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#未来短歌会
ワイヤレスイヤホン ~『未来』2020年1月号掲載
ワイヤレスイヤホン
そうかこれ、一月号か 正月の自分を思う 口半開き
イヤホンを充電式に変えたけど震災の夜を忘れていない
ワイヤレス ワイヤーがない ワイヤーと思わずつないでいた細い線
いつのまにこんがらがったイヤホンの線は人間関係みたい
断線の冬の朝には片耳でバッハのヴァイオリンソナタ6番3楽章
人命は重いものだと書いてあるそう思うけどオレのはどうか
のぼりからくだりに変わる泣きな
なるけま ~『未来』2019年10月号掲載
なるけま 工藤吉生
毎日をちゃんとしてると短歌とか作ってるヒマあんまりないな
森だなと思い見てると石段が透けてる朝の車窓の向こう
障害を恥じるあなたにオレだっていつそうなるかわからんと言う
木の机を両手で叩く休み時間「うるさい」とだけ感想もらう
券売機をかわいがってるおばさんはそんなわけない清掃員だ
お湯ならば飲むが白湯(さゆ)なら飲まないよ飲んだら刺してほしいくらいだ
突っ走
枯れ枝と財布【短歌10首】 ~『未来』2019年7月号
枯れ枝と財布 工藤吉生
におい付きの風がでてきて春になる虫も変態たちも目覚めて
微笑んで穴掘る人はいないのだ「のだ」なんて言うから土になる
オレ、飛沫、わりと見るかも だいたいは透明なのが多かったかな
ピンクの雲いいなさわってみたいなあ財布にいくら入ってたかな
魔王と言い枯れ枝と言う子と父で馬の手綱を握るのは父
筆くわえアシカが新元号を書くみたいな・でかい白紙みたいな
体液を拭
ミューズさん ~『未来』2019年6月号
「ミューズさん」
むしゃくしゃな日でも遠景ゆっくりと近景はやく飛び去っていく
走ってる「時」に振り落とされるのは嫌だシワシワしたおでこ嫌だ
あたらしい波がいったん退いてそれを含んだ次の波くる
好きなだけ言わせといたら在日で生活保護で毛が無くて死者
消しゴムがないからツバで消したって少し離れた席で荒れてた
細ければいいのかよ!? って怒ってた脚線美コンテストのタモリ
母親の故郷と旧姓お
格付けチェック ~『未来』2019年4月号掲載
「格付けチェック」
元日になると思うが人間はこんなんじゃあたらしくならない
ついたちの朝見た夢を弟は初夢と言いオレも出たとか
クイズ王が司会のオレを待っている夢の中へともう戻れない
お雑煮のなかにおもちが眠ってるオレの苦手なおもちがひとつ
鼻くその味をかすかに覚えてるもう何年も食ってないねえ
眼が描いてある目隠しの下にあるGACKTの瞳が肉を見分ける
赤いドア開けるふりして青いドア浜
さくらももこさんと多くの仕事 ~「未来」2019年3月号掲載
さくらももこさんと多くの仕事
工藤吉生
神のもつ力のひとつは「新聞」をさくらももこに描かせるちから
ルレカーサの占いによればドブに落ち犬に噛まれる人生、オレの
いいことも悪いこともしないコジコジに夜空の星はみなぎってゆく
「コジコジはコジコジだよ」の真実に機械教師は打ちのめされて
性的に興奮すればお湯が沸き人が集まるやかん君あわれ
おなべからとびでるインチキおじさんのような大人よあと
車にはねられました ~「未来」2018年9月号
車にはねられました
自転車で青信号を渡ったら車に当たり飛んだよマジで
死んだとは思わないけど面倒が体を包む感じはあった
自転車と鞄とスマホとスマホ用電池パックと工藤吉生が
腰を打つ 仰向けで「アア!」「アア!」と言う 道路のうえで産まれたみたい
五十秒くらいもがいて立てる気がして立とうとして立ったら立てた
三メートルくらい飛んだと耳に聞く誇らしいのはなぜなのだろう
インテナースパップ