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REING NIGHTに参加して. #3

2回目のレポートが今絶賛下書き中なので順番が前後しちゃうけど、こっちを先に書きたいと思ったので書いていこうと思います。ゲストにボーカロイドの初音ミクとご結婚なされた近藤顕彦氏を迎えた今回、REING NIGHTテーマは
「二次元作品におけるジェンダーバイアスを考える」。

複数の問題が絡み合っていたり話の中に「むむっ。」っとなる部分がいくつかあってイベント中思考停止してしまっていたので、もやもやを整理していこうと思います。

REING#1はこっち🧚‍♂️

※おことわり
・ジェンダーを含め、一定の規範のうちでの考えや思想の多様を尊重します。
・個人や作品などを批判、否定ではありません。あくまでジェンダーの視点から日本社会に存在する課題へどのようにアクションしていけるのために述べていきます。

宇崎ちゃんのポスターを巡って。

日本赤十字社が人気漫画とのコラボして制作したポスター「過度に性的」「ふさわしくない」として物議を醸した一方で「表現の自由」「胸が大きい人への差別」という意見もありました。話の最初はこの問題について話し合いました。

まず今回赤十字社が宇崎ちゃんを用いた理由に関して、
「若い男性が献血へくると考えた」とコメントしています。実際コミケで行った献血では若い男性の献血数が多かったことがそこに起因していると言えます。

本題。次のことを順に推察と意見を述べていきたいと思います。

1.なぜこのキャラクターをこの構図/描写で公共の場へ出したのか(広告として)
2.そもそも胸の強調されたアニメは海外から見てどうなのか(基準)
3.性的消費の面での配慮に足らないのではないか(ジェンダーバイアス )

1.なぜこのキャラクターをこの構図/描写で公共の場へ出したのか(広告として)  

 問題になる前に私はこのポスターを大学最寄りの駅構内で見ました。第一印象は「知らない」「またこの手の広告か」くらい。その後、様々な議論がされる中で、再考してみましたが印象は変わらなかった。まず「知らない」について。データがない分根拠にはなりませんが、少なくとも私の周囲の友人の多くはこのアニメを認知していませんでした。

今回のこの広告自体失敗だったと思うのはこの点。「"多くの若い男性"へのターゲティング」のはずが、多くの人は作品を知らないが故に「単なる性的な広告」としか捉えられてないから。加えて赤十字との関連性もわかりにくいし、目が行きやすいポスター中央に指摘されている強調された胸部があるあたり、広告として「性的な消費」と捉えられても仕方がないと思います。このような点からも、決してこのポスターを批判することが胸の大きい人への差別ではないということがここで言えます。

それに公共の点で言うと、痴漢発生率が64%と半分以上を占めている駅構内にもこの広告が貼られている。誤った認知や不認知によるネガティヴリアクション(これをみて不快になる人、性的行動への誘発する可能性は?etc)を生んでしまうものが公共に置かれることが果たして正しいことなのか疑問を抱きました。

宇崎ちゃんを認知しているファンの中では"当たり前"としてあったものがそれ以外の場では共通言語として対応していなかった。

公共という点でいうと近藤さんは「そんなこと言ったら他にも女性の性的な広告はある」と仰っていました。しかし私はその認識こそが問題ではないかと思います。
(3.のジェンダーバイアス へ繋がる↓)

私自身今回のイベントでは認識の差を終始感じていました。近藤さんはアニメなどカルチャーに造詣が深く、当事者,有識者の立場で参加していました。なのでスタンスはアニメカルチャーから見た意見になります。一方で私達はジェンダーバイアスというテーマに関心があり参加しているわけですから、当然社会からみた前提で話やスタンスを述べています。このスケールの大きさによって食い違いやモヤモヤに繋がったのだと思いました。どちらが、というよりそれぞれの視点から別々に見れればよかったかも。

2.胸の強調されたアニメは海外から見てどうなのか(基準)

このポスターへ最初に疑問を呈した人がジェイ・アレンというアメリカの方だったと言うところにも関心を持ちました。取材の中でアレンさんは以下のように述べています。

公の場で性的なポスターが貼り出されているのに違和感があった。
よくよく見ると日本赤十字社の公式ポスターだったので、さらに驚いた。
今回のポスターは"エロ漫画"の類ではスタンダードである表現だが、例えば『ラブライブ!』のようなメジャーな作品においては、典型的な表現だとは思わない。
特に日本では今、多くの女性が日本社会の女性に対する扱いに疑問を感じている。たとえば、痴漢やセクハラの問題が続いていたり、性犯罪に対する不当な無罪判決が下りて、それに抗議するデモが起こっていたりする。

海外の視点から見た日本アニメ/漫画の性的描写への疑問視、批判は今に始まったことではなく、2016年の時点でも国際連合が女子差別撤廃委員会の報告書の中で指摘しています

最近だとNetflixで海外配信がスタートした「食戟のソーマ」での料理服の描写も話題に上がっています。ジェイさんと同じく、ここでコメントをしている人たちは
「男性による男性のための消費的な女性の描写」に問題意識を持っています。

日本人のファンの方が「食戟のソーマは男性の性的描写もあるから平等」と言っていましたが果たしてその言い分で解決する問題なのでしょうか。

また調べていく過程で、アニメの描写の中でもいわゆる"ロリ"に分類される
幼,少女の描き方の批判もあることに気づきました。

「表現の幅を狭めることが表現の自由を阻害する」とイベントで話が出ましたが、私はそこにモヤモヤを感じました。インターネットやSNSで簡単に世界と繋がれる時代、日本のスタンダード基準ではなく世界のスタンダード基準で制作を進めていくべきであり、そこの線引きは特に性差が大きい日本だからこそ規制を行っていくべきだと考えます。世界的に問題視されている性的消費描写を守る理由は世界の人へ説明できるものなのでしょうか。純粋にストーリーを楽しみたい人が不快を抱いたり、苦しむようなコンテンツに自由はあるのか。

多様性は秩序なしに成立しません。もし秩序がなかったら、「差別偏見は正義」
「自分が生きるために人を殺める正義」も多様性のうちに入ってしまう。
それと同じでアニメ/漫画作品における性描写も基準をもう一度考え直す必要があると私は考えます。

アニメ・漫画の露骨な未成年者の性的描写は児童虐待 韓国最高裁(The Telegraph)
Why hasn't Japan banned child-porn comics?(BCC)
Anime fan convicted over illegal pictures of...(UK)
小児性愛特集に反響…児ポ規制で犯罪抑止はできる?(Abema)

3.性的消費の視点(ジェンダーバイアス )

1.の後半で近藤さんは「アニメ以外にも性的描写は街などである」との旨を述べていて、その後宇崎ちゃんを巡る性的消費のシーンでも
「でも女性も男性を性的に消費しますよね」と仰っていました。

言葉をそのまま受け取れば確かにそうだと思います。男性アイドルなどが挙げられるでしょう。しかし、今回話しているのはポスター単体やそれらの是非だけではなく、ポスター問題に関わる二次作品のジェンダーバイアスであり、それらによって性的消費を生み出している社会構造についての話。

日本社会は圧倒的に男尊女卑の流れが拭えておらず、いまだにジェンダーギャップランキング121位を社会全体で体現している。私が知っている中でも、最近有名出版社の編集者が上下関係を利用し女性ライターの自宅へ押しかけセクハラ行為を働いて話題になるも、明るみには出ず当の本人は「ハニトラ」で事から逃れている。周囲の人間はそれを黙殺。 事例を挙げていたら書ききれないほどに、社会は男性による女性への性的消費で溢れてます。そのような社会に生きる女性はやはり身構えざるを得ないし、性的な消費への嫌悪感やモヤモヤも抱くのにも頷ける。

アニメに関しても制作陣の男性率が高いことは少なくありません。
美少女戦士セーラームーンで例えてみましょう。このマンガの作者は女性ですが、旧アニメの制作陣の女性人数は3人。ほとんどは男性でした。そのため描写も男性よりの表現へ差し替えられ、原作にはない「男性が女性を助ける構図」「かっこいい人を見ると目がハートになる」などの表現が生まれます。
新アニメになっても制作陣の男女比に変化はなく、女性プロデューサーに変わった後半から少し表現が弱まるくらい。セーラー戦士の走り方があまりにも不自然な走り方(いわゆる女の子走り)や変身シーンでの裸描写が性的描写として問題になっています。

こうした事実の中で、それらのコンテンツはどうかを思考した上で私たちは
「性的な消費に触れるのではないか」と述べています。


4.まとめ

議論の前提に社会を置くのか、アニメカルチャーを背景に置くのかを決めた上でそれぞれ話合うことで価値がさらに見出せる。

1.作品に関係なく広告として施策の段階でミスマッチが多い。

2.海外のファンから見ても不自然な点は少なくない。2016年の段階で国連で日本へ名指しで指摘があった他、幼,少女の描写については児童ポルノへ悪影響を与えると批判も出ている。

3.描写/アニメ是非の前に性差やジェンダーバイアス、性的消費が存在することを汲み取った上で考えてくべきではないか。

今回のイベントでは女性が男性を性的に消費している状態を認知していてもなお不快感を感じないことに気づかされ、それが男性優位社会を現しているのだなと感じました。様々な愛を受け入れる中で、愛の在り方は定義を決めていく必要がある。

そのためにはもっと私を含めた男性性を持つ人が今よりももっと社会や世界を見ることをしていかなければいけない。そう思いました。

ごきげんよう。

参考サイト

痴漢発生場所2020(警視庁HPより)

ジェイ・アレンさん取材記事

Quora「どうして日本のアニメで女性が性的に描かれているの?」

新旧「セーラームーン」アニメの比較によるジェンダー理解の変容について


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