不審者情報【10首】
最低な歌を「未来」に出詠する夢から覚めてここが現実
いいですよ隣の車輌にもうひとりオレがいたってかまいませんよ
目は閉じることが可能で電車での一人のためにそれをおこなう
遠慮したレジの袋でできているみどりの星よあおい空気よ
同一のポスター四枚ならぶうち奥から三番目を見てた人
バス停に女性が持っている本のタイトル見えてグーグルに打つ
不審者の情報はオレと一致せずまだ大丈夫春はこれから
悪臭がただよってくる「文芸」の棚で立ち読みする自分から
湧いて出た唾ならかまわないのだがよそものは断固おことわりだね
春の日はクリーム色に暮れかかり鼻の右側それとなく掻く
「未来」2018年7月号掲載
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