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サブカル大蔵経161『映画秘宝ex モーレツ!アナーキーテレビ伝説』(洋泉社)

 私たちが最初に見たテレビ番組はなんだったでしょうか。

〈欽ちゃん〉〈ドリフ〉〈ひょうきん族〉〈いいとも〉〈ひな壇〉のどれにも当てはまらない時代。なぜ、こんなに勢いが感じられるのか。本気度があるのか。「芸人」という言葉に守られていない大人たちの仕事と矜恃。それを支える人々。

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小生の目が完全にいってると思った人が多かったんです。中でも藤田まことさんに部屋の隅に連れてかれて、「四郎ちゃん、あんた大丈夫?」と言われた。(中略)ドリフターズはA級、僕たちがやっていたのB級。(伊東四郎)p.14

 伊東四郎のアナーキーズム。やったもん勝ちのアドリブ上等。実は、とんねるずが継いだのは伊東四郎なのか?ドリフの仕込みコントや、ツッコミとボケの関西の笑いの対極。

電線音頭は未だに年にいくらかの印税が入ってくるんですよ。何千円とかですけど。という事は、今でも誰かがどこかで歌っているということですよね。(田村隆)p.29

 関根勤がコサキンラジオで歌っていた曲をテレビでもやってたら、伝説になってたかな、歌い継がれたかなあ…。と今でも思います。「タンパク質〜!!黄身たち白身たち、ヌルヌル、温泉玉子だよー!!」

カリキュラマシーンは子供を差別しなかった。(木下蓮三のアニメ)p.35

 子供心に残る、異界を代表するアニメ。カリキュラの絵本はバイブルでした。これで異界への興味、旅を意識したかもしれません。テレビは日常と異界を繋ぐ箱でした。

ガッツさんがボクシングで初めて世界チャンピオンになった翌日に出てもらいましたけど、ガッツさんが汗をかいているの見てアッコが水のかわりにウオッカを飲ませたんだよね。ひどいことしたよね。p.52 

 ガッツとアッコ。息が長い。そのくらいインパクトがあったし、忖度なしの真剣だった証左か。

ウィークエンダー。フリップは苦肉の策でしたが、発想は紙芝居。テレビはあの頃〈電気紙芝居〉なんて大宅壮一が馬鹿にしてたから、紙芝居にも面白くできるんだと大宅壮一に対して挑戦するつもりもあった。毎週再現フィルムがありましたが10分に満たない物でしたが、映像は刺激的でした。作り話じゃなかったですからね。やってる方も迫力もあったし、プライドもあったと思います。p.68・70

 ウィークエンダーの事件再現動画も印象深いです。この世には見ては行けない映像というものがあるのだ…と子供ながらに思いました。エロくて生々しくて、苦手でしたが、惹きつけられました。とにかく怪しかった。あの動画が、ザ・大人。ザ・社会でした。今の子供たちはYouTubeの動画を見て同じことを思うのだろうか。

11PM。当初は月曜から金曜まで日本テレビが制作するはずだったが労働組合に拒否されて火曜と木曜は系列の大阪の読売テレビが担当。p.108

 まさか組合の理由で関西と半々だったのか…。正直、関西の日はエロくなかったからいらなかったが…。それで義一さんが誕生したのか…。

トゥナイト。ロス疑惑メディアには報道する自由があると主張する田原に対し、三浦夫はもし犯人でないならば責任を取って欲しい、メディアが何のリスクもないのは不公平と強く反論。こうしたことは「朝生」に受け継がれた。p.121

 三浦事件は子どもから見て一番良くわからない事件だった。しかし、そこから朝生が生まれてのか…。

山本カントク。占いの館に、あれ、石原慎太郎行ってるんだよ。それなのに東京都知事になったら歌舞伎町きれいにするって言うから、あの野郎と思った。p.126

 武闘派カントク、石原を斬る。

みうらじゅん。当時は夜の11時って言う時間は今よりもずっと深い時間だったんだ。それがまた11PMの気持ちを盛り上げてくれたんだよね。だけど親父が持っている新聞のラテ欄には11PMのところに「㊙︎スウェーデンの夜」と。物音がしたら慌ててスイッチを切る。異常がないかを確認してからまたつけるんだけど、ブラウン管、つくまでに時間がかかるんですよね。それでいいシーンを逃したこともずいぶんあるなあ。11PMはスタジオの醸し出す銀座感がやらしかった。p.130

 みうらじゅんの再現描写力、ここに極まる。さすが…。見てはいけないものを見る工夫がサブカルチャーの原動力になるのかもしれません。

あの頃の木曜スペシャルチームってめちゃめちゃでしたからね。ウルトラクイズも、最初一回だけのつもりが、これ1本じゃもったいない、二本にしようと。p.145

「めちゃめちゃ」が許されない現在。70%が求められる。昔は120%かマイナスか。それが視聴者を虜にしたのでしょうか。

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