【藝人春秋Diaryラジオ書き起こし④】角田龍平の蛤御門のヘン 2021年11月10日放送分
オープニング
角田龍平(以下、角田)「(笑福亭)鶴光師匠、おつかれさまでした。わんばんこ。私が弁護士で俳優の角田龍平でおま」
水道橋博士(以下、博士)「わんばんこ。浅草キッドの水道橋博士でおま」
角田「というわけで、水道橋博士さんがこの番組、ついに3年8ヶ月ぶりの登場でございます」
博士「この番組が持ってて良かったですよ」
角田「はい。もう長期政権」
博士「長期政権。10票を投じられて。素晴らしいことじゃないですか」
角田「ありがとうございます」
博士「10票で京都だと地盤を確保できるんだとしたら」
角田「そうですそうです」
博士「結構、地方局もいいですよね」
角田「あのぉ…わからない方にご説明差し上げると、『ラジオ番組表』人気DJランキング。これで知ってる人ほとんどいないので」
博士「まあ総選挙ですからね」
角田「総選挙の中で」
博士「ラジオリスナーの中ではね」
角田「10票はすごいんですよ」
博士「ナインティナインの…」
角田「ナインティナインは1票」
博士「1票と間違いの1票で2票」
角田「よく聴いてくださってありがとうございます。博士さん、あんだけ忙しいのにKBSの私の番組まで丁寧に聴いてくださってるのが」
博士「入りましたよ。radikoの」
角田「radikoプレミアム」
博士「エリアフリーを、プレミアムを。しかもこれを聴きたいがためですよ」
角田「いや、そうじゃないでしょう(笑)」
博士「いや、ホントにそうですよ」
角田「ホンマですか? ありがたいお話ですホントに。前回お越しいただいた時は『藝人春秋2』(上下巻)の単行本が出た時やったと思うんですけれども、今回は『藝人春秋Diary』。こちらスモール出版から」
博士「スモールと言いながら、ビッグな大著を」
角田「ビッグですよぉ~」
博士「560ページかな」
角田「500…そうですね。博士さん界隈はみなさん、この500ページ超の本を当たり前のように書くんですよね。細田(昌志)さんをはじめ。はいはい。私もこれ読ませていただいて」
博士「ありがとうございます」
角田「たっぷりお話を伺いたいんですが。博士さん、また今絶賛炎上中ということで」
博士「炎上中なんですよぉ」
角田「ねっ」
博士「焦げ臭いでしょオレ?」
角田「焦げ臭かったですね今」
博士「入って来るなり」
角田「銀座の(KBS京都)東京支社に入って来るなり、ちょっと「あれ焦げ臭いな?」っていう」
博士「しかも火炎瓶をどんどん投げ込まれながら、違う事件の火炎瓶も来て。もともとオレ自身の話じゃないですからね」
角田「そうなんですよ。もともと」
博士「太田光君が」
角田「爆笑問題の」
博士「炎上してただけですからね」
角田「そうですよね」
博士「その火を見てただけですから。その火を見ながら、江戸っ子が火事が好きなのと一緒ですよ。見ながら「おぉ~火が燃えとんなぁ」って。「痛快やなぁ」って言ったら、こっちに燃え移ったみたいなもんですよ」
角田「あれはTBSの選挙特番で太田さんの二階(俊博)さんや甘利(明)さんや他の誰かな? 高市早苗さんとかに対する態度が悪かったみたいなことで叩かれてることを、博士さんがTwitterで擁護というか」
博士「オレは擁護なんて書いてないですよ、あれ。高田文夫先生のラジオを聴いて、(『選挙の日2021』を)観てなかったから観て「これは痛快だ」って言って。コメディアンの仕事じゃない。あれは芸人の仕事じゃない」
角田「まあそうですよね。政治家に対して、揶揄するというか」
博士「池上(彰)さん、池上無双の裏番組で。しかも太田の名前を出してメイン司会でやってくれってなったら、そりゃ芸人だったらより強い者…爪痕残そうと思ってやりますよね。且つ太田君って、太田総理の番組の頃もっとすごかったからね」
角田「日テレでね。前からああいうことやってらっしゃいましたもんね」
博士「やってた。やってたし、政治家に対してバカ扱いするみたいな口調で挑んでいくっていうのはさ。むしろ日テレのなんか、感心した回いっぱいあるもんね。よくここまで言うよっていうさ。『スミス都へ行く』みたいな感じでしたよ、オレから見ると。こんな正義をきっちりしゃべれる人いるんだっていうぐらいに見てたから。オレと太田君の間、いろんな確執あるから純粋に何かオレが狙って、あんなことやってるみたいに言われるのも不本意だけど。純粋にオレ自身がコメディアンていうのは、何のためにあるのかっていうのをかねがねサシャ・バロン・コーエンの話をしながら、そういうイギリスの俳優がいるんですよ」
角田「『ブルーノ』とかね。面白い映画でした」
博士「だからそういう王様と道化っていう関係があるんだ。まあ歌舞伎なんかにもホントたくさんありますよ。だから道化っていう役っていうのがトリックスターでもいいんだけど、芸人にはあってそのためにああいう代行してる、庶民の声を代行するんだっていう気持ちはかねがねあるから。「どうして、たしなめられるんだろう?」って書いたら、まあヒドいですよ」
角田「(笑)」
博士「1日4千件ぐらいね」
角田「Twitterで」
博士「ええ。“老害”だの、“才能ない”だの、“オマエで笑ったことない”だのさ。“失礼”だの言われると、太田君も言ってたけど「コイツは一番失礼な男だ。死ね!」って、どっちが失礼なんだよ」
角田「「オマエや!」っていうね」
博士「ホントねぇ!」
角田「博士さんは顔も出して、太田さんも顔を出して自分の言うことを言うて「失礼や」って。まあ言われんのは構わないですけど、直接「死ね!」って言うてくる人が「失礼だ、死ね!」って言うてるわけでしょ」
博士「そう。でもあれもう山本太郎代表に対して自分で一方的にしゃべって(スタジオに)下りてきて、「態度が悪いね、あの男」って言ったの。あれは「オマエだよ!」を含めてギャグでしょ」
角田「ツッコミ待ちのギャグでしょ」
博士「ギャグですよね」
角田「田中(裕二)さんがとなりにいたら「オマエだよ!」って言う、そういう」
博士「そういうギャグだよね」
角田「ギャグですよね。それはでもわかりますよね」
博士「わかるよねぇ」
角田「普通に観てたらね、う~ん…。甘利さんが可哀そうやって何目線って思いますよね。どういう目線で立場に立ったら、与党の幹事長って力のある人がああいう疑惑があって、それに対する不信感があるから小選挙区で負けてっていう状況で、太田さんのあの態度っていうのは」
博士「ジャーナリズムを含めて権力者に対する態度っていうのを、道化の人がどう持つかっていうと極めて正解な態度だと思うんですよ」
角田「そうですよね。しかも甘利さん、テレビとか観てたら選挙運動期間中に「私には未来が見えるんです!」とかって言うてて。あれがフリになってるわけですよ、めちゃめちゃ」
博士「ご愁傷様までね」
角田「あれもセットじゃないですか。「未来が見えます」っていう。昔、上岡龍太郎さんが霊能力あるっていう人をいきなりパンって叩いて、「オマエ未来わかる能力あるんやったら、なんでオレにしばかれるってわからへんかったんや」って…」
博士「いや違うんですよ。あれは「オマエ、未来がわかる能力があるんだったら、オマエが今からオレに叩かれるかどうか占え」って」
角田「あ、先にそう言うたんですか? そうかそうか」
博士「だから、どっちでもいけるんです」
角田「どっちでもいける(笑)」
博士「そう。だからめちゃめちゃ悪い質問なんですよ、これ」
角田「そうですよね」
博士「どっちにも未来を裏切れるんですよ」
角田「完全に詰めてるんですよね」
博士「そうなんですよ」
角田「詰まれてるんですよね、霊能力者は。その太田さんの発言に関連して、博士さんのとこにぜんじろうさんも炎上されてたじゃないですか」
博士「そうそうそう」
角田「太田さんを擁護して。ぜんじろうさんに対するいろんなリプライとかでも書いてあったんが“上岡龍太郎が泣いてるぞ”と。“上岡龍太郎は人に対して失礼なことせんかった”と。今の話聞いたら、めちゃめちゃ失礼なことしてますよね(笑)」
博士「ていうか、「談志もたけしもここまでやらなかった」っていうのを高田文夫先生がおっしゃって、それを引いてるんだけど“たけしから何も習わなかった”とかって、いろんなことをオレに言ってくるオレより年下の。しかもオレはこの世界をずっと身をもって探求してる人じゃない」
角田「はい。そうですそうです」
博士「文献とか全部いろんなものを。言わばそこの語り部でいるわけじゃない。そのオレに対して言ってくるんですけど、たけしさんも談志さんももっと言ってますよ。あんなもんじゃないですよ!」
角田「そうそう、だからそれはそうでしょ。高田先生の言葉を引いてはっただけでしょ」
博士「そう」
角田「たけしさんだって…ねぇ」
博士「だから言えないぐらいですもん、ここで」
角田「今の時代はね」
博士「今の時代はこういうことがあったってことを言えないぐらいのことを言って、出てきた人ですよ。談志師匠のすごいですよ」
角田「ボク、10何年前に『平成教育委員会』の特番で1回出たことがあったんですけど、その収録の時のたけしさんも神懸ってましたもんね。絶対放送できないような直近にあった事件の容疑者に似てるなみたいなことばっかり言うんですよ(笑)」
博士「言うでしょ(笑)」
角田「ちょうどね、何の時間やったかな? 修学旅行だかあったんですよ。クイズで修学旅行で関東の中学生かな小学生かな。一番行く場所で多いのはどこみたいなんで。ロザンとかね芸人がいて、普通に日光とかって答えてたんですよ。それをたけしさんが怒って「新疆ウイグル自治区とか言え、この野郎!」って言わはったんですよ。だからすごいなって思って。その辺はまったく放送されてなかったんですけど」
博士「されないよね」
角田「「芸人やったら言え、この野郎!」って言わはったんが、「うわぁカッコええ、たけちゃん!」って思いましたもんね」
博士「結構、宇治原(史規)君にキツい時あんだよなぁ、たけしさんは。「アイツのどこが面白れぇんだよ」って。いや面白くて出て来てるわけじゃないんでって」
角田「まぁまぁね、出方としてはね。だから、たけしさんとしては常にそういうのがあるんでしょうね」
博士「そうそう。そんなの談志師匠で言ったら、ホントに死刑囚に対してのね、ものすごい発言いっぱいありますからね」
角田「ああ、そうですか」
博士「今しゃべっても大丈夫? 切れるここ?」
角田「いや切ろう…切れます切れます」
博士「切れる? だから要は…」
※カット音が入る。
角田「そうですよね。だからホンマに…」
博士「だからその人たちが、たけしさんや談志さんの何を見てオレに、“オマエは何も習わなかったのか?”って言うのかが不思議なんですよね」
角田「たけしさんとか談志さんに対して、博士さん『藝人春秋』シリーズでも」
博士「何回も言及してますよ」
角田「何ページも割いて書いてらっしゃって。それを読むこともなく。爆笑問題の太田さんご本人もラジオで40分、今週『(爆笑問題)カーボーイ』でオープニングでしゃべってたじゃないですか。あれもそういう批判してる人は聴かないわけでしょ」
博士「聴かないんでしょうね」
角田「きっとね。う~ん。あれ聴いてたら、ホンマに太田さんの真っ当さっていうのがわかるし」
博士「あとリベラルですよね。ずっとリベラルじゃないですか」
角田「そうですよね。かといって、どっかの政党に与するわけでもなく、与党にも野党にも違和感を持っててっていう」
博士「今回あれですけどね、投票した政党を言うっていうのも新しかったですよね」
角田「言うてはりましたね」
博士「前田武彦っていうすごい有名な司会者いたんですけど、テレビで「共産党バンザイ」って言ってそのまま干されましたからね」
角田「ていう事件があったんですよね」
博士「ありましたありました。『夜のヒットスタジオ』ですかね」
角田「なかなかね、あの立場でど真ん中にいながら、ああいうなんですかね政治の話を真正面からしようと取り組もうと」
博士「だから、そこに投票しましたっていうのを言うこと自体もすごく覚悟してんですよ」
角田「ご本人の中ではね」
博士「自分はここまで言うよって。そういうのってタブー視されてるけど、タブー視される理由はないよっていうためだと思うんですよ。ハリウッドの俳優なんか全員言いますからね」
角田「そうですよね。民主党を支持してる、共和党を支持してる、(ドナルド・)トランプに反対してるとかね。みんな言いますもんね」
博士「言います言います。日本ぐらいって言ったらまた変な言い方になるけど、日本がおかしいってことじゃないですか。いやだけど…それがこんなにオレを否定する人が多いのかと思ってビックリしますよね」
角田「直接あれはリプライ、本人にメール形で送ってくるわけですか? 傷ついたとか」
博士「メール形で送ってくるものもあって、それは晒してもいいのかなって気持ちはあるんですけど。ボクは何度も炎上してますから、炎上師匠と呼ばれるぐらい。三遊亭炎上って呼ばれる」
角田「炎上師匠(笑)」
博士「言われるぐらい、今までは本当にTwitterの炎上はとにかく「炎上で暖を取る」って言ってたんです。なんか炎上しにくくなってきたら薪をくべるぐらい。一晩中燃やし続けるっていうのをやって遊んでたぐらいなんですが、それこそ酒井若菜さんがあれをやられると…。必ずリツイートしてましたから、自分について悪く書かれるものを」
角田「エゴサーチした上でなさってましたよね」
博士「「博士を支持してる好きな人がすごいイヤな気持ちになる。こんな好きだと思ってる人がこんなふうに言われてるっていうのは、自分への悪口を聞いてるような気がするからやめてください」って言われてやめたんですよ」
角田「酒井若菜さんって博士さんに対する影響力も、ナインティナインの岡村さんに対する影響力とかすごいですよね! あの方は」
博士「すごいですよね。そういうふうに言われればやめるし。あとロマン優光っていう人と割と言い争うことが多かったんだけど、そのぉ…なんていうかな、フォロワー数が多い人が普通の市井の人のつぶやきってのは水道橋博士に向けてるわけじゃないんだって。ただ自分がつぶやいた…オレと一緒だよね。今回のオレも自分がただ感想をポッと書いただけで、つぶやきのつもりじゃない。それをネットニュースに上げてほしいなんかも思ってもないし、擁護って書かれたくもないし。そういう騒ぎになろうと思ってないわけじゃないですか。「だからそういう全国津々浦々に住む人がオレのツイートを見て思った感想を、ポツリとつぶやくものをわざわざリツイートしたり拾ってきてオレの48万人のフォロワーに見せるっていう理由はないんですよ」って言われて「確かに!」ってそれも思ったんだよね。だってそれはなんだろう…言論弾圧じゃないですか」
角田「ああ。まあまあそのぉ、支持者がまたその人を攻撃する可能性があるし。そういう使い方をしている人も、なかにはいらっしゃいますもんね」
博士「犬笛を吹いてね、そこへ攻撃しろっていうふうになるっていう現象が起きるわけじゃないですか。だからひたすらにね、この炎上、オレへの火炎瓶の投下をひたすら受けてるから今焦げ臭いんです」
角田「(笑)。焦げ臭いまま来られて」
博士「そうですそうです」
角田「その太田さんが出てくる話もあるんですけど」
博士「太田君と岡村君」
角田「『藝人春秋Diary』で。それと太田さんがまた別の話でも出てくるんですけれども、博士さんあるいは浅草キッドと太田さん爆笑問題の話っていうのはボクらの世代にとってすごい興味深くて。ボクは高校の時、中学の時か。ABCラジオで『(ABC)ラジオパラダイス火曜日』っていうのを博士さんとかやってらっしゃった時に(1991年10月~1992年9月を担当)、その時にすごい爆笑問題のことを悪く言ってらっしゃったんですよ。関西の人間って当時1990年初頭って、爆笑問題とか本当に博士さんから聴いて初めて知ったぐらいで、ボクは浅草キッド派やったんで「なんか、いけ好かん芸人が東京にいるんや」っていう認識やったんですよね」
博士「全方位にめちゃぶつけしてましたからね」
角田「あの当時はすごかったですよね」
博士「すごかった」
角田「でも今見てると、浅草キッドと爆笑問題のこの30年史っていうのは、もうなんていうのかな、けしてそういうあれですよね? 仲が悪いとかいうわけでもなく」
博士「本をたどっていけば、『お笑い男の星座』の『爆笑問題問題』っていうのを書いてんだけど、あの時にキリングセンスのハギ(萩原正人)君のお見舞いに行った時に、その後に話をした段階でオレの中では全部終わってるつもりだったんですよ。なんにも思うことがない。普通に本好きのたけしさん好きの共通項同じ人だなっていう」
角田「共通項がものすごい多いですよね。文芸の関東の芸人で、たけしさんの影響下にあってっていう」
博士「高田文夫先生の影響下にあってっていうことだから…だったんですけどね。なんかホントにねじれるんですよね」
角田「最初に1990年に、たけしさんのオールナイトニッポンの代打で当時太田プロを独立したばっかりの爆笑問題が起用されて、そんときに太田さんが「浅クソキッドは悔しい思いしてるやろう。来れるもんなら来てみろ」」
博士「「たけしは死にました」っていうのをね」
角田「「ビートたけしは死にました」って言って。その時の博士さんが乱入なさったっていうのは、その時はホントにバチバチの対立関係やったんですか?」
博士「バチバチの対立関係っていうより、その当時のニッポン放送がたけしさんが休むようになってその代役を(たけし)軍団を使わないっていうことに対して、オレがすごい怒ってたんですよ。毎週詰めてるわけだから。たけしさんがいない時に、軍団の人のオールナイトニッポンをなぜやらないんだっていうことをボク自身は怒ってたんですよ。そしたらよりにもよって爆笑問題を使って。しかも爆笑問題がそう言えば、それはオレは行かざるを得ないじゃないですか。それでスクーターで2時56分ぐらいに駆け付けて。そっから3分ぐらいオレが一方的に言ったっていう話になってますけど、放送聴いてもらえばわかるけど割とギャグめいて応酬をした。その後に3時、「終わった後しばらく博士がずっと」って言われるのは、その当時のディレクターを含めてね、そのディレクターにオレはすごく怒ってましたよ」
角田「爆笑問題(の起用)をどうのこうのよりも、兄弟子を使わない」
博士「使わない局の問題。TBSの局が悪いって今回言ってるのと同じですよ」
角田「なるほど(笑)」
博士「それは芸人はああなりますよっていうのは予測されたことじゃないですか」
角田「まあそうですよね。太田さんが甘利さんに気ぃ遣って踏み込まへんわけないですもんね」
博士「わけないよ。そりゃない」
角田「面白かったですもんね。甘利さんの、言っちゃあれですけど落ち方っていうのが」
博士「甘利さんも面白かったけど、あの人が面白かったじゃないですか。「当選したばかりの私に…」(ダミ声でものまね)」
角田「二階さん」
博士「「失礼だよ!」(ダミ声でものまね)っていう、あの辺のやりとり全部面白いですけどね」
角田「でもねぇ、やっぱりその二階さんとかいつまでやんねやろうっていうのは、(テレビを)観てる人が思ってることですもんね」
博士「そうそうそう。まああの反応についてはおかしいなとは思うけど、それを言うとオレがなんか「芸人だから芸人を擁護してる」っていうつもりでもないし、なんて言うのかな機嫌を取ってるみないなね、太田君のね。そんなことあるわけないじゃない(笑)」
角田「そうですよね。そういう言われ方もあるんですか?」
博士「そうそう。この『藝人春秋Diary』に詳しいですけど、松本人志さんと太田光の問題っていうのがあるじゃない。そこの火付け役がオレだっていうのは、火付け役はオレだよそれは」
角田「そうですよね。あれをちゃんとというか、本で書いてたあの2人の関係について残してはるのは」
博士「文面ていうのは、『お笑い男の星座』しかないから」
角田「そうですよね。その前に週刊誌で載ったのを、ボク学生時代読んだ記憶あるんですけど」
博士「爆笑と、松本さんがパイプ椅子を持って脅したっていう話自体はあれは架空の話だから」
角田「それはそうですよね。そういうトラブルがあったっていうのを前提にフィクションの部分で」
博士「フィクションの部分だけど河田町(旧フジテレビ社屋内の楽屋)の一室に呼び出したっていうのはホントですよ。そこに周りに松本軍団の芸人がいたっていうのもホントだし。その中身に関しては、ずっとエンターテイメントノンフィクションとしてそういう書き方してるからフィクションかぐらいはわかるように書いてあるじゃないですか。だから、まあまあそれも…連載時に『TV Bros.』に連載してんだから、あれが問題があるんだったら、もし問題があるんならね、その時に抗議してくれればいいじゃない。だけど今、松本さんと太田君が共演する時に「水道橋博士許さない」って言われるのは、もうオレは「そんなわけないじゃないですか」って」
角田「そこはまだ言われてるんですか? 博士さんがそういう火を付けたからみたいな」
博士「えーと…ここはまた切って」
※再びカット音が入る。
角田「あのぉ…今の部分は全部、はい、ちょっとカットということで。私も世話になった人の話になりますんで、はい(笑)。ていうことで、今日はたっぷりと『藝人春秋Diary』の話を博士さんにお伺いしようと思います。それでは行きましょう!『角田龍平の蛤御門のヘン』」
角田「改めましてわんばんこ。私が弁護士で俳優の角田龍平です…あ、でおま。で今夜は水道橋博士さんをお迎えして、新しく出版なさいました『藝人春秋Diary』スペシャルということで、この560ページに及ぶ大著の話を」
博士「はい。聞いてるわけですか今? 全部今のカットになったんですか?」
角田「今のは一部カットになりました」
博士「どこまでがカットか全然わかんない」
角田「いやぁ~あのぉ…」
博士「結構ね、もう2時間ぐらいしゃべってるから」
角田「そうなんですよ。このオープニングまでに2時間ぐらい、いろいろ話をしてるんですけども(笑)。うまいことちゃんと編集していただいて」
博士「大丈夫です大丈夫です」
角田「大丈夫ですよね?」
博士「ボクはどれが利用されようとホントに大丈夫です」
角田「そうですよね」
博士「しゃべったことで切ってくれは、まるで無いですから今」
角田「それは『街録ch』の時もおっしゃってましたよね」
博士「ああ、そうそうそうそう。近田春夫さんもそうですけどね。自分でしゃべったことを切ったりするっていうのは、自分から絶対言わないって。その代わり、貴方の立場が困るんであったら貴方が切るっていう判断は任せますけど、ボクの方からどこを切ってくれっていうのは絶対ボクは言いませんって言って。最近、近田さんカッコいいんですよ、70歳」
角田「近田さんカッコいいですよね」
博士「カッコいい。ライブ2回やりましたけど」
角田「『調子悪くてあたりまえ(近田春夫自伝)』っていう本」
博士「めちゃめちゃ面白かったですよ」
角田「あの言葉がいいですよね。ボク、ホンマあの言葉を最近もうしんどい時に」
博士「調子悪くてあたりまえ」
角田「あたりまえやと。思うようにしてまして」
博士「ライブやった時もすごいいいのは、スベった時もそれを言うんですよ。「やあ調子悪くてあたりまえなんだよ」って(笑)」
角田「すべてが楽になるんですよ、調子悪くてあたりまえっていうのは。ホンマにこのコロナ禍でいい言葉やと思います」
博士「いい言葉ですよね」
角田「はい。この番組は京都の不動産・株式会社さくらの提供でお送りします」
博士とのトーク①
角田「『角田龍平の蛤御門のヘン』。今夜は水道橋博士さんをゲストにお迎えしてお送りしております」
博士「はい、お願いします」
角田「この『藝人春秋Diary』という本で、「人生の予告編」っていう言葉が」
博士「テーマですよね。全体を貫くっていうか。週刊誌(『週刊文春』)の連載を並べてるわけだけど、単行本化するにあたって言わばテーマで串刺しにするっていうことをやるんですけど、そのテーマを何本か串を打ってるんですけどその1本が「人生は予告編がある」っていうことは全体的に「ああ予告はここでされてるんだ」って気が付くように、最後に収斂されていくように作ってるんですよね」
角田「その言葉自体は古館(伊知郎)さんが」
博士「古館さんが言っていて、当時オレも共時性というかシンクロニシティでいつも言ってた言葉なんで。ラジオを聴いてて「古館さんが同じことを言ってる」って思ったんですね。その「人生の予告編」が自分に何があったかっていうのは、そこで古館さんに対して直接オレが「妻との出会い」っていうことで言っていたので。その「妻との出会い」自体が赤い糸みたいなことを人は言うけど、また星座っていう概念でも説明するんだけど、みんな全員意味がある…何も物語がないように星は並んでるけれど、そこに意志を持って線を結ぶことによって物語は浮かび上がってくるんだっていう星座っていう概念だけど。それを「人生の予告編」も言っていて、探しているからこそそこに線が結ばれて、そこに物語、形が現れてくるっていう話がテーマですよね」
角田「だから、博士さんはそれを意識的にいつも日記も付けられて」
博士「そうそうそう」
角田「そこに気付いて線を引けるっていう」
博士「そうなんですよ。だから『日記のススメ』っていうのもよく書いてるんですけど、誰もが貴方が主役の人生を歩んでるんですよ。だから一編の、みんな本なんですよね。みんな本であり、序章があり生まれてきてから、どんどんと自分が主人公の本をやっていて伏線っていうのは全部付箋なんだと。付箋を貼ってれば伏線を張れるから、終わりの章50歳を過ぎてからは伏線回収だらけなんですよ。付箋を貼っている人にとってはね。だけど付箋を貼る行為をみなさんやらないから、自分にはドラマがないって思うだけで。(笑福亭)鶴瓶さんなんかはホントにあっちこっちで付箋を貼ってるから、必ず伏線回収があってそこに物語が絶対できるんですよ。だからその行為をボク自身は日記を書くことによって、この日この時この人にこう会ったっていうことをすべて回収していけるからできるんだと思うけど。そういう意志的な行為だと思いますよ」
角田「それで質問のメールが来てるんですけれども、こちらの36たろうさんからいただきました。
【俳優で弁護士の角田先生、本日のゲストの水道橋博士さん、こんばんは。私は博士さんのブログをライブドアの時代から拝見しています】」
博士「すごい!」
角田「【毎日の日課になっています。博士さんのブログに触発され、私もブログを15年以上毎日書いています。旅の記録やその時のニュースや思ったことなどを書いています。続けることは苦しい時もありますが、振り返ってみるとその当時何をして何を思っていたかわかり、日記のように感じています。博士さんにとって、毎日続けることの意義やその思いがあれば教えていただきたいです。ツイキャスにもおじゃましています。お体ご自愛ください】」
博士「ああそうですね。今言った話ですよね」
角田「意図的に付箋を付けてると」
博士「そうですそうです。自分が主人公のドラマを生きてる。特にボクはたけし軍団に入ってから。たけし軍団に入る前は自分の人生はものすごく退屈で、さまざまなドラマを必要とするから小説を読んでたんですよね。だけど日常の中に、自分の師匠がたけしさんだって思うだけでもドラマじゃないですか」
角田「それはそうですよね。ビートたけしが、憧れた、恋焦がれた人の弟子に23歳ですか、24歳ですか?」
博士「これはよくたとえを出して申し訳ないんだけど、(若い頃に)ダンカンさんに殴られるんですよ。殴られた瞬間にオレ、スローモーションになってコマが出ちゃってんですよね、自分の中で。「わっ、今オレ、ダンカンに殴られている」っていう(笑)。その漫画の中のシーンなんですよ」
角田「ボクもオール巨人に弟子入った時に現実味が無さすぎて、「うわっ、オレ、オール巨人の弟子なってる」って、ちょっと笑けてたんですよ、面白がって」
博士「そうそうそう。面白いよね」
角田「「なんでカバン持ってんねやろ? オール巨人の」みたいな。思ってましたもんね」
博士「そこなんですよね。そこからスイッチが変わって。あとはオレの場合は、自分が登場人物になっちゃってるからカメラが寄ったり引いたり常にしてんですよ。客観的に自分ていうものを捉えているカメラがあるように見えてんですね。で、芸能界に潜入したスパイっていう概念を『藝人春秋2』か。『藝人春秋1』は芸能人ではなく芸能界に潜入したルポライターっていう設定で書いてるけど。いつも人とこうしゃべってる時も(自分の中に)レコーディングスイッチがあって、それを入れるんですよね。この話は絶対覚えておこうってなるとカチッて入れてるし、自分が見てる風景もカメラをすごく意識してるから標準で捉えたり引きになったり寄ったり、もうさまざまにやりますね」
角田「この『藝人春秋Diary』だけじゃなくてシリーズ通して思うんですけど、博士さんから見たいろんな芸人、芸能人の一部を切り取ってるわけですけど。切り取りとかって結構最近悪い意味で使われることが多いですけど、博士さんの切り取り方っていうのはその人の一部なんだけれども、そっからいろいろその人の人格がわかるというか。この短い一章でそのひとつのエピソードから、いい部分も悪い部分も読み込めるすごい巧みな切り取り方されるなっていう印象があって」
博士「一編の掌編を描いてる、小説的な掌編を描いてる。田崎健太さんなんか「博士の『藝人春秋』シリーズっていうのは小説に読める」っていう「短編集を集めてるような感じがする」って言われるけど、それはそういうことですよね。ただ今回『藝人春秋Diary』の中は『週刊文春』で連載した60編を全部全面掲載するってことでやってるけれど、その中でやっている中で政治家に関しては手厳しい」
角田「はい、そうですね」
博士「ただ芸人に関しては愛でてる。すべて芸人に関して賛歌になってないものはない。ただ本当に権力を持つ者に対しては、すごく手厳しく書いてるね」
角田「そうですね。この本では石原伸晃さん、麻生太郎さん、安倍晋三さん、野中広務さん、片山さつきさんの章があるんですけど」
博士「野中さん以外は手厳しいよね」
角田「そうですね。野中さんは手厳しくはないけれども、なんて言うんですか…野中さんの人となりがわかるエピソードに」
博士「良い方向にわかる」
角田「良い方向にわかりますよね。思われてるパブリックイメージとは違う野中さんの一面ていうのが読んだらわかるんですけど。ほかの伸晃さんとかは結構あの(笑)。コラアゲンはいごうまんさんとの抗争を含めて、今回落選なさいましたけれども」
博士「はいはい。これも『藝人春秋Diary』効果ですよ」
角田「効果が。政治的な影響も及ぼしましたね」
博士「1万票差ぐらいだったでしょ?」
角田「でしたっけ?」
博士「ちょっとわかんないけど。それぐらいの効果あるぐらい工作員としてコラアゲンはいごうまん、いろんなことやってましたからね。このエピソードだけじゃなく」
角田「そうですね。ずっと追いかけてはって」
博士「最終的には東スポにまで載った」
角田「『週刊文春』を読んでる読者っていうたら1万人どころじゃないから、与えた影響力あるかもしれないですよね。そのコラアゲンさんの」
博士「角度っていうか、人を見る角度がコラムの中の誰かの人物評みたいなのって、少なからずやっぱ人に影響って与えますからね」
角田「ええ、ええ」
博士「石原慎太郎さんとボクなんてめちゃめちゃ親しかったですからね」
角田「一緒に番組なさってたんですよね」
博士「番組して、とりあえず石原さんから電話がかかってきて大承認受けたこともありますしね」
角田「そうですよね。「君の文体は三島由紀夫に似てる」って言われたんですよね、いきなり電話かかってきて」
博士「いきなり電話かかってきて「誰だ?」っていうのが一番面白いんですよ。自分がかけといて。それ面白いでしょ(笑)」
角田「オマエ誰だって(笑)」
博士「それは百瀬博教さんていう人の文庫の解説を読んで、そうおっしゃられたんだけど点にも昇る気持ちになりましたよ。ただその段階で三島由紀夫の本は読んでなかったから、単なる買いかぶりですけどね。それは百瀬博教さんは三島の影響を受けて書いてる文章だから、それを称揚する文章が三島文体に似たんだっていう話ですけどね。だけど『藝人春秋』シリーズの中に出てきますけど、石原慎太郎さんがある日オレのことを「シーッ!!」ってやったんですよ、寄るなって」
角田「あっち行けみたいな感じで」
博士「犬みたいな扱いしたんですよ。「どうしたんですか? なんでそんなことされるんですか?」って(聞いたら)、「オマエ、スパイじゃねぇかよ」って。「オマエ、東(国原英夫)のスパイだろ」って言われるんですよ」
角田「そのまんま東さんの」
博士「ええ。それが東京都知事選で東さんが立候補されるっていう時ですよね。その時にいろいろ身辺調査をしてスパイだっていう疑惑をかけられて、その瞬間に『藝人春秋2』っていうのは『007』に模したタイトルを付けてるんだけど、それがなかったらあんなタイトルにもならないし、ああいう設定もオレが思いつかないんですよ。で、芸能界に侵入したルポライターじゃなくて芸能界に侵入したスパイって書けば、新たな発展、文章としての発展があるなって気が付いてそこから始めてんですよね」
角田「『(藝人春秋)2』では石原慎太郎さんに対してもそうですけれども、大阪の政治状況に関してもなかなかああいう本で書いてるのって、大阪は特に少ないと思うんですよ」
博士「そうですよね。だから今回、(日本)維新(の会)がすごい躍進しましたけど。オレは一般的には維新への反対派みたいなのをあの本の影響もあるし、橋下(徹)(大阪)市長時代、番組共演した際に生放送で降板するっていう前代未聞の」
角田「『たかじんNOマネー』」
博士「事件を起こしてるからそういうふうに見られがちだけれども、基本的には政策的なことに関して大阪に住んでる人が“前より街は良くなってる”って、実感が沸く人が多いっていうことに関してはホントに認めてるんですよ」
角田「大阪であれだけ当選したということは、ボクも京都住んでるからわかんないんですけど、たとえば子育て政策に関しての成果があるんだろうなとボクも思うんですよ。ボクは維新は嫌いですけど」
博士「だけれども、その裏にある実感としてもたらされてることが、政治家とテレビ局との癒着であるというのはよくないことですよ。それを告発する人がいないんだと思って、自分が告発しているっていう本ですよ、あの本は。だから、やっぱテーマとして『死ぬのは奴らだ』っていうような。ボクは「死ね」って言ったことないんです、人に対してね。だけど、そこでその言葉を使うってことに躊躇があり、だからこそいろいろ言葉を尽くしてこのことに気が付いてくださいっていうメッセージを『藝人春秋2』、今文庫では『(藝人春秋)2、3』になってますよね。そこを発表して、4年を経てまた『藝人春秋Diary』。おもに起こってるのは2017年から18年にかけての60週の『週刊文春』に描いた掌編ですよね。それを繋いでると」
角田「今回の本は『(藝人春秋)2』は政治色が強い部分あったと思うんですけど、今回もさっき言ったような石原さんとか麻生さんとか安倍さんとか書いてることは書いてるんだけども、全体としてホントに人間賛歌」
博士「もちろん」
角田「かつ師匠のたけしさんのこと、疑似家族のことから今度は本当の家族のことを深く書いてらっしゃって。私もやっぱりその子供生まれて4年ぐらい経つんで、改めてこういう話を読むと」
博士「すべての人が思い当たる話なんですよ」
角田「そうなんですよ、はいはい。でもその中で博士さんの場合は特殊な疑似家族の部分があるんで、そこのオフィス北野のああいう」
博士「オフィス北野騒動で疑似家族が解体されていく中で自分の両親も亡くなるしっていうようなお話を、エンディングに向けて物語は収斂していく体を取ってますよね。だから読後感がすごくいいはずなんですよ」
角田「読後感良かったです。『(藝人春秋)2』はボクら関西の人間で博士さんの本で言うてほしいこと言ってもらったみたいな気はあるんだけれども、読後感で言うと読後感が決していいもんではない内容やったと思うんですけど、今回はホントに泣いてしまいましたね。ボクも自分の人生を博士さんに勝手に重ね合わせるところがあって、私も進学校で落ちこぼれみたいな。ほんで漫才を目指しみたいなことがあって。それはホントにボクは高校の時に、博士さんのラジオを聴いてて高校で留年されて、そんときにたけしさんのオールナイトに出会われてっていう話を聴いてて後を追ったような部分が自分の中で意識としてあるんで」
博士「疑似家族の芸界に入ったっていうのもあるしさ」
角田「まあそうですよね。徒弟制度に身を置いたっていうのもあるんで」
博士「徒弟制度に身を置いたっていうのは物語の中に身を投じるっていうことだから、言わば読者とかみんなを代行して自分の人生を生きてるっていう。芸人はみんなそうだから。そこに報いるために自分を照らしていかなきゃいけない、晒していかなきゃいけないんだっていう観念が強いよね。だからすべてを書かなきゃいけない。『藝人春秋2』の読後感が悪いとしたら、やっぱ唐突にオレが病気の話を始めるとかさ。ああいう自分を晒さなきゃ他人を書いちゃいけないっていうルールも強いんだよね、オレの中でね」
角田「読後感悪いというか、重たい」
博士「重いよね」
角田「重たすぎた部分があったのかなぁとは思うんですけど。ただ大阪、関西の人には是非読んでほしい内容で」
博士「そうそうそう。『藝人春秋2、3』また売れてきてるんですよ」
角田「今の政治状況も反映してるんですかね?」
博士「そうなんですそうなんです。だから読んだ人が「維新これだけ躍進してるけど、その影には…」っていう意味ではそれを書いた唯一の本はこれだから。読んでくださいっていう。神戸新聞系のジャーナリストはみんな書いてますけどね」
角田「松本…なんていう人やった…松本創さんですかね。橋下(徹)さんの本書いてて、その本もマスコミと維新との癒着というか、そのことについて言及されてた本あったんですけど」
博士「だから維新を作っているものと右派勢力、DHCとかああいうところの結びつきって見えないんですよね。だけど明らかに談合してるから、そこはね。ただその真意をテレビのスポンサーであるっていうだけで本当に見えなくしちゃうんですよ。だからそこに対するボクは抵抗は強いですよ、すごく」
角田「そこを博士さんがプレーヤーであり本来出る人やのに、そこを書くっていう乗り越え方っていうのは、ボクら違う業種の人間がラジオで言うのはまだ気楽に言えるんですよ。博士さんの覚悟っていうのが、こんなこと書かんでええのにっていうような」
博士「そうそうそう。結果的には本当に30年ぶりに地上波のレギュラーゼロになって、本当に仕事を干されるんだっていうのは実感としてあるし。あるけどオレは負けたわけじゃないっていうかさ、勝ち負けじゃないから。勝ち組負け組って言い方も嫌いだけど負けない組だから」
角田「負けない組」
博士「負けない組だから、自分でライブを作ってそれをテレビにするって毎週ライブをやって」
角田「『アサヤン』」
博士「自分で台本を書き、スポンサーを集め、そしてキャスティングもやりね。請求書領収書も自分で書き、それをやってんです。事務所まったく通さず。それは自分の中でできる、これは能力なんだっていうのを示したいんですよ。こんだけテレビ界にいて番組を作れるっていうね、週間の番組が。だからそういうことの契機にもなりましたけどね、今年で言えばね。結果的に博士なんかみたいなやり方をすると、損な目に遭うじゃないかってみんなに言われるじゃない。見てみろ、ああなっただろっていうの。それはやっぱオレは負けない組だから踏ん張るんですよね。で、理解者が出てくるんですよ、それは。だから99対1ぐらいになって負けてるように見えるかもしれないけど、1あるかぎり大丈夫だっていうのは思いますよね」
角田「ご家族いらっしゃって、そういう闘い方を選ばれるのはボクはカッコいいなとは思うんですよ」
博士「まあカッコ良くはないけどね。町山(智浩)さんも言ってたけど、とにかくそういうふうな仕事をしてる人が、「子供に恥ずかしくないのか?」ってオレたちが言うじゃない。そしたらオレの子供や奥さん、町山さんのお子さんも「家族をダシに使って言うの、やめて!」って(笑)。すげぇ怒られるっていうね」
角田「でもそれはホントに博士さんのお子さんがもっと年を重ねたら、お父さんのやってた意味っていうのがわかるはずやし。やってることの困難さというか、やれへんことをやってたってことを絶対わかるタイミング来ると思うんですよね」
博士「そうあってほしいと思うよ」
角田「ボクが中学の時からラジオを聴いてた浅草キッド。若い…当時博士さんまだ30(歳)になるかならへんかやったと思うんですけど、その人が今60(歳)前でやってる闘い方が内容は変わってますけど、姿勢は変わってないなっていうファイティングポーズが。そこはボクは嬉しいし」
博士「まああれだよね。リングの中にいる意識、あるんだろうね。そういうのはね」
角田「ずーっと闘ってらっしゃるのが」
博士「あと人に見せようっていう意識がね」
角田「これ1曲、博士さん」
博士「はい」
角田「曲振りお願いします」
博士「アナーキー『春のからっ風』です」
博士とのトーク②
角田「今夜の『蛤御門のヘン』は水道橋博士さんにお越しいただいております。『藝人春秋Diary』のことを聞かせていただいてるんですけれども」
博士「はいはい」
角田「博士さんが」
博士「うん」
角田「この本の中で最後に古舘伊知郎さんが出てこられて、先程話してた「人生の予告編」ていう言葉を使ってて。その中で古館さんが自分の最初のプロレス観戦体験が小学生の時に後楽園ホールに観に行って、その時にアントニオ猪木が「今度の川崎大会に来い!」って絶叫してるのを古館少年は自分に言われたと思って。で、テレビ朝日のアナウンサーになって研修で行ったのがプロレス中継の川崎市体育館で、あの小学校の時の思い出は自分の予告編やったんやっていうような話が。古館さんがなさってて、そのことを引用されてるんですけど。でもそのあと、最近また、先程おっしゃってた『アサヤン』ていうイベントの中で、実は古館さんが初めてプロレス観に行った時、後楽園ホールですかね? 小学校の時に行った時はアントニオ猪木はアメリカ遠征中でその時いなかったはずやっていうことを、博士さんあるいは一緒に年表を作ってらっしゃる相沢(直)さんが暴いて(笑)。やっぱり人間ていうのは、あとからあとから自分で話を紡いでいく時に改ざんする部分があるという話をしてはって」
博士「STAP細胞ありませ~んていう」
角田「口先の小保方晴子やって、自分で言うてはりましたけども。博士さんはないんですかね?」
博士「あるあるある」
角田「ストーリーを紡いでらっしゃる部分で、ボクの中のずっと昔からラジオを聴いて思ってるのは、青春時代に挫折をしてそこでお笑いに救われて、たけしさんに救われてそのたけしさんに会いに行くという話の中で、いろいろ読んでると学生時代に映画館でアルバイトしたりとか積極的な一面もあったわけですよね?」
博士「殻にこもってるだけじゃないってことでしょ」
角田「そうですよね」
博士「サブカル的な。映画館には行ってるし」
角田「投稿とかもなさってたわけですよね」
博士「そうそうそう。『キネマ旬報』に16歳で投稿して載ったりしてますからね」
角田「すごいですよね」
博士「それはたけしさんが現れる前に、ルポライターになりたいっていうのもあったし、長谷川和彦とか森田芳光のところに行って映画を作りたいみたいなことも思っていて、その具体的な行動としてはやってた。あとプロレスの編集者になりたいっていうので、『ビッグレスラー』の編集部にものすごい長い投稿をしてたことがある。よくこんな投稿来て驚かなかったなあって、向こうがね。ていうぐらいのがありますよ。それも全部取ってあるとこがすごいですから」
角田「すごいですよね」
博士「すごいっていうか手紙を、普通もらった手紙を取ってる人っていうのはたまにいるよね。オレの場合、自分が出した手紙を全部コピーを取ってるっていう」
角田「投稿した記事も全部残してらっしゃるということですよね」
博士「うん。それが残ってるのが強みだよね」
角田「博士さんにしても、みうらじゅんさんとかでもそうじゃないですか。昔の学生時代(のものを)ずっと残してらっしゃるじゃないですか」
博士「たとえば高田文夫先生とFAXのやりとりを…今オレ、FAXを残してる理由って高田先生からのFAXが来るからだけなんですよ」
角田「高田先生、FAXなんですか、いまだに?」
博士「FAXなんですよ。そのFAXだけで20年分の高田先生のFAXが全部あるから、それだけで本ができるんですよ」
角田「できますよねぇ」
博士「できる。それぐらい紙もの、文章もの、思い出に節度がないんですよ」
角田「ホンマにその、あっそれは百瀬さんの言葉なんですか?」
博士「百瀬さんの評された言葉。思い出に節度がないんだよね」
角田「というか博士さんの作品読んでると、その言葉がホントに。思い出に節度のない人なんやなっていうのが」
博士「そうそうそう。あと「明日は明日の風が吹く」んじゃなくて、「明日は昨日の風が吹く」っていうふうにオレは思ってるから、だから過去はすごく大事なんだよね。過去があって自分があるっていうふうに、過去へ過去へ遡って物語を書こうとするよね」
角田「この『藝人春秋Diary』も日記形式で2017年当時の話から始まるんですけれども、すぐに過去の記憶を糸を手繰り寄せてっていうような形で。それは日記をずっと付けてらっしゃるとともに、博士さんの場合は映像として残ってる感じなんですか? あまりにも再現度が高い気が。私は現場を見てないんですけど、昔の現場の描写とかがおそらくホンマにこの通りなんだろうなっていうような表現なんですよね、いつも」
博士「だけどまああれだね。再生、テレビで映ってるものは訴訟リスクがあったから『藝人春秋2、3』に関しては、もう1回全部を観直して(メモを)取ってるんですよ。だから再現力はそれは高いです」
角田「もう1回観直してるから」
博士「だから照英の話なんかも普通に聞いたら、普通にホラ男爵の冒険じゃないですか。だけどそれは実際に現場のテープを観てるんですよ。だからすごく正確に書いてます」
角田「照英さんのって、読売テレビの番組で」
博士「いろんな番組の(ロケに)行ったのですね」
角田「それで読売テレビの中嶋(信之)さんていう人がディレクターじゃなかったですか?」
博士「かもしれない」
角田「それ多分ね、ボクは博士さんの日記を読んでるからその記憶があって、読売テレビに今たまに出てる時にそのプロデューサーが中嶋さんていう人で」
博士「そうですそうです。焼酎持ってきてくれた人ね」
角田「で、その人に「もしかして博士さんと照英の番組のディレクターの中嶋さんですか?」って(聞いたら)「ああ、そうです!」みたいな。だからそういう繋がり方もボクは勝手に博士さんの日記に便乗してるだけなんですけど、あったりもするんですよね」
博士「そうね。そういうのも事細かく人の名前も。共演者の名前でワンオブゼム書かないじゃないですか。ああいうのも全部書くようにしてますからね。フックを作っていると結構あれですよ、蘇えるもんですよ」
角田「いろんなとこに張り巡らされてる感じですもんね。芸能界入ってから、あるいは入る前の記憶もそうですけど。その入る前の記憶も岡山の劇場でアルバイトなさった時の話とかも出てくるんですけど。ホンマに「思い出に節度がない」っていうの、過去に後ろ向きなんてマイナスに言われがちですけど博士さんのこの本読むと、やっぱ過去があるから大事やしそれをずっと覚えてることが」
博士「それはだけど本当に一日一生の積み重ねだと思ってるんだよね。一日一生って古館さんの座右の銘なんだけど、本当にそう思って古館さんも生きられてるんだなって思うし。最近の古館さんの異常度がオレは面白いんだよね。なんであれだけ世田谷に10軒、家買えるほどのさ収入を得た人がさ、今地方ずうっと回って『(古舘伊知郎)トーキングブルース(2021)』2時間しゃべるのやってるんですよ」
角田「地方公演、行ってはるわけですもんね」
博士「そう。なんかね、それは本当にプロレス興行で地方を回ったあの記憶をもう一回呼び起こして、あの観客に会いたいんだっていう気持ちだと思うんだ。功成り名を遂げて、もう引退してもいいはずなのに」
角田「そうですよね」
博士「お金もある、子供たちも独立してるっていう状況で。なのに、そこを得ようとする気持ち。もちろんアントニオ猪木っていうものが狂わせてる人生があるんだけど、そこに宿ったものってそういうもんだなって思って、そこを追っかけてるオレっていうのもいるんだけどね。今年(『古舘伊知郎トーキングブルース2021』に)4ヶ所行くからさ」
角田「古館さんの公演にですよね」
博士「地方も行くんですよ」
角田「ネタを変えてるっていいますもんね」
博士「変えてる変えてる」
角田「ご当地ネタを入れてっていうような」
博士「それで古館さんは『芸人春秋(Diary)』の主人公をオレだとしたらサブの主人公で、串刺しにするために古館さんって4ヶ所出てくるんですよ。だから前半から出てきて古館さんがいろんなことをしゃべってるんですよ。それが最後に古館さんが語り部なのにオレの語り部にされているっていう構造を作ってるんですよ。そこが面白さのひとつだと思ってんだよね」
角田「そうですよね。古館さんに語る中で博士さんの『ファミリーヒストリー』の話になっていって。でもびっくりするのは、博士さんの奥様のおばあさんが実はたけしさんのお母さんの北野さきさんとずっとお隣同士やったという」
博士「隣同士。意図的に隣同士なんですよ」
角田「なんですよね」
博士「それはホントに驚くし、それを知って結婚してんだったらあり得ますよ」
角田「そ、それもあり得ないですけど…」
博士「あり得ないけど」
角田「結果的にあとからそうやったとかっていうのは」
博士「そうそうそう、そう。だけどあれはまさにオレが発掘をしてるからですよ。そこの糸をたどるからですよ。この結果になっている糸の端緒はどこにあるんだっていうのを調べようとするからわかるんですよ。だから『ファミリーヒストリー』観ても、その家系図を作ってお葬式の時にみなさんにこの話を聞かないじゃない」
角田「奥さんのおばあちゃんのお葬式で、それをされたわけですよね?」
博士「そうなんですよ。それでその家系図を持って一人ひとりに(笑)」
角田「一人ひとりに(笑)」
博士「これどういうことですか?」
角田「教えてくださいって」
博士「聞いて、すんげぇー、ホントだったって思って。たけしさんに呼び出しがあって、その家系図を持ってすごいことわかりましたよって言うつもりで(たけしの自宅に)入ったら、そこに森(昌行)社長(当時オフィス北野)が呼び出されていて」
角田「オフィス北野のお家騒動の」
博士「始まりだったんですよ」
角田「始まりやったんですね(笑)。そんなこと知る場やなかったってことですね」
博士「そう! 1回もそれ開かないままずーっと」
角田「ちょうどお家騒動の時なんですね。前来ていただいた時が『蛤御門のヘン』に。あの最中で」
博士「そうそうそう。まあ前回の(放送)は楽しかったですよ。京都行ってね、若手(マッハスピード豪速球・ガン太とシェパード太郎(現マーシー))と」
角田「車で来られて」
博士「車で行ってね。いやぁ~面白かった。ああありたいね、あの時の気持ちでありたいなと思うよ。“よし京都行こう、車に乗って”って、みんなで行ってね。あれでオレはホントは歩いて行きたいね、今だと」
角田「今ずっと朝、歩いてらっしゃいますからね」
博士「『東海道中膝栗毛』をやりたいって気持ちがすごいんですよ今。だからすごいヒマなヤツを、たとえば弥次喜多道中みたいなので珍道中を繰り広げながら目的地に向かうっていうのをやりたいですね」
角田「1曲また紹介していただきますでしょうか」
博士「はい。え~遠藤賢司『東京ワッショイ』です」
博士とのトーク③
角田「今夜は水道橋博士さんにお越しいただいております。いろいろメールもいただいてるんですけども」
博士「あっ、メールぜひ」
角田「はい。こちらにしましょうかね。沖田虎丸さんからいただきました。大阪府、男性40代の方です。
【俳優で弁護士の角田先生、わんばんこ。そして高校生の時に『浅ヤン』のヒッピーヤッピーのコーナーを観て以来、大ファンの水道橋博士がゲストと聞き、おメールをいたしました。昨日、紀伊國屋書店で新刊本の『藝人春秋Diary』を購入し、寝る前に数ページだけ読んで寝るつもりがその濃厚なエピソードの数々に頭が冴え渡り、気が付けばもうこの時間に寝ないと明日は遅刻するタイムリミットまでページをめくる手が止められませんでした。博士は書かれる対象の人物をどういった基準で選ばれるのか、もしよろしければお聞かせください。そしてコメディNo.1の前田五郎師匠がお亡くなりになりましたが、博士に早く取り上げてほしい上方演芸界のレジェンドがたくさんいらっしゃいます。機会があれば書いていただきましたら、関西在住の我々リスナーは嬉しいかぎりです】
ということでいただいてるんですが」
博士「本を読むうえで書評は数々やってるんだけど、「巻を措く能わず」っていう言葉を使うのがオレの中の最高級の褒め言葉なんですよ。要はもうホントに止まらないっていう。この本何章にも60人の人を描いているから、フック「その後のはなし」を入れながら今と通じるようにして全編物語として読めるようにしてるっていうのは、そういう意図もあるんだけど。週刊誌の連載だったから常にネタが入ってくるんですよ。そっから応対するっていうのがあって、たとえば太川陽介さんの話なんていうのは太川陽介さんの奥さんの話が『(週刊)文春』に出てるからそっからスタートしていって」
角田「バス乗って不倫行ってたみたいな話ですよね。『路線バスの旅』」
博士「太川陽介からぶっちゃあさんにいって蛭子能収さんにたどり着くっていう、なかなかめちゃめちゃトリッキーな3本なんですけど。ああいうものでいうと、本当に5本ぐらいは先回りのやつを江口(寿史)さんに渡してるんですよ。次はこれを描くつもりだっていうのを、ざっと書いたやつをね。それで常に20人ぐらい置いてるんですよ。この人描けるかも描けるかもっていうのは。そういう書き方を週刊誌だからやってますね」
角田「前もって準備しつつ、イレギュラーな時事ネタは入れていって入れ込んでっていう」
博士「一番印象的なのはこの本じゃないけど、藤圭子さんが亡くなった時は前日に入れ替えて文面全部書きましたね」
角田「書いてらっしゃいましたね」
博士「あれは江口さんも驚いたって。こんなタイミングで文章書けるはずがないっていうのでね。それを博士が書いてきて、オレもすごいと思って描いたって言ってましたね。週刊誌だから自分としては出版社に泊まり込んでも入れるんだっていう、そういう気持ちありますね。ルポライターをやりたかった気持ちがあるから、その次の号に合わせてギリギリまで取材のものを入れて、最後に入稿するっていう意識はすごくあってやってた連載ですよね」
角田「関西の上方演芸界の人を書くとすれば。関東の人が多いかと思うんですけれど」
博士「(笑福亭)鶴瓶さんが入ってるかな」
角田「鶴瓶師匠が入ってますよね」
博士「鶴瓶師匠の話もすごいでしょ?」
角田「すごいですよね」
博士「ウチの母親方の」
角田「ご実家ですよね」
博士「実家を最初にCMに使ったんだっていう」
角田「鶴瓶さんが最初に出たCMがそこやったってことですよ」
博士「だから我が家ではみんな「つるべ、つるべ」って呼び捨てだった」
角田「(家をCMで)使ってるわけですからね」
博士「そうそうそうそう」
角田「この本が出た後に、私が(オール)巨人師匠と」
博士「巨人師匠もこの中出てきますから」
角田「出てくるんですよ。巨人師匠はたけしさんと博士さんとの関係性のことを書いてらっしゃった時に」
博士「『週刊プレイボーイ』ですね」
角田「『プレイボーイ』の巨人師匠の連載の中で、「たけし軍団の気持ちがわかる」っていうようなことを」
博士「あれはありがたい文章でしたよ。救われたし、殿にもご報告したし、御礼を言っといてくれっていうふうに言われましたよ殿に」
角田「「弟子というものは師匠のために死ねるもんや」っていうような。巨人師匠もずっと岡八朗さんの弟子の時、そういうふうに思ってたっていう」
博士「そういう文章でしたよね」
角田「それをボクはいつも弟子の時に言われるもんやから、そのプレッシャーがすごくて」
博士「はっはっはっはっは」
角田「ミナミ歩いてる時に明らかにややこしい人とかが向こうから来たら、「お願いやから絡まんといてくれ」っていうのがありましたけど(笑)。この本出た時にちょっと師匠とやりとりした時があって、「この本に水道橋博士さんが師匠の『プレイボーイ』の連載のことを言及なさってます」って言って写メ撮って送ったら、「水道橋君に御礼言うといて」って。水道橋君って言うんやっていうのが驚きやったんですけど(笑)。やっぱり徒弟制度に身を置いた人しかわからん感覚っていうのは、確かにあるんでしょうね」
博士「それはあるでしょうね。だってダウンタウンなんかはもう徒弟制度じゃないわけですからね」
角田「そうですよね」
博士「だからそういう意味じゃ、ボクら最後の徒弟制度世代でしょうね。愛着があるんですよね、徒弟制度にね。そうやって本当に家出して、あのぉ…違う世界に生きるんだっていう感覚ですよね。それはだから、オウム(真理教、現Aleph)とオレたちが変わらないみたいなの、こないだ上祐(史浩)との対談の中でね」
角田「上祐さんと対談なさってましたね」
博士「その世界観を伝えたけどさ。「いやぁ~博士さんはあれですよ。たけしさんで良かったですよ」って言ってました。フライデー(襲撃事件)止まりじゃないですか」
角田「まあまあまあねぇ。博士さんがこういう原稿書かれる時っていうのは、最初にオチまで頭の中で構想されてから書かれるのか。あるいはこのテーマで書こうと思って書き出してから書きながら変わっていくのか」
博士「いやオチは決めてるなあ。漫才と一緒ですよね。漫才って絶対オチから作るから。オチを作ってそっから前振りを作っていくんで。一番わかりやすいの松居一代の章ですよ、蔵書一代のやつ」
角田「そうですよね」
博士「どういうこれ展開すんだろうって、松居一代っていう最後の1行を書きたいから蔵書一代を」
角田「そのへんはなんて言うのかな…」
博士「これは漫才師の習性ですね」
角田「漫才師でもいろいろありますよね」
博士「まあ、そうか」
角田「ネタからテーマを決めて入っていって、オチ何にしようって人もいると思うんですけど。博士さんの場合、確かにもう数式のような」
博士「もちろんもちろん。因数分解的なやり方をしてますね。いつもしてますね。こういう面白いことあったら“面白いことあったな”じゃなくて、“前振りどうしよう?”っていうのをずうっと考えていますね」
角田「はいはいはいはい。1冊の本として繋がってはいくんですけど連作的に。1個1個のエピソードが全部振りがあってオチがあってっていう」
博士「振りがあってオチがあって、さまざまな韻を踏んでいくっていう。その韻を踏んでいくって漫才師の特徴ですからね。漫才って何でできてるって韻でできてるから。言葉を韻を踏み合いながら語ってゆくからリズムができてるんで。だから韻を踏むことと行動で韻を踏むっていうのもやるんだけど、行動で韻を踏みながら物語にリズムを与えてるっていう作り方をしてますよね」
角田「韻の踏み方が執拗ですよね。ヒップホップの感じですよね。まさしくそれを文章で、文でやってらっしゃるっていう感じが」
博士「だからもうO倉さんなんて迷惑極まりないと思うよ、オレが」
角田「あのO倉さんのは、前の『藝人春秋』でも書いてらっしゃいましたけど」
博士「カミだのヅラだの髪ングアウトだの、とにかくもうその言葉を」
角田「“毛”という言葉が映えるようにね」
博士「それをだって200個ぐらい書き出してからやってますからね」
角田「その因数分解というのは…やっぱり因数分解必要ですよね。O倉さんをどんだけそれにたとえれるかとかいうのも因数分解の発想が無いと、できないわけですもんね。O倉さんとかに対する面白がり方っていうのは、ボクちょっと気になるのが今の時代って言わば、これもひとつのルッキズムとか話になっちゃう可能性があるわけじゃないですか」
博士「もちろん。なっちゃうからO倉さんからも苦言を呈されてるし」
角田「あ、苦言呈されてるんですか?」
博士「呈されてますよ、『(週刊)文春』で。それも10数年前に呈されてます」
角田「あ、そうなんですか」
博士「カツラ・ガンガン・バラすっていうカツラKGBの存在意義自体を疑う人がいるんだけど、オレのね活動はカツラの人を見て笑うんではないんですよ。カツラを女性のウイッグのようにしたいだけなんですよ」
角田「もっとポピュラーな」
博士「ポピュラーにしてメガネをかけるようにカツラを」
角田「気楽に」
博士「着けるような世の中にしたいっていうのが主目的ですよ」
角田「主目的はそこにあると」
博士「と言うより、カツラさん、カツラ師匠の方がこちらに対する威圧を与えているっていう」
角田「そうですよね。いろいろ忖度を」
博士「忖度を与えている」
角田「与えますもんね」
博士「だからそういうのを無い社会にしましょうっていう、進歩的じゃない?」
角田「まあそうですよね(笑)」
博士「竹内義和さんみたいになってます、オレ? 考え方と話法のね、切り口が。そう思いません?」
角田「だからカツラに関して言うと」
博士「そうですやろ?」
角田「うんうんうん(笑)。竹内先生だったら言いそうですけどね」
博士「言いそうですよ。(竹内義和のものまねで)世の中の人はボクがね悪口を言ってるかのように思うかもしれませんけど、ボクは悪口じゃないんですよ、これ」
角田「竹内さんの言う「心の無い人はこういうこと言うかもしれませんけど」っていうね」
博士「(さらに竹内義和のものまねで)ボクはね、もっとより良い世界の先の世界を言ってるその人たちより進歩的なわけですよ。でしょ?」
角田「でもね私は学生時代から、浅草キッドのお二人は不謹慎であってほしいんで、もうこういうことをずっと言い続けていただきたいんですよね。昔からずっと言ってらっしゃるわけやから」
博士「でも、だんだんだんだん言えなくなってくるよね」
角田「う~ん…」
博士「うん。今回の炎上問題もなんだろう、そのぉ…きっちりした人が言っているきっちりとした反論はなるほどって思う時あんのよ。サシャ・バロン・コーエンがいかに学歴があって年収があるかっていうことの評価を博士はやっているが、それこそが権威主義じゃないかって言われると「そうかも」って思うよ。サシャ・バロン・コーエンを盾にするっていうのは、おかしいっていうことだよね。欧米のそういう道化の考え方そのものなんだけどね。日本に無かったかっていうとあるから。あったから。町山さんが言うように失われたものだからね、その精神が。だから時代とともに忖度を優先し、他人が表社会と裏社会をまた作ってるよね。SNSの世界と匿名で本音を言ってもいいっていう世界をさ。でも、そうではない側ですよね、オレの場合はね」
角田「う~ん」
博士「役割がある。芸人の役割はその役割で、目的は笑いなわけだから。笑いのすごいのはスベってるところも笑いだから。「太田光、空回りしてるなぁ~」って面白さだからさあ。だから大意として広いと思うんだよね」
角田「すごい広い概念ですよね、お笑いって」
博士「概念上は広いですよ。笑いの概念が広い人は、他人に対して怒らないじゃないですか。「てめぇの態度、礼儀知らずを考えろ。死ね!」とか言わないじゃないですか」
角田「そうですよね」
博士「そうなんですよ。だからそういうことを言ってくる人も面白いと思って、今しゃべれるわけじゃない。怒ってないじゃないですか。お笑いっていうのは、すべてを吸収してると思うんですけどね」
角田「その面白がるっていうことで言うと、樹木希林さんの章の「その後のはなし」のとこで書かれてる
『樹木希林が亡くなる前にボクに言った。
「あなたに言っておくけど、お仕事はねぇ、楽しむんじゃないのよ。
面白がるのよ! ツラいことでも自分から面白がる!
火中に栗を探すようになってからのほうが面白いんだから」』」
博士「名言ですよね」
角田「この名言は本当にボク読んでて、自分の仕事もそういうこと思い出して、そうじゃないとあかんなっていう」
博士「樹木希林さんって実際、みなさん名女優の老後の印象しかないけど、若い頃からすごいですからね。起こしてる事件の数々たるや」
角田「そうですよね。本に書いてらっしゃいましたけれども、ドラマの打ち上げで」
博士「演出家の…うん、女優に手を出して孕ませたことを急に」
角田「急に言って、その人が会社にいれなくなったりとかっていうことを重ねてきはった人なわけですよね」
博士「そう」
角田「その方(樹木希林)が亡くなる直前に博士さんと交流なさってて」
博士「しかもあれですからね。竹中労に関してですからね。一番最初のオレの志の人と通じて結び合ったわけだから」
角田「そうですよね。そういう言葉の、今のような言葉のこういうやりとりがあって。それがまた本になって残ってっていうのは、博士さんのおっしゃってる文で繋がるっていうことの」
博士「あと文で繋がるっていうことは、この本が残るってことだからね。オレは死んじゃうけど。そうやって残していけるっていうのは、「本はバトンだ。芸がバトンだ」って同じことでね。そのために本ってあるんだって思うし」
角田「『藝人春秋Diary』スモール出版から絶賛発売中でございます。2,500円と税ということになっております。最後、曲お願いいたします」
博士「はい! 『翼の折れたエンジェル』中村あゆみです」
エンディング
角田「『角田龍平の蛤御門のヘン』あっという間にエンディングでございます。今夜は水道橋博士さんにお越しいただきまして、東京収録ということで90分たっぷりお話を伺いました」
博士「もっとしゃべってるよ」
角田「ホントはもっとしゃべってるんですけど(笑)。ウンコチンコの話とかが放送されてるかどうかは」
博士「いやいやもう、なんか残してくださいよ。面白く語るから」
角田「はい。いろいろお話お聞きできて良かったです」
博士「ええ、とんでもないです。またぜひぜひ呼んでください」
角田「私のホンマの「人生の予告編」ていうのが高校生の時、初めて聴いた」
博士「そうだよね」
角田「ラジオが、博士さんのラジオを聴いた時のそっから30年ぐらいってホンマにちょうど経ってるわけで」
博士「ホントだよねぇ」
角田「そうなんですよ。こうやってご一緒できることがホントにもう嬉しいっていうか、もうホント感謝しかございません、はい」
博士「はい」
角田「来週は花房観音さんがゲストにお越しいただいて、電話でNegiccoのMeguちゃんが出てくださることになってます。ディレクターにも言ってなかったんで、今ビックリしてますけど。花房さんの『鳥辺野心中』という小説の文庫本の解説を私が書いておりますんで。それが11月の10…何日やったかな? 17か18ぐらいに発売されるはずなんで、そちらの方も(※注:2021年11月17日が発売日)」
博士「あの人もすごい文章家だよね」
角田「そうですね。また読んではりますからね。今夜はホントありがとうございました」
博士「ありがとうございましたー!」
角田「この番組は京都の不動産・株式会社さくらの提供でお送りしました。では来週もお聴きください。せーのっ」
角田&博士「はまぐりはまぐり」
博士「バイビー!って言いそうになっちゃった」
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