日本韓国青年親善交流事業参加レポート原文「情から情愛へ。対話を通じて学んだこと」
私は「日本・韓国青年親善交流事業」での活動を通して、多くのことを体験し、学ぶことができた。その中でも印象に残った2つについて述べていこうと思う。
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1つ目は事前研修から帰国後研修までを通しての団員同士の「対話」である。私は主にディスカッション係として活動の他、派遣中は写真係のアシスタントとして写真撮影、係の仕事が早く終わった日本文化紹介係とともに団のSNSの投稿用写真の選定とキャプション作成(以下SNS投稿係)を行っていた。どちらも骨のある仕事で助け合った部分が多かった。まずディスカッションに関しては係そしてグループでは「対話」を通して親睦を深められ、議論の円滑化ができた。今回のディスカッションは「多文化共生」を大テーマにジャンルを分け、それぞれテーマへどのようなアプローチをしていけば良いかを考えるものであった。一見流れを掴めばうまく進みそうに見えるのだが、本番のディスカッションに至るまでの道のりはそう簡単ではなかった。まず直面したのは「多文化共生」の定義である。ディスカッション係内での「多文化共生」の考え方の違いで話はなかなかまとまらずかなり難航した。追い討ちをかけるように韓国には多文化共生という言葉はあまり使われておらず「多文化社会」で通っていると聞かされた時、私はどうすればいいのかわからなくなってしまった。そんな中でも私たちが続けていたこと、それが「対話」である。話すことをやめたり、理解しようとすることをやめたりすれば事は収まるが、不満やコミュニケーションを取る上での障害になり、やがてそれは団全体へ伝播し問題になる。それをなくすために「対話」はディスカッション係を始め、韓国派遣団全体でも終始大切にしていた。係でも意見が食い違い半ば言い合いのようになったり、連日の話し合いによる疲労で頭が回らなくなったりしてしまった時もあったが、時間外にもう一度冷静に時間をかけて話し合った結果、ディスカッション係全員が納得できる答えを導き出すことができた。
同様に私がメディアの定義について悩み、抱え込んでいた時にも係のメンバーが話を聞いてくれ、サポートしてくれたおかげで話がまとまった。自主研究期間に関してもその「対話」は途切れる事はなかった。SNSを使い、係では月1~2回程度各グループの進捗状況やグループが持っている課題点の相談とそれに対するアドバイス、グループでは月3~4回程度で中小テーマに関する記事や報道の話や近況報告をしていた。特に印象深いのは、係のメンバーとのやりとりで、「グループの反応がイマイチ薄い」という課題が出た時、係みんなで解決方法を模索し、「もしかしたらグループのメンバーは別のことで忙しくて返答ができていないのでは?」「なんとなくメッセージが送りにくい環境になっているのかも。だとしたらどうすればもっと会話に参加しやすい環境になるだろう?」と話を重ねて実行したことでその係は実は社会人メンバーが多く日中の返信ができないこと、他のメンバーも返答すべきメッセージなのか迷っていたことなどがわかり、最後は電話で仲を深めることができていた。実際に会えない期間もSNSのメッセージや電話などでコミュニケーションをとることで、団員同士の距離が縮まっていくのを実感した。このようなプロセスを通したからこそ、韓国青年とのディスカッションも無事成功を収めることができたのだと強く確信している。
ディスカッション係で感じた「対話」の重要性は、派遣中でのSNS投稿係でも同じように感じることができた。派遣中の写真係の重荷は他の係と比べてかなり大きく、Wi-Fiが弱いエリアでの投稿作業や1日1000枚以上の写真管理、副団長にチェックをもらうことなど多くの作業を深夜にかけて行っていた。それを見かねたディスカッション係と日本文化紹介係でSNSの作業を引き受けることになったのだが、仕事を引き受ける際に誰も仕事が増えることに対する不満を漏らすことがなく、むしろ「大変だったよね」「写真は任せて」といった言葉が口々に出ていたのをみて助け合いとはこういうことなのかと関心を受けていた。SNS作業を引き受けたのちも毎晩2つの係で集まりどの写真がいいか、文章表現はどのようにすれば伝わりやすいかを話し合って決めた。その投稿の過程で「この写真の〇〇ちゃん凄いいい笑顔!」「この写真ものすごくいい景色だね」など会話を交わすことで私自身の写真を撮ることに対するモチベーションにもなり、団員への情も深まったことであろう。さらに翌日のSNS投稿を見た他のメンバーが投稿写真についてポジティブなリアクションをしてくれることで写真を通しての対話が生まれたことで、より自然な表情を撮れるようにもなっていった。事前研修で気づいたこのような「対話」を派遣中意識して行ったことで、団全体や韓国青年、ホームステイ先などで実になる経験ができたのだと考えている。
印象に残ったことの2つ目は韓国両性平等教育振興院での講義及びジェンダーに関するポスター作成である。私自身前々から社会学におけるジェンダー研究や、フェミニズム、LGBTQ+などに関心があり、大学講義のほか、関連イベントに参加したり、交流をしたりすることで通じて学んでいた。韓国両性平等教育振興院では、「そもそもジェンダーとは何だろう」ということや、「女性らしい、男性らしい」ということなどを学ぶことで私がこれまで知識として蓄えてきたものの振り返りと新たな知識のインプットをすることができた。また、講義では韓国における性の考えられ方も合わせて知ることができた。講義を聞いていて日本は韓国におけるフェミニズムのムーブメントやそれに関わる政策などを見習うべき部分がたくさんあった。これからの活動や考え方に生かしていきたいと考えた。講義だけでなく、ポスター作成でも考えさせられることが多くあった。ポスター作成の際に団員とジェンダーの問題や知っていること、考えていることについて話す場があった。そこでは団員それぞれが何に問題意識を持っていて、何を伝えたいのかが対話を通して知ることができた。また、ポスター発表ではポスターに書かれたイラストやメッセージを通してジェンダー問題に対する向き合い方を再確認できたと思う。特に私は女子力という言葉に昔から疑問を抱いていて、女性であるからという理由で気配りができなくてはいけない、メイクなど美意識を高く保たねばならないといった決めつけに嫌悪感を抱いていた。同時に美意識の高い男性に対して「女子力が高い」と称するのは性差別に値すると私は考えていた。そのような中、ポスター発表で「女子力やめよう」という趣旨のポスター発表があり私は共感すると同時に感動して泣いてしまった。仮に悪意がなかったとしても、言葉を受け取る側が傷付くのであればそれは良くない。私はポスター作成とその発表を通して周囲へ自分の意見を積極的に発信し自分のポジションを明確にすることの重要性を学ぶことができた。
今回の韓国派遣を終えた上で、行っていきたいことは3つある。1つは事業自体を知ってもらうことである。大学の国際交流センターと連携をして、事業の報告会開催と、説明会を開催する他、私が所属している市のボランティアでも事業について発信していきたい。2つ目はSNSによる発信である。1つ目の事業を知ってもらうことはもちろんだが、韓国についてあまり知らない友人やSNSで繋がっている人への発信や、私が韓国派遣で得たことを書き綴ることで新たな学びの伝播を生んでいきたい。最後に行いたいことは今後に生かすことである。派遣中は団員のために自分は何ができるかを考えて行動したり、課題解決のためにはどんなアクションを起こせば改善されるのか、なぜ問題なのかなどを話し合ったりして活動してきた。これら一連の動きはこれから社会人として生活する上でも、パートナーと暮らす上でもかなり大切になってくると私は考える。そういう意味で韓国派遣は人生の縮図であり、これから行きていく上でも問題が起こった時「韓国派遣であればどんなアクションを起こしただろう。」、「団員だったらどのような方法で改善していくか」など考えて生活していきたい。原文ママ