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東北地方のとある街に移住し、読書だけを生き甲斐として、静かで穏やかで古代ギリシア人みた…

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東北地方のとある街に移住し、読書だけを生き甲斐として、静かで穏やかで古代ギリシア人みたいな毎日を生きる(のが希望の)M.K.です。海外文学・SF・文化人類学・山岳小説といったジャンルを好んでいます。好きな作家はテッド・チャン、宝樹、カズオ・イシグロなど。

最近の記事

原爆の日、文学の力

今日は79回目の広島原爆の日、広島の街に最初の原爆が落ちた日。 今年6月に広島に行ったとき、それは単なる観光だったけども、10年近くぶりに原爆資料館に入った。 最後に資料館に入ったときから何度か展示内容が変わっていることは知っていたけど、「ああ、昔この展示見たな」という感覚がほとんどなくて、 だから多分ガラッと変わったんじゃないかと思った。 昔は重度の火傷を負って、腕から皮膚が垂れ下がった女性の蝋人形があって、今でも原爆と聞くとまず真っ先にあの人形が思い出される。 その人

    • 【映画レビュー】ホロモドールを暴露した記者の正義

      こんにちは。 最近資格の勉強が忙しくて記事を書けていませんでしたが、煮詰まってきたので気分転換に簡単な映画レビューでもしてみようかなと思います。 かつては私もアクションやSF映画を好んで観ていたのですが、読書に選ぶ本が海外文学に接近していくにつれて、観る映画のジャンルも変化しているなと感じます。 文学も映画も繋がっている。文学作品のココが気に入らない、となれば、自動的に映画の好みにも反映される気がします。 具体的には、最近典型的なハードSFに胃もたれするようになって、積

      • 第4回梅屋敷ブックフェスタ行ってきました!

        6月22日に東京 梅屋敷の仙六屋カフェで開催された「海外文学翻訳家が集う本のイベントーー第4回梅屋敷ブックフェスタ」に行ってきました。 このイベント、参加されている翻訳家の方々があまりにも豪華で、はじめTwitterで告知を目にしたときは我が目を疑いました。 柴田元幸さん(英語圏文学) 岸本佐知子さん(英語圏文学) 斎藤真理子さん(韓国文学) 白水紀子さん(中国語圏文学) 星泉さん(チベット文学) 阿部賢一さん(中東欧文学) こうした著名な翻訳者の方々が、それぞれブース

        • 【書籍紹介/海外文学】ポストアポカリプトの究極のかたち『ザ・ロード』(ショートバージョン)

          こんにちは。 今日は、私の大好きな作品、たぶん死ぬまで忘れないだろう作品を紹介します。 『ザ・ロード』 コーマック・マッカーシー とにかく凄まじいものを読んだな、という読後感でした。 同じ著者の『ノーカントリー・フォー・オールド・マン』も凄まじかったですが、それと全く遜色ありません。 徹底的に細部まで描写された荒廃世界、ご都合主義や「ぬるさ」の一切ない完全無欠の絶望、そのなかで、今にも吹き消されそうなほど頼りない小さな生命を守り抜こうとする父親と、その無償の愛情を良心に置

        原爆の日、文学の力

        • 【映画レビュー】ホロモドールを暴露した記者の正義

        • 第4回梅屋敷ブックフェスタ行ってきました!

        • 【書籍紹介/海外文学】ポストアポカリプトの究極のかたち『ザ・ロード』(ショートバージョン)

          【書籍紹介/海外文学】転生モノの元祖、カフカの『変身』(ショートバージョン)

          こんにちは。 今回紹介する作品は、もはや紹介するまでもないほど有名な作品ですので、がんがんネタバレありで書いていきます。 『変身』 フランツ・カフカ 青空文庫って、ダウンロードするときは楽しいのに、なかなか読み始められないんですよね。 読み始めたきっかけはメルヴィルの『バートルビー』なのですが、それとはまた別に、『博論日記』というバンドデシネを久しぶりに読んだこともきっかけでした。 ティファンヌ・リヴィエール『博論日記』 物語は、パリに住む非常勤の中学校教師をしてい

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          読書が苦手な方に本を薦めるなら、何がいいんだろう?

          苦手な人に薦めるなよ!とは思うんだけど、でも「何から読めばいいですか?」と聞かれたとき、どんなふうに答えればいいんだろう? 実は最近そういう事があって、「何から読めばいいですか?」と聞かれたときに、咄嗟に答えたんだけど、本当にあれで良かったのかちょっと悩んでいる。 苦手なのに挑戦しようとしてくれている事が嬉しくて、本気で答えたいと思ったんだけど、思いが強すぎて冷静に考えられなかった気がしている。 まず、「読書が苦手」という事が本当に分かってるのかな、私。 文字情報の取得

          読書が苦手な方に本を薦めるなら、何がいいんだろう?

          室越龍之介さんの「会津でLe Tonneau」参加してきました!その②

          こんにちは。 かねてより「コテンラジオ」や「どうせ死ぬ3人」などのポッドキャスト番組を拝聴させていただき、密かにファンをさせていただいていた Le Tonneau 室越龍之介さんが、なんと会津 下郷町で「世界史」と「人類学史」の講義を2日にわたって開講されたので、参加してきました。 もともとコテンラジオが大好きで、基本的にドライブ中はずっと流してるくらいなのですが、ある日レヴィ=ストロースという個人的に大好きだった文化人類学者をコテンラジオが取り上げ、しかもそれを担当したの

          室越龍之介さんの「会津でLe Tonneau」参加してきました!その②

          室越龍之介さんの「会津でLe Tonneau」参加してきました!その①

          こんにちは。 かねてより「コテンラジオ」や「どうせ死ぬ3人」などのポッドキャスト番組を拝聴させていただき、密かにファンをさせていただいていた Le Tonneau 室越龍之介さんが、なんと会津 下郷町で「世界史」と「人類学史」の講義を2日にわたって開講されたので、参加してきました。 もともとコテンラジオが大好きで、基本的にドライブ中はずっと流してるくらいなのですが、ある日レヴィ=ストロースという個人的に大好きだった文化人類学者をコテンラジオが取り上げ、しかもそれを担当したの

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          【書籍紹介/海外文学】在日コリアン4世代にわたる大河ドラマ(ショートバージョン)

          こんにちは。 突然ですが、私は大阪出身で、ご近所さんにとても仲の良い家族がいて家族ぐるみでお付き合いがあったのですが、ご夫婦で名字が違っていて子どもながらにちょっと不思議に感じていました(いまでは割と普通かもしれませんが)。 そのご家族は在日コリアンで、コリアンは夫婦でも妻と夫で姓が違うのは当たり前なんだということを、その時学びました。 私達家族は、そのご家族と一緒に「ハギ・ハッキョ」や「チュギ・ハッキョ」といったコリアン文化のお祭りに連れて行ってもらっていました。 もう忘れ

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          【書籍紹介/韓国文学】韓国フェミニズム文学の金字塔(ショートバージョン)

          こんにちは。 今回は初めてフェミニズム文学を紹介しようと思います。 はじめに私自身の立場を表明した方がフェアかなと思うので、ちょっとだけ書かせてください。 私は女性ですが、女性が世界を主導すればそのまま世界平和が訪れるなんてことは全然思わないし、むしろ”女性性”をことさら特別視するのは疑問です。自分から意識しなければ、性別の事なんか全然気にせず生きていける世の中が理想かなと思っています。 それでもフェミニズムには共感を抱いています。 私の祖母も母も性別を起因とする問題にぶち

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          【書籍紹介/旅行記】「和平解放」後の知られざるチベットの姿(ショートバージョン)

          こんにちは。 今回は初めて旅行記を取り上げたいと思います。 舞台はチベット、それも漢民族である著者の目から見たチベットです。 個人的なことですが、一人で中国内陸部を気ままに旅行するのが長年の夢で、コロナ前には前哨戦として上海とハルビンを一人旅しました。 特にハルビンにはロシア文化の気配を期待して行ったのですが、有名な中央大街などは完全に観光地として”キッチュ”化していたし、日常生活が感じられるかもと期待して行った中洋折衷建築の街は、そのほとんどが再開発地区に指定され、バリケ

          【書籍紹介/旅行記】「和平解放」後の知られざるチベットの姿(ショートバージョン)

          【書籍紹介/日本文学】未完が悔やまれる織田信長論(ショートバージョン)

          最近アサクリ界隈が炎上していてタイミング的に何だかな、という感じですが、今回は初めて日本文学を取り上げてみようと思います。 私自身ゲームはあんまりしませんが、映画鑑賞代わりにゲーム実況を見ることがあって、しかも歴史好きなのでアサクリは結構期待していました。 というのも Rise of Ronin が思ったより時系列が混乱していてファンタジーだったので、アサクリの方に時代考証を期待していたからですが、そもそもゲームに史実のリアリティを求めるな、という話ですかね。 でもハリスの

          【書籍紹介/日本文学】未完が悔やまれる織田信長論(ショートバージョン)

          【書籍紹介/中国SF】中国SFの火付け人、ケン・リュウのエンタメ電脳世界!(ショートバージョン)

          こんにちは。 突然ですが「間テクスト性」という言葉があります。全ての作品は相互に影響しあっていて、一つの作品を読むときに別の作品を連想したり、著者同士の影響関係を確認したり、そういった性質のことを指す言葉ですが、読書をより豊かにするためには「間テクスト性」が欠かせないと私は考えています。 この性質を最大限楽しむためには読者の側にリテラシーが必要ですが、これを獲得するための近道は、古典文学や著名な作家の文学作品をたくさん読むこと。なので今まで海外文学を中心に読んできたわけですが

          【書籍紹介/中国SF】中国SFの火付け人、ケン・リュウのエンタメ電脳世界!(ショートバージョン)

          【書籍紹介/海外文学】『外套』――世界三大虚無文学(ショートバージョン)

          こんにちは。 思いのほかショートバージョンが気楽で取り組みやすくて、なるほど、こういう感じでnoteを続けていけばいいのかと一人勝手に了解しています。 そのうちきちんとした分量の記事を書くつもりではいますが、しばらくはこの形で行こうと思います。 というわけで、今回もショートバージョンです。 『外套』 ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ いわずと知れたロシア文学の傑作短編です。 有難いことに青空文庫に入っているのでタダで読めますよ。 以前noteでメルヴィルの『バート

          【書籍紹介/海外文学】『外套』――世界三大虚無文学(ショートバージョン)

          【書籍紹介/海外文学】"香り"によって操られる群集心理(ショートバージョン)

          こんにちは。 朝晩の寒暖差が激しすぎて東北が嫌になってきたM.K.です。 さて今回の作品なのですが、いつも贔屓にしているポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」で、この著者の別の作品が取り上げられていて、 パーソナリティの干場さんが「『香水』は掛け値なしに面白かったです。皆さん読まれるといいと思いますよ。」と絶賛されていたので、さっそく手に入れたのでした。 今回もショートバージョンになります。 『香水――ある人殺しの物語』 パトリック・ジュースキント なんというか……物語

          【書籍紹介/海外文学】"香り"によって操られる群集心理(ショートバージョン)

          【書籍紹介/エッセイ】『テルマエ・ロマエ』ヒットの裏側で起こっていたこと(ショートバージョン)

          こんにちは。 なんだか最近寒いんだか暑いんだか、訳わからない気候になっていますが、皆さん体調いかがでしょうか?私はすっかりやられています。 体調が思わしくない日に濃厚な文学は胃がもたれるので、そういう時は軽めのエッセイにかぎります ということで、今回は初めてのエッセイの紹介になります。 今回もショートバージョンでお届けします。 『仕事にしばられない生き方』 ヤマザキマリ 某漫画の原作者が、実写化の問題を巡って自殺してしまった悲しい事件がありましたよね。 その漫画の読者

          【書籍紹介/エッセイ】『テルマエ・ロマエ』ヒットの裏側で起こっていたこと(ショートバージョン)