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工藤吉生の『未来』の短歌

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歌誌『未来』に掲載された短歌のまとめ。2016年1月号から。彗星集。 投げ銭方式なので、無料ですべて読めます。
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#未来短歌会

ワイヤレスイヤホン  ~『未来』2020年1月号掲載

ワイヤレスイヤホン  ~『未来』2020年1月号掲載

ワイヤレスイヤホン

そうかこれ、一月号か 正月の自分を思う 口半開き

イヤホンを充電式に変えたけど震災の夜を忘れていない

ワイヤレス ワイヤーがない ワイヤーと思わずつないでいた細い線

いつのまにこんがらがったイヤホンの線は人間関係みたい

断線の冬の朝には片耳でバッハのヴァイオリンソナタ6番3楽章

人命は重いものだと書いてあるそう思うけどオレのはどうか

のぼりからくだりに変わる泣きな

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なるけま  ~『未来』2019年10月号掲載

なるけま  ~『未来』2019年10月号掲載

なるけま  工藤吉生

毎日をちゃんとしてると短歌とか作ってるヒマあんまりないな

森だなと思い見てると石段が透けてる朝の車窓の向こう

障害を恥じるあなたにオレだっていつそうなるかわからんと言う

木の机を両手で叩く休み時間「うるさい」とだけ感想もらう

券売機をかわいがってるおばさんはそんなわけない清掃員だ

お湯ならば飲むが白湯(さゆ)なら飲まないよ飲んだら刺してほしいくらいだ

突っ走

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枯れ枝と財布【短歌10首】  ~『未来』2019年7月号

枯れ枝と財布【短歌10首】  ~『未来』2019年7月号

枯れ枝と財布   工藤吉生

におい付きの風がでてきて春になる虫も変態たちも目覚めて

微笑んで穴掘る人はいないのだ「のだ」なんて言うから土になる

オレ、飛沫、わりと見るかも だいたいは透明なのが多かったかな

ピンクの雲いいなさわってみたいなあ財布にいくら入ってたかな

魔王と言い枯れ枝と言う子と父で馬の手綱を握るのは父

筆くわえアシカが新元号を書くみたいな・でかい白紙みたいな

体液を拭

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ミューズさん  ~『未来』2019年6月号

ミューズさん  ~『未来』2019年6月号

「ミューズさん」

むしゃくしゃな日でも遠景ゆっくりと近景はやく飛び去っていく

走ってる「時」に振り落とされるのは嫌だシワシワしたおでこ嫌だ

あたらしい波がいったん退いてそれを含んだ次の波くる

好きなだけ言わせといたら在日で生活保護で毛が無くて死者

消しゴムがないからツバで消したって少し離れた席で荒れてた

細ければいいのかよ!? って怒ってた脚線美コンテストのタモリ

母親の故郷と旧姓お

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格付けチェック  ~『未来』2019年4月号掲載

格付けチェック  ~『未来』2019年4月号掲載

「格付けチェック」

元日になると思うが人間はこんなんじゃあたらしくならない

ついたちの朝見た夢を弟は初夢と言いオレも出たとか

クイズ王が司会のオレを待っている夢の中へともう戻れない

お雑煮のなかにおもちが眠ってるオレの苦手なおもちがひとつ

鼻くその味をかすかに覚えてるもう何年も食ってないねえ

眼が描いてある目隠しの下にあるGACKTの瞳が肉を見分ける

赤いドア開けるふりして青いドア浜

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さくらももこさんと多くの仕事  ~「未来」2019年3月号掲載

さくらももこさんと多くの仕事  ~「未来」2019年3月号掲載

さくらももこさんと多くの仕事

工藤吉生

神のもつ力のひとつは「新聞」をさくらももこに描かせるちから

ルレカーサの占いによればドブに落ち犬に噛まれる人生、オレの

いいことも悪いこともしないコジコジに夜空の星はみなぎってゆく

「コジコジはコジコジだよ」の真実に機械教師は打ちのめされて

性的に興奮すればお湯が沸き人が集まるやかん君あわれ

おなべからとびでるインチキおじさんのような大人よあと

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車にはねられました  ~「未来」2018年9月号

車にはねられました  ~「未来」2018年9月号

車にはねられました

自転車で青信号を渡ったら車に当たり飛んだよマジで

死んだとは思わないけど面倒が体を包む感じはあった

自転車と鞄とスマホとスマホ用電池パックと工藤吉生が

腰を打つ 仰向けで「アア!」「アア!」と言う 道路のうえで産まれたみたい

五十秒くらいもがいて立てる気がして立とうとして立ったら立てた

三メートルくらい飛んだと耳に聞く誇らしいのはなぜなのだろう

インテナースパップ

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不審者情報【10首】

不審者情報【10首】

最低な歌を「未来」に出詠する夢から覚めてここが現実

いいですよ隣の車輌にもうひとりオレがいたってかまいませんよ

目は閉じることが可能で電車での一人のためにそれをおこなう

遠慮したレジの袋でできているみどりの星よあおい空気よ

同一のポスター四枚ならぶうち奥から三番目を見てた人

バス停に女性が持っている本のタイトル見えてグーグルに打つ

不審者の情報はオレと一致せずまだ大丈夫春はこれから

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言いなりになる悦び

言いなりになる悦び

「言いなりになる悦び」

両替機で五百円玉が千円になる夢を見た正夢になれ

あすなろは何の名前か第一にいま目の前のクリーニング屋

いつもなら行かない道にでくわしたペットボトルに水満ちている

「おもしろいことはないか」で検索しこれがよくない口癖と知る

いいなりになるのが悦びだと語る迷惑メールの板倉幸子

自撮りする学生さんのスマートフォンが座ってるオレの耳に触れそう

安いから買ってきたのに深

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ほんとの話

ほんとの話

残念な人と言われることもある生きてるかぎり死なないかぎり

傀儡のライという字の右側の歯を見せた口みたいな三つ

宮城県聴覚支援学校を覗くと広い校庭がある

今だって昔でしょうよドーナツを買おうとしてる長い行列

十本の指は両目を覆うとき不満になってズレようとする

何をしても誰かの真似になる不安とっくのとうに言い尽くされた

なんにでも呼び名があってオレみたいなやつを「赤ちゃん中年」と呼ぶ

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ウケる〈短歌10首〉

「ウケる」

地上から地下へと降りて電車に乗り地上へのぼれば目的地です

悲しみはリュックサックを背負うのか背負って昼の電車に乗るか

まるいベンチでみんなスマホをひからせて空から見れば一輪の花

コンビニでコピー機ごちょごちょやっている男を見たよ春の散歩道

「ウケる」って一度言われたそのことが思い出になり胸あたためる

神田川かと思ったら梅田川あなたは忘れてオレも忘れた


カーテンにまもら

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歯医者で読むアインシュタイン〈9首〉

歯医者で読むアインシュタイン〈9首〉

歯医者で読むアインシュタイン

歯の痛み十段階に分類し八で歯医者に電話をかける

伝記漫画「アインシュタイン」読んで待つ 赤子にアルベルトと名がついた

アルベルト・アインシュタイン「象はなぜジャンプできないの?」と父に問う

〈この恋は実りませんでした〉の文字と冬の枝から葉の落ちる絵と

アルベルトの結婚式の最中にオレの名前が遠く呼ばれた

真っ白な天井とライトのみによる視界閉ざして口あけている

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「未来」2017年1月号

ひとすじの飛行機雲がのびてゆき秋のあおぞら完全となる

警官が近づいてきてオレの持つ夢想とびちる日暮れの街に

暮れかけの芝生に犬と飼い主はとどまっている時間とともに

日の沈むほうへ歩いて太陽のスパートにあう 秋のはじまり

内側の疲れほぐしている道を簡易トイレは運ばれてゆく

帯分数は習う必要ないという意見も載ってこども新聞

光源のせいで三つの影を持つ自分に慣れて中年になる

ろうろうぬ

ろうろうぬ

ダン! ぱからなからぱくなるたくらむぬさかさきさくぞ ダン! ささくなむ

ろうろうぬ。ぬろになぬなるあむらにのおうろもろにのおう、ろうろうぬ。

すす ヲヲヲ なにもしらない すすヲヲヲ わから ない すすヲヲヲいわない

デらるらねドろドぬダらぬドダるるねもうしないって言ってるでしょう!?

ふあんだよブアヌナヌナロくらやみはミヤノヤラグモけてすざげずげ

まーあちゃんごあいさつして(すざげず

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