったそうです。

しかし、イベントが終わるとすぐさま集まった人はいなくなったと言いますから非常にもったいない。

信長という屈指の人気戦国武将が一時期本拠地にしていた岐阜城を擁しているという魅力があるにもかかわらず、それが消費に十分結びついていないのはチャンスロスですね。

木村拓哉さんがやってきて人を集めたならば、飲食やグッズ販売でビジネスがチャンスもあるはずなので、ここは官民挙げての努力が必要でしょう。

岐阜県は、岐阜城だけではなく、大垣市の大垣城や関が原古戦場等、戦国時代ゆかりの、しかも人気武将である織田信長や斎藤道三、豊臣秀吉に関連したスポットも多くあります。

岐阜市だけでは弱くとも、これらをセットにして観光客を楽しませる仕組みを作り、ビジネスチャンスにつなげていくことで、「県外の人からお金を落としてもらう努力」も必要なのかもしれません。

私のアイデアは月並みではありますが、岐阜維新が実際にどういうソリューションを提案してくれるのか、楽しみではあります。

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