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片頭痛の注射薬(エムガルティ/アイモビーグ)体験記

みなさんこんにちは。
今日も頭、痛いですね。
2021年より片頭痛の注射薬(エムガルティ・アイモビーグ)の治療を受けている三毛根子と申します。

治療開始から時間が経ち、ある程度データが堆積してきたので体験談という形で情報をまとめて公開したいと思います。
頭痛の注射薬治療をはじめようか悩んでいる方、情報を求めている方の一助となれば幸いです。


〇おことわり〇
ここに書いてあることは素人の1患者の感想です。
全部体感。
もしかしたら間違っていたり、勘違いをしていたりすることがあるかもしれません。
話半分程度に受け止めて、治療を希望する際には主治医の先生とよく相談してください。


長くなったので先に結論


片頭痛の注射薬治療め〜っちゃ効きます!

経済的な問題がクリアできるなら超おすすめ。
頭痛発作自体の回数はそこまで変わらなかったけど痛みが軽く&発作時間も短くなりました。

エムガルティとアイモビーグの違いはよくわからん。
多分どっちも同じくらい効く。

それまでの頭痛状況

私の頭痛は片頭痛の傾向が強く、不定期に発作が起きて動けなくなってしまいます。
片頭痛の発作は1回4~72時間。
血管の周囲に拍動性の痛みと吐き気が起こり、光や音、匂いに敏感になります。
眼球を動かすと目の奥が痛いので、視線を動かすのも億劫です。
発作が起きたが最後、静かで暗い場所で横になるしかありません。

頓服の頭痛薬を服用しますが100%効くわけではありませんし、発作がなかったことにはなりません。
私の場合、せいぜい2割~5割くらい痛みがマシになればいいほうで、飲んでも効果を感じられない日のほうが多かったです。
頭痛薬で痛みが和らいだとしても、片頭痛に特有の体の重さや不快感は残るため元気に動き回ることは到底できません。

しかし、だからといって飲まない訳にもいきません。
発作が起きて生活に支障が出ているのに、何の対策もせず手をこまねいているのは怠慢というものでしょう。
身の回りのお世話をしてくれる執事やメイドさんに囲まれたご令嬢でもない限り、少しでも楽になって家事や仕事に取り掛かれる希望があるのであれば頭痛薬を飲みたいと思うのが自然な発想だと思います。

けれどこれが曲者で、頭痛は頭痛薬を飲めば飲むほど悪化していきます。
薬物乱用頭痛といわれるものです。
薬剤を多用することにより痛みの閾値が下がり、どんどん頭痛が起こりやすくなるのです。
このような現象は頭痛に特有のもので、他の疾患ではあまり見られないそうです。

こうして頭痛が起きる→頭痛薬を飲む→薬物乱用頭痛が起き頭痛が酷くなる→また頭痛薬を飲む……という負のループが完成します。
この頭痛ループを抑えるには、頭痛そのものを起こりにくくするしかありません。

片頭痛にはロメリジン塩酸塩(ミグシス)という予防薬がありますが、残念ながら私にはあまり効果が感じられませんでした。
予防薬を飲むことによって頓服薬も効きやすくなるということで現在も飲んではいますが、ほぼおまじないです。

頭痛の誘因を避ければいいとは言われますが、私は匂いでも音でも光でも人混みでも空腹でも頭痛が起きますし、何ならなにもなくても頭痛になります。

1つの頭痛の波が収まる前に次の頭痛の前兆がやってきて、常に血管が拡張してドクンドクンしていました。
痛みのせいで血管の位置や太さが触らなくても明確にわかるくらい。
頭が揺れると痛みが酷くなるので動くこともできず、ほぼ寝たきりの状態でした。

ほんの僅か頭痛がない時間があっても、数時間もすればまた発作がやってきます。
そんな状態だから予定を立てることもできず、自己肯定感はゴミカス。
外で具合が悪くなると誰かに迷惑をかけるかもしれないので(動けなくなって救急車呼ばれるとか)外出もできない。

些細な目標も立てられず、何も行動できず。
体の調子が悪くなると連携して心の調子も悪くなるので、ほぼうつ状態。
食欲もなく買い物に行く元気もなく、アマゾンで箱買いしたカロリーメイトのゼリーで何とか生きていました。

動くと血流が良くなって頭痛が悪化するため運動もできず、筋肉は無きに等しかったです。
体力がないため、たまに少し元気な時間があってもすぐ疲れてしまい1ターン行動したらもう戦闘不能。
最大HPが1という感じ。

前々から頭痛外来に通って治療は継続していましたが、色々と処方を変えて先生と相談しながら治療をしてもどうにもならず、手詰まりに感じていました。

2021年春、片頭痛界に激震走る

そんな日々を送っていた2021年4月。
Twitterをスクロールしていた私は気になる情報を目にしました。
新薬、エムガルティの発売です。
なんでも片頭痛の予防薬で、効果はてき面との触れ込みです。

この頃の私は頭痛が少しでも良くなるというなら怪しいツボでも喜んで買うようなメンタル。
藁にも縋りたい気持ちです。

すぐに薬品名で検索をかけました。
すると出てきたページによると、なんと50%の被験者で片頭痛の頻度が半分になったというではありませんか!

片頭痛の日数が減り、更にはトリプタンやカロナールといった頭痛薬も減らせると書いています。
片頭痛に加え薬物乱用頭痛の対策もできる!
都合が良すぎて逆に不安になるくらい私にうってつけの治療です。
終わりのない闇の中を歩いていたような私の頭痛人生に光が差した瞬間でした。

デメリットはお値段

エムガルティを受けるためには予防薬(おそらくミグシスのこと)を飲んだうえで月4日以上片頭痛があること、という条件がありますが、だいたい月20日以上頭痛がある私は難なくクリア。
投与するお医者さんの方も条件があるようですが、たまたまかかりつけの頭痛外来の先生がその条件をクリアしていてこちらも通過。
どうやら私はいつもいっている病院でそのまま新薬の治療が受けられるようです。

調べた限り重篤な副作用もありません。
こうなればもはや受けない理由がないでしょう。

しかし効果に副作用、投与条件と来たら次に気になるのがお値段です。
エムガルティは抗体製剤。
学生時代ちょっとその方面に触れていた私は嫌な予感を感じていました。
抗体っていうものは、とてもお高いです。

気になるそのお値段は……

新薬は……高い!!

なんと!1本約1万5千円!!
これを1月ごとにごとに打ちます。

さらに、初回は2本打つので2倍です。
3万円。

初回だけ2本打ちます

ちなみにこれは3割負担での患者の負担額なので、お薬自体の実際のお値段は約10万円です。
国民皆保険ありがとう。

エムガルティ治療開始

お値段についてはかなり悩みましたが、現状片頭痛が生活に多大な影響を及ぼしていること、エムガルティの効果は確かなものでありそうなことなどが決め手となり治療開始を決意しました。
(こう書くと簡単そうですが、実際はGWいっぱいに悩んで悩んで悩みまくりました)

GWが明けてすぐ、病院に確認の電話を一本入れた上で来院。
スムーズに治療の説明を受け、そのまま注射を受けられることに。
腰などに注射することもできるらしいのですが、露出しやすいし私は腕でお願いすることにしました。

看護師さんがトレーにちょっと太めのペンみたいなものを2本入れて持ってきてくれます。
どうやらこの円筒型のものが私を救ってくれる薬剤のようです。
手のひらより少し大きいくらいのそれを見ながら(これが10万円か~)と思ったことを覚えています。

初回は2本なので、片腕1本ずつ肘よりちょっと上のあたりにバチンバチンと打ってもらいます。
10万円が私の体に入った瞬間です。

こんな妄想をしてました

この日例のごとく私は片頭痛の発作の最中にいて、体が重く這いずるように病院までたどり着いたのですが、なんだか打った直後から体が軽くなったような感じがしました。
お会計をして病院を出る頃には明らかに動きやすさが違う!体が軽い!!
これは絶対打った価値があったな、と満足感とともに帰路に着きました。

(調べたところ即効性があるらしいのであながち嘘ではないと思うのですが、あまりにすぐ効果を実感したため半分くらいプラシーボ効果だったんじゃないかなと疑っています)

半年エムガルティ継続

経過を見るためにとりあえず3ヶ月は続けてみましょう、ということで毎月同じくらいの日に病院に行って注射を打つことに。

エムガルティ治療開始月。痛み程度最悪(紫の顔マーク)の日がほとんど

最初の1ヶ月は気持ち良くなったかな?というくらいでまだ全然体調は良くないのですが、(これから良くなるかも)という希望があったのでそれまでとはメンタルが全く違う。
何もない真っ暗闇にいるのと、少しでも光が差していてそこに向かって歩めるのとでは大きな違いがあるのです。

それまでは(やれることは全部やった。なのに毎日寝込んでばかり……この世に希望はない……)という精神状態だったので正直これだけでも注射治療に踏み切った甲斐があったと思っています。
メンタル大事。

エムガルティ治療2か月目。痛み程度最悪(紫)が減った

2ヶ月目の頭痛状況です。
頭痛日数こそ1ヶ月目と変わりませんが、紫の顔マークだらけだった先月に比べて赤のマークが増え、痛みの程度が下がったことが読み取れます。

このあたりから体感としてもかなり楽になった覚えがあります。
頭痛発作自体は起きるものの、発作時間が短くなったり痛みが減ったりして生活が変わり始めました。

エムガルティ治療3か月目。頭痛のない日が増えている

3か月目になると頭痛日数が減り、薬を飲んだ日も明らかに減っています。
1か月目と比べると違いは一目瞭然。
注射薬の効果が出ています!この後頭痛が増えることはありましたが、それでも注射する前のような激しい痛みにまでは発展しないことが多く、1回1回の頭痛が軽く済むようになりました。

確か3ヶ月くらい経過した時点で、副作用がないか見るための血液検査をしました。
結果は特に問題なし。
コレステロール高かったけど。
治療継続です。

アイモビーグに薬剤を変更して治療継続

エムガルティ治療開始から半年くらい。また頭痛が増えてきた

エムガルティが発売された年の秋、同じような片頭痛の注射薬が2種類発売されました。
アイモビーグとアジョビです。

この3つはどれもCGRPというものに反応するモノクローナル抗体を用いた注射薬で、使い方もほぼ同じです。
私の通っている頭痛外来でもさっそく提供が開始され、3つの注射薬を選択できるようになりました。

それまでエムガルティを使って一定の成果を得られていた私ですが、ここで欲が出てきます。

『もしかして他の注射薬に変えればもっと効果が出るのでは?』

この頃また頭痛が増えてきて、痛みの程度は注射薬治療開始前より軽いものの、もう少し効いてほしいなと思っているところでした。
選択肢が広がったことで可能性を感じ、6回くらいエムガルティを打った時点で先生に相談してみることに。

すると「可能性はあるかもね」ということで、注射薬を変更することにしました。
先生の話ではアジョビはエムガルティと同じような作用なので、より効く可能性はアイモビーグのほうが高い、とのことです。
なので変更後の注射薬はアイモビーグを選びました。


↓ここからちょっと難しい話(読み飛ばしてOK)
三叉神経からCGRPというタンパク質が放出され、神経や血管に存在するCGRP受容体にくっつくことで片頭痛は起こるということがわかっています。
エムガルティとアジョビは共に、このCGRPそのものに反応することで片頭痛を起こしにくくします。
一方アイモビーグはCGRPそのものではなく、CGRPのくっつく受容体に作用して、CGRPがくっつく場所を失くすことにより片頭痛を起こりにくくします。
CGRPそのものorCGRPの受容体、反応する場所がちょこっと違うことからもしかしたら効き目も違うかも?とのことでした。
↑ここまでちょっと難しい話(読み飛ばしてOK)

11月からアイモビーグに変更しました

アイモビーグに注射薬を変更した影響は、残念ながらよくわかりません。
エムガルティを打つ前に比べたら明らかに体調がいいのですが、エムガルティを打ってるときとアイモビーグを打ってるときを比べても???な感じです。

おそらく同じくらい効いてるのではないかな、というのが両方打ってみての感想です。

切り替えの時に期待していた治療効果の向上はありませんでしたが、下降もしなかったのでそのままアイモビーグでの治療を続けることとしました。

治療開始から1年後の頭痛状況

注射治療を開始してから丸1年後の様子。内エムガルティが6回その後アイモビーグ

注射薬治療を開始して1年が経過したときの様子です。
まだ月の半分くらいは頭痛がありますが、初めの紫マークだらけだった頃に比べたら大分軽快したことがわかります。

2023年春現在の頭痛状況

……と、治療は順調なように見えました。
この分でいけば、将来的にもっと頭痛が軽快するに違いありません。

ここまでご覧になった方はそう考えると思います。
実際の様子はこちら。

直近3ヶ月の様子。頭痛増えとるやんけ

本当はこの結果を載せるべきか迷いました。
「『注射いいよ!試してみなよ!』って記事かと思いきや急に流れ変わるやんけ」となるからです。
しかし、良い結果だけをピックアップして掲載しては読者に正しい情報は伝わりますまい。

きっとこの記事にたどり着いて読んでくれている方は、高額な注射薬治療に悩み少しでも詳細な情報を求めている方のはずです。
メリットばかりを強調して、それを信じて注射薬治療に踏み切った読者が思ったような成果が得られず落胆してしまったらお詫びのしようもありません。

なので全部ありのまま載せます!
少なくとも私は頭痛が0になったわけではありませんでした!!

でもね、本当にすごく効いてるんですよ!!!!

イメージはこんな感じ

カレンダーだけでは注射薬の素晴らしさは伝えきれないと思ったので図解しました。
なんかすごく無理矢理なグラフになってしまいましたが、フィーリングでご覧ください。

本当に感覚的なものなのですが、頭痛日数こそ変わらないもののこんな感じで頭痛に苦しんでいる時間が減り、痛みの酷さも和らぎ、発作が起きても短時間で済むようになっています。
正直めちゃくちゃ楽になってます。
(他にも新しい薬を試したりブロック注射を受けたりしているので純粋にエムガルティ/アイモビーグの効果だけとは言えませんが)

一見頭痛が増えているように見える原因は、

1.注射薬の効果が出て元気になったため、日常の活動レベルが上がり、それに従い求められる元気さの基準が高くなったことにより頭痛薬を飲もうと判断する閾値が下がった(軽い痛みでも動きに支障を出したくないため薬を飲むようになった)。
2.最近発売された頓服薬のレイボー錠がすごくよく効くので、薬への期待値が上がり、頼りにするようになったため服用頻度が増えた。

などが考えられます。
薬を飲む回数が多いためカレンダーには頭痛有の表示が増え、すごく辛そうに見えるのですが、実際の元気さは以前に比べて上がっています。

注射薬最高~!
冗談抜きで私の人生を変えてくれたと思っています。
確かに高価ではあるけど、そのお値段以上の働きをしてくれます!!
注射薬を打つ前と比べるとQOLが月とスッポンです。

ありがとう製薬会社さん。
ありがとう医療従事者の皆さん。

片頭痛でお悩みで、既存の治療法では手詰まりだった方は是非注射薬治療試してみてください!
不安とか、気になることがあるという方はTwitter(@mikeneko_mjmj)までリプライしていただけたら答えられそうだったら答えます。
少しでも読んだ方の頭痛治療の助けになりますように。

参考文献

エムガルティとともに進める片頭痛治療 エムガルティのはたらきと効果
https://www.emgality-patient.jp/effect

アイモビーグ.jp アイモビーグについて
https://www.aimovig-pts.jp/about

アジョビ.jp アジョビの働き
https://ajovy.jp/

脳神経内科・脳神経外科だいだいクリニック CGRP関連片頭痛予防薬のまとめ
https://www.daidaicl.com/headaches-from-mental-illness/

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